見もの・読みもの日記

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あの世とこの世/神秘家列伝(水木しげる)

2005-08-11 23:12:06 | 読んだもの(書籍)
○水木しげる『神秘家列伝』(其ノ1)(其ノ4)(角川ソフィア文庫)角川文庫 2004.7/2005.7

 この本の存在には、前から気づいていたが、ふーん、妖怪マンガじゃなくて人物評伝かあ、と思って素通りしていた。表紙の似顔絵も、誰だかよく分からない西洋人(1巻)だったし。それが、最新刊の4巻の表紙を見たら、「あ、泉鏡花だ!」とすぐ分かったので、手に取って中を覗いてみた。ついでに隣にあった1巻も開いてみたら、明恵さんが載っていたので、買うことにした(2巻と3巻は無かったので、また後日)。

 このシリーズ、生まれつき、見えないものが見える、もしくはそういうものを見ようとして、いろいろと工夫した人々、いわゆる「神秘家」の評伝集である。1巻に取り上げられているのは、スウェーデンボルグ(18世紀の神秘家)、ミラレパ(チベットの聖者)、マカンダル(ブードゥー教の呪術師)、そして明恵上人。著者の幅広い関心を示している。ミラレパ、マカンダルなんて、全く初耳だったけど、事実とも作り話とも分け目を付けがたいくらい、面白かった。

 4巻は日本人揃いだが、泉鏡花、柳田国男、天狗小僧寅吉(平田篤胤を翻弄した少年)くらいまではともかく、仙台四郎(仙台限定の招福キャラ、幕末・明治に実在)、駿府の安鶴(幕末の侠客)という具合。「あとがき」を任された小松和彦教授でなくても、「いったい水木さんの『神秘家』の基準はどこにあるのか」、困惑を感じてしまうことだろう。

 まあ、しかし、そんなのは「この世」しか見えない凡人の困惑であって、「あの世」に半身をつっこんだ”屍解仙”状態(荒俣宏氏)の水木センセイには、誰が「神秘家」で、誰がそうでないか、ちゃんと見えているのかもしれない。
コメント (2)
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