見もの・読みもの日記

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週末関西美術館めぐり:お疲れさま、琵琶湖文化館

2008-03-27 23:41:55 | 行ったもの(美術館・見仏)
○琵琶湖文化館 収蔵品特別公開:近江の美術 第3期『仏教美術の精華』

http://www2.ocn.ne.jp/~biwa-bun/

 3月31日で公開中止(休館)となる琵琶湖文化館に行ってきた。昨年12月6日の県議会で上記の方針が表明されて以降、なんとか撤回にならないものかと見守ってきたが、とうとう決定してしまった。この間の経過は、いつもお世話になっている『観仏三昧的生活(Blog)』に詳しい。

 ともかく、休館前、最後の展覧会となる『仏教美術の精華』である。滋賀県が仏教美術の宝庫であることは、誰も異論のないところだろう。本展は、仏像・仏画・法具・経典など貴重な文化財を、大津・湖南/甲賀/湖西/湖東/湖北の5つエリアに分けて紹介する。滋賀の仏教美術を愛する私には、寺院の名前を聞くだけで、懐かしかったり、憧れを掻き立てられたりするものばかりだ。

 何度か当館を訪れたことのある私には、ああ、これ見た!と記憶のよみがえるものが多かった。たとえば乗念寺の木造聖観音立像(平安時代)は、黒光りする木肌が、肩幅の広いがっしりした体躯を余計に堂々と見せている。解説に「顔の表情はとても厳しく」とあったけれど、そうかなあ。もの言いたげな口元からは、優しい言葉が聞かれそうだと私は思った。

 法蔵寺の仏画『如意輪観音像』は、四角い背景に浮かび上がる坐像が、京博の十二天像を思い出させる。嫣然と微笑む如意輪観音は、庶民的な美人女将の趣き。西教寺の『真盛上人像』は、鎌倉ふうの写実的な肖像画で、全くカテゴリーは異なるのだが、「親しみやすく、しかし卑俗に堕ちない」というのは、近江美術の共通項のひとつだと思う。

 長命寺の『勢至菩薩像』は、中国・南宋時代の名品。緑の衣を引き立てる、紅白の花の縁取りが、ひそかに艶かしい。たぶん6、7年前(このブログを始める前)に本作を見たときの記憶が、激しくよみがえってきた。解説に言うように「緑青系を主とした色彩が異国的」である。私は、この緑青色に魅せられて、近江びいきになったのだ。再びこの絵を見ることができて、本当によかった。

 逆に、今回初めて見ると思ったのは、聖衆来迎寺の『六道絵』(国宝)。いや、画幅は初めてでないかも知れないが、旧軸木14本がハダカで展示されているのを興味深く眺めた。「天文」「明応」「永禄」などの年号が黒々と墨書されている。成菩提院の『不動明王ニ童子像』は、ひざまずくニ童子が、無邪気で可愛い。

 雪野廃寺址出土品『塑造断片』にはびっくりした。雪野寺は、奈良時代中期に行基が創建したと伝える寺院だが、法隆寺の塔本塑像に類するものがあったのではないかと見られている。聖衆来迎寺の銅造薬師如来立像、若王寺の(寺伝)弥勒菩薩立像は、どちらも衣の端を握っているのが気になる。スカートをたくし上げる貴婦人みたいだ。東博の特別展『仏像』でも、同じようなポーズの仏像を見たなあ。

 帰りがけに、受付のカウンターに置かれていた広報誌『Duet』を貰ってきた。Web版で特集記事「滋賀県立琵琶湖文化館」が読めるので、リンクを張っておこう。あとで記事を読んで、ああ、受付ホールに椅子を出して座っていたのは、学芸員の上野良信さんだったんだな、と分かった。時々、刊行物の在庫棚を整頓したりしながら、入館者に「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と、淡々と声をかけていらした。4月以降も、休館した博物館で文化財を守るという、却って大変なお仕事が続くのだろう。関係者の皆さん、頑張ってください。私はまた、ここの収蔵品を見たいと願っています。
コメント (2)
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