○東京国立博物館・本館16室(歴史資料) 特集陳列『東京帝室博物館歴史部の変遷』
http://www.tnm.go.jp/
会場でメモしてきたことを写しておく。東京国立博物館の初代館長・町田久成は、歴史資料を収集する史伝部(→のち、歴史部)を博物館に設けた。大正年間、帝室博物館の館長となった森鴎外は、日本の歴史を分かりやすく伝えるため、時代別陳列を取り入れた。ところが、関東大震災の後、復興再開された博物館は、「古美術品の優品の分類展示」を行うものと定められ、時代別展示は廃止された。歴史部も廃され、所蔵資料のうち、古美術的な価値を持つものだけが、分類展示に編入された。この状態は、平成13年(2001)まで続いた。
覚えている。私が子どもの頃の東博は、1階も2階も「絵画」「書」「彫刻」「陶芸」といった具合の分類展示だった。今のように1階はジャンル別、2階は時代順(日本美術の流れ)となったのは、本当につい最近である。そして、この第16室で、小規模ながら歴史資料の展示が再開したのも、2001年のことだという。では、私がひそかに贔屓にしている、この「歴史資料」展示は、町田久成、森鴎外の博物館構想の再興であるのだな。
展示品は、歴史部由来の品ということで、明治時代のハーモニカ、一升枡、生人形、踏絵(長崎奉行所旧蔵)絵図、模写など何でもあり。明治41年から大正2年まで、博物館歴史部の広報普及のために作られた「歴史絵葉書」が面白い。6枚入りで1セット。また歴史部の廃止を決めた会議の議事録も展示されている。
ちなみに2階で開催中の特集陳列『絵巻-模本が伝える失われた姿』の『天狗草紙』は「御物 文化十四年■(狩野)養信模」のあとに「史」の朱印があって、もと歴史部の資料と分かる。なるほど、歴史部が作成した模写もあれば、先人の模写を収集したものもあるのだな。
そのほか、国宝室では、兵庫・一乗寺蔵『善無畏像』を展示。作法や様式にとらわれない、大好きな宗教画である。2006年の『最澄と天台の国宝』で見たとき、脱ぎ捨てられた靴が気になって、そのように書いたが、この日、見学者を連れたボランティアの方が「足元の靴をご覧ください」と解説していた。やっぱり、注目ポイントなのだな。
最近、ちょっと楽しみにしている1階・近代美術の部屋では、落合芳幾の『五節句』を見つけた。血まみれの新聞錦絵で知られる芳幾だが、これは穏やかで古典的な集団美人画。狩野友信の『平治合戦』(明治26年)は、絶対、ボストン美術館現蔵の「三条殿夜討の図」を見てるな~と思った。炎上の表現がそっくりである。
それから、彫刻室(仏像)の『天王立像』は、館蔵品らしいが、初めて見るように思った。変に修復が加わっていないところがよい。2階・絵画では、椿椿山の『高久靄像』が印象に残った。
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会場でメモしてきたことを写しておく。東京国立博物館の初代館長・町田久成は、歴史資料を収集する史伝部(→のち、歴史部)を博物館に設けた。大正年間、帝室博物館の館長となった森鴎外は、日本の歴史を分かりやすく伝えるため、時代別陳列を取り入れた。ところが、関東大震災の後、復興再開された博物館は、「古美術品の優品の分類展示」を行うものと定められ、時代別展示は廃止された。歴史部も廃され、所蔵資料のうち、古美術的な価値を持つものだけが、分類展示に編入された。この状態は、平成13年(2001)まで続いた。
覚えている。私が子どもの頃の東博は、1階も2階も「絵画」「書」「彫刻」「陶芸」といった具合の分類展示だった。今のように1階はジャンル別、2階は時代順(日本美術の流れ)となったのは、本当につい最近である。そして、この第16室で、小規模ながら歴史資料の展示が再開したのも、2001年のことだという。では、私がひそかに贔屓にしている、この「歴史資料」展示は、町田久成、森鴎外の博物館構想の再興であるのだな。
展示品は、歴史部由来の品ということで、明治時代のハーモニカ、一升枡、生人形、踏絵(長崎奉行所旧蔵)絵図、模写など何でもあり。明治41年から大正2年まで、博物館歴史部の広報普及のために作られた「歴史絵葉書」が面白い。6枚入りで1セット。また歴史部の廃止を決めた会議の議事録も展示されている。
ちなみに2階で開催中の特集陳列『絵巻-模本が伝える失われた姿』の『天狗草紙』は「御物 文化十四年■(狩野)養信模」のあとに「史」の朱印があって、もと歴史部の資料と分かる。なるほど、歴史部が作成した模写もあれば、先人の模写を収集したものもあるのだな。
そのほか、国宝室では、兵庫・一乗寺蔵『善無畏像』を展示。作法や様式にとらわれない、大好きな宗教画である。2006年の『最澄と天台の国宝』で見たとき、脱ぎ捨てられた靴が気になって、そのように書いたが、この日、見学者を連れたボランティアの方が「足元の靴をご覧ください」と解説していた。やっぱり、注目ポイントなのだな。
最近、ちょっと楽しみにしている1階・近代美術の部屋では、落合芳幾の『五節句』を見つけた。血まみれの新聞錦絵で知られる芳幾だが、これは穏やかで古典的な集団美人画。狩野友信の『平治合戦』(明治26年)は、絶対、ボストン美術館現蔵の「三条殿夜討の図」を見てるな~と思った。炎上の表現がそっくりである。
それから、彫刻室(仏像)の『天王立像』は、館蔵品らしいが、初めて見るように思った。変に修復が加わっていないところがよい。2階・絵画では、椿椿山の『高久靄像』が印象に残った。