○出光美術館 やきものに親しむIV『中国・磁州窯―なごみと味わい―』
http://www.idemitsu.co.jp/museum/
何度も繰り返すが、私は焼き物初心者である。「中国・磁州窯」と言われたって、それがどんな種類の焼き物を表すのか、皆目見当もつかない。しかし、初心者であるだけに、何を見ても驚きと発見の連続なので、今回は何が見られるか、楽しみにしながら出かけた。会場に入ったとたん、「あっ、これはハマった」と感じた。一目惚れである。
解説によれば、磁州窯は河北省邯鄲市の周辺で営まれた窯で、「中国民窯の雄」と呼ばれている。作品は厚手の陶器が中心で、景徳鎮磁器の鋭利な美しさとは異なり、暖かみのある雰囲気を醸し出している。そのため、おもに庶民の生活用具として支持されたという。
そうなのだ。見ただけで掌に伝わるような、ぽってりした厚み。器のかたちはさまざまだが、梅瓶にしろ水注にしろ、実用的にはどうかと思うほど口が小さくて、その結果、曲線が強調されたデザインが多いように思う。この豊かな丸みとふくらみも癒し系である。
それから、その図柄。磁州窯を特徴づけるのは「白地黒掻落」「白地黒花」など、白と黒で構成されるシンプルなデザインだ。絵柄も自由闊達なフリーハンドのものが多い。妙に意地悪げなウサギとか。マンガのような顔の龍もいる。黒地に茶がかったストライプを入れただけという、北欧のデザイナーメイドのテーブルウェアか?と思うほど、シックでモダンなデザインもある。
色合いには、白地にグレーで文様を描くものや、白・グレー・黒を用いたものもある。いずれも暖かみのある乳白色である。さらに緑釉に黒絵、孔雀釉(ターコイズブルー)に黒絵、柿釉、三彩、赤絵など、バリエーションが豊富で飽きない。
ふと思った。宮廷用の「青花」の磁器が、京友禅とか加賀友禅の一生ものの着物であるとしたら、磁州窯の陶器は浴衣である。たったひとつの美的キャノンがある世界ではない。あれも欲しいし、これも欲しい。白地黒絵の皿もいいが、気分次第で緑釉の水注も欲しい。こっちの部屋には柿釉の瓶を飾って、陶枕は三彩、なんてふうに。磁州窯の陶器は、経済力を持ち、消費文化に目覚めた近世の庶民に似つかわしい焼き物である。
http://www.idemitsu.co.jp/museum/
何度も繰り返すが、私は焼き物初心者である。「中国・磁州窯」と言われたって、それがどんな種類の焼き物を表すのか、皆目見当もつかない。しかし、初心者であるだけに、何を見ても驚きと発見の連続なので、今回は何が見られるか、楽しみにしながら出かけた。会場に入ったとたん、「あっ、これはハマった」と感じた。一目惚れである。
解説によれば、磁州窯は河北省邯鄲市の周辺で営まれた窯で、「中国民窯の雄」と呼ばれている。作品は厚手の陶器が中心で、景徳鎮磁器の鋭利な美しさとは異なり、暖かみのある雰囲気を醸し出している。そのため、おもに庶民の生活用具として支持されたという。
そうなのだ。見ただけで掌に伝わるような、ぽってりした厚み。器のかたちはさまざまだが、梅瓶にしろ水注にしろ、実用的にはどうかと思うほど口が小さくて、その結果、曲線が強調されたデザインが多いように思う。この豊かな丸みとふくらみも癒し系である。
それから、その図柄。磁州窯を特徴づけるのは「白地黒掻落」「白地黒花」など、白と黒で構成されるシンプルなデザインだ。絵柄も自由闊達なフリーハンドのものが多い。妙に意地悪げなウサギとか。マンガのような顔の龍もいる。黒地に茶がかったストライプを入れただけという、北欧のデザイナーメイドのテーブルウェアか?と思うほど、シックでモダンなデザインもある。
色合いには、白地にグレーで文様を描くものや、白・グレー・黒を用いたものもある。いずれも暖かみのある乳白色である。さらに緑釉に黒絵、孔雀釉(ターコイズブルー)に黒絵、柿釉、三彩、赤絵など、バリエーションが豊富で飽きない。
ふと思った。宮廷用の「青花」の磁器が、京友禅とか加賀友禅の一生ものの着物であるとしたら、磁州窯の陶器は浴衣である。たったひとつの美的キャノンがある世界ではない。あれも欲しいし、これも欲しい。白地黒絵の皿もいいが、気分次第で緑釉の水注も欲しい。こっちの部屋には柿釉の瓶を飾って、陶枕は三彩、なんてふうに。磁州窯の陶器は、経済力を持ち、消費文化に目覚めた近世の庶民に似つかわしい焼き物である。