見もの・読みもの日記

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東京ミッドタウンで日本を祝う/サントリー美術館

2007-04-22 23:21:24 | 行ったもの(美術館・見仏)
○サントリー美術館 開館記念展I『日本を祝う』

http://www.suntory.co.jp/sma/

 2年余り、休館していたサントリー美術館が、場所を六本木に移してオープンした。3月末から始まった開館記念展にようやく行ってきたのだが、私は六本木の駅に着くまで、サントリー美術館の所在地が、巷で噂の「東京ミッドタウン」であることに気づいていなかった。えっ、そうなの?!

 エレベーターがなかなか来なかったので、1~3階のショッピングアーケードを通り抜けることになり、結果、あふれ返るモノと人の山に辟易した。長年通った、赤坂見附のサントリー美術館がなつかしい。私は、出光美術館とか三井記念美術館とか、都心のオフィスビルにある美術館がわりと好きだ。地下鉄の駅を出て、簡素な(あまり愛想のない)入口を入り、長いエレベーターで美術館のある階に、直行で運ばれていくのが好きなのだ。ここのように、延々と続くショッピングアーケードを通り抜けていくのは、どうも気が散る。でも、これから、都心の美術館に行くというのは、こういう体験が主流になるのかなあ。

 さて、展覧会は、開館記念にふさわしく、華やかな名品が勢揃いしているので、あまり余計なことを考えず、それらを”愛でて”眺めたい。コレクションの基本コンセプト「生活の中の美」にふさわしく、屏風、装束、漆器、陶磁器、和ガラスなど、さまざまな作品が並んでいる。時代は、桃山~江戸初期が中心。

 個人的な好みでは、やはり絵画作品が気になる。本展のポスターにもなっている『舞踊図』は、全6面を3面ずつ展示。扇を手に、静かに舞う女性の全身像を描いた、けれんのない小品だが、その小袖のデザインがすばらしく面白い。

 『正月風俗図屏風』で、輪になって一心に踊る少女たちも可愛い。『歌舞遊宴図屏風』は、以前にも見た覚えがあるが、なんとなく猥雑な遊宴図である。どの部屋を覗いても、妓女(?)と戯れて遊んでいるのは坊主なんだよなー。そうでなくとも、近世初期の女性像は、ひとつは髪形(結髪でない)、ひとつは姿勢(立て膝とか寝そべった姿が多い)のせいで、実際以上に自堕落な感じがするのだ。そこが魅力なんだけど。

 『三十三間堂通し矢図屏風』は初見。稚拙だが、一生懸命に描いた子どもの絵のようだ。妙に細部が詳しいので、当時(17世紀)の風俗が見てとれて興味深い。まず、観客席のあちこちで、茶を立てて飲んでいる姿が目立つ。屋台を担いでいるのもいる(茶釜と、串に刺した田楽も見える)。屋台の主人は穴あきらしい銭を並べている。別に、銭を握り合っている男たちもいる。へえー貨幣経済が、こんなに露骨に描かれた絵画資料って、めずらしいんじゃないかしら。チアガールのポンポンみたいなものを振って、射手を応援する人々の熱狂ぶりも面白い。気になるのは、妙に髭男が多いこと。そういえば、戦国武将の肖像も、みんな髭をたくわえているが、子どもが書き添えた悪戯描きじゃないよなあ。

 階段ホールには、吉岡幸雄の『祝の縷(る)』と題した作品が特別出品されている。6色の糸を縒りあげて1本の綱(注連縄みたい)にしたもの。壁際には、縒り上げる前の細い糸がカーテンのように垂れ下がり、ホール中央には太い綱の先が下がっている。一目見たとき、秘仏ご開帳時に飾られる「結縁」の糸みたいだと思ったので、警備員さんの目を盗み、「作品に触らないでください」という注意書きを破って、そっと壁際の糸に触れてみた。これで私は新しいサントリー美術館と結縁したつもり。
コメント
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