見もの・読みもの日記

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今様オランダ風説書(5):アムステルダム、国立美術館~ゴッホ美術館

2008-03-16 22:55:17 | ■オランダ風説書2008
 国立美術館は、2階に上がると、いよいよ絵画である。レンブラントだけではない。ヴァン・ダイク、ルーベンス、フェルメールなど、有名どころの作品が並ぶ。にもかかわらず、日本と違って、他の観客を気にせず、ゆっくり見られるのが、本当にうれしい。初めて覚えた名前に、ピーテル・サーンレダム(Pieter Saenredam)がいる。17世紀オランダで流行したジャンルのひとつ、建築画(建物の外観や内部を描いた絵画)を得意としたという、不思議な画家である。

 やっぱりレンブラントはいいなあ。『夜警』に行き着く前に、私は『織物商組合の見本調査官たち』で、時間を忘れてハマった。ズルいよなあ、この劇的な構図。思わせぶりな表情。会場の解説プレート(英文)によれば、服装の微妙な差異(飾り襟の広さ、無帽か帽子をかぶっているか)、持ちもの、位置によって、登場人物の属性がきちんと書き分けられているそうだ。

 最後は『夜警』。噂には聞いていたけれど、その巨大さにびっくりする。大きな部屋の壁一面を占め、人物は等身大に近い。華やかな衣装、思わせぶりな表情、劇的な光の中に浮かび上がる群像。グランド・オペラの一場面のようだ。ふとヴェルディ『オテロ』の第1幕を思い出す。

 待ちくたびれていた同行人と合流。続いて、隣りのゴッホ美術館に向かう。本当を言うと、ゴッホの絵があまり好きではない。司馬遼太郎氏の『街道をゆく・オランダ紀行』に「ゴッホさんは疲れるね」(奥様の言葉)とあるのを読んで、思わずうなずいた。あの画面に漲る緊張感とエネルギーに、どうにもついていけないと感じてしまうのだ。けれど、不思議なもので、複製から感じていた過剰さ・毒々しさが、本物の作品では希薄だった。個性的な色彩、激しく身をよじるような筆の跡にもかかわらず、何かすがすがしい空気が漂っていた。

 印象に残ったのは「ジャガイモを食べる人たち」。プロレタリア絵画みたいな暗い色調、醜怪さを誇張した農民が描かれている。後年のゴッホらしい明るい色彩は微塵もないのだが、妙に惹きつけられるものがある。

 同美術館の新館では、イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレイの特別展が開かれていた。知らない画家だなあ、と思っていたら、見たことのある作品に遭遇。井野瀬久美恵『大英帝国という経験』(興亡の世界史16)が、英国人の海への欲望を論ずる引合いとした『ローリーの少年時代』という絵画である。ついでに同シリーズ、羽田正『東インド会社とアジアの海』を読み直したら、平戸商館長のオランダ人と日本人女性の間に生まれ、オランダに渡った混血女性コルネリアの姿を描いた『ピーテル・クノルとその家族』という絵画が、アムステルダム国立美術館にある、と書いてある。うーん、記憶にない。それと気づかず、見逃したのなら、とても残念。

■作品画像は「アートatドリアン」へリンク
http://art.pro.tok2.com/index.html

■兵庫県立美術館『オランダ絵画の黄金時代:アムステルダム国立美術館展』(2005/10/25~2006/01/15)※関西では、こんなのやっていたんですね、知らなかった。
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_0510/main.html

■ゴッホ美術館(公式サイトに日本語ページあり!)
http://www3.vangoghmuseum.nl/vgm/index.jsp?page=paginas.talen.ja

■映画『レンブラントの夜警』公式サイト
http://eiga.com/official/nightwatching/
ええ~タイムリーにこんな映画が封切り中とは、全然知らなかった。ピーター・グリーナウェイ監督作品。Yahoo!映画の感想を見ると「素晴らしい!」と「わかんない」が拮抗していて面白い。
コメント
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