見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

週末関西美術館めぐり:神戸市立博物館(承前)

2008-03-25 22:43:55 | 行ったもの(美術館・見仏)
○神戸市立博物館 古地図企画展『地図を楽しむ』

http://www.city.kobe.jp/cityoffice/57/museum/main.html

 長くなったので回を分けてみた。南蛮美術室の企画展に併設で開かれている、もうひとつの企画展。地図皿を中心に、少し風変わりな古地図資料を集めて展示している。

 「地図皿」として最も古い例は、平賀源内が讃岐の志度で焼かせた源内焼(18世紀)である。色は黄、緑、濃紫の釉薬が使われていて、古九谷っぽい。続く天保年間(1830~44年)に、地図皿は大流行した。日本だけでなく、世界図や南北アメリカ図の作例もある。ただし、地図としての正確さは源内焼に劣るように思う。「加賀」の版図がやたらに大きいのは、九谷焼と何らかの関係があるか?と推測されているのが面白い。

 また、日蘭の文化交流の諸相に感激を新たにした。16~17世紀のオランダでは、同国をライオンの姿に見立てた「ライオンマップ」が作られた。当時のオランダは海外貿易の成功で黄金期を迎えており、雄々しいライオン像で示された国土は、国威発揚を象徴するものとして人気を博したという。嘉永3年(1850)鷹見泉石製作の『新訳阿蘭陀全図』はものすごく精巧! 先ごろ、私がオランダ行に際して眺めた現代の地図にも全く引けを取らない。ただ、よく見ると北部の締め切り大堤防が完成していないので、埋め立て地の地形は今と異なっている。

 逆に、A.レランドの銅版画『日本帝国図』(1715年)は、石川流宣(いしかわ・とものぶ)の『日本海山潮陸図』(1691年)を原版としたもので、間違いもそのままコピーしているという。オランダ商人が日本の国内情報を必要としたから生まれたものだが、すごいなあ、当時のグローバルな情報流通ぶり。諸国の国名が漢字で記されている。三つ葵紋とともに掲げられた将軍の図が中国風なのはご愛嬌。

※石川流宣の地図は、明治大学蘆田文庫にもあり。
http://www.lib.meiji.ac.jp/ashida/display/exhibit-2001/contents.html

 このあと、ほかの常設展示もひとまわりした。折しも、有馬・温泉寺伝来の銅製経箱の展示を見られたのはラッキー。『泰西王侯騎馬図』(重要文化財)はさすがに複製品しか出ていなかったが、実物大で、本物の迫力を髣髴とさせた。サントリー美術館の同作品より動きがあっていいかも知れない。いつか本物を見たい。
コメント (2)
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