見もの・読みもの日記

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書道博物館+雑誌『Pen』「特集・書のチカラ」

2010-07-08 23:10:06 | 読んだもの(書籍)
台東区立書道博物館 企画展・中村不折コレクション『墓誌銘にみる楷書の美』(2010年5月18日~7月11日)

 絵画や彫刻・工芸に比べると、「書」の世界は敷居が高い。(茶人趣味の)古筆や墨蹟ならまだしも、この博物館のように、純粋に「書」の美学を追求したコレクションは、なおさらのことだ。それでも、いつも熱心な参観者の姿を見るので、何事にもファンっているんだなあ、と感心する。

 展示方法は、よく工夫されていて、奥深い「書」が素人にも分かりやすく解説されている。知識というほどもない豆知識のレベルだけど、「銘」という漢字を例にあげて、北魏ではへんはつくりより幅が狭いのに対し、隋ではへんとつくりが同じ幅となり、唐ではへんよりつくりの幅が広い、という解説は、よく分かった。北朝では激しい楷書、南朝では穏やかな楷書が生まれ、隋唐でこれが融合する、という見取図も、初めて頭に入った。これを知っているだけでも、あ、北朝の書だ、とか、これは南朝だな、というのが分かって嬉しい。大作『臨顔真卿裴将軍詩軸』はこれまでにも何度か見ているけど、やっぱりもとの顔真卿の書のほうがいい。検索してみたら、中村不折以外にも、さまざまな書家が臨模していることが分かった。

■『Pen』 2010年7/15号「特集・書のチカラ」 阪急コミュニケーションズ 2010.7

 さて、ときどき気になる特集を組む雑誌『Pen』が、最新号で「書」を取り上げている。これは冒険すぎるだろ~仏像とか茶の湯とか戦国武将ならともかく…と思いつつ、買ってみた。冒頭では、日・中・韓の現代書家をひとりずつ紹介する。日本は柿沼康ニ氏。2007年の大河ドラマ『風林火山』のタイトルロゴを手がけた書家だ。それ以上に「其疾如風…」という「孫子の兵法」の十六文字の美しさにあらためてうっとりする。「臨書に丹精を重ねてきた書家ならでは」という解説に納得する。

 「知っておきたい名作」に、顔真卿の『祭姪文稿』(台湾故宮博物院蔵)が挙がっているのは嬉しいな。王羲之、蘇軾は当然として、毛沢東はナイス・チョイス。日本の仮名では、伝公任筆『石山切』、光悦の『鶴図下絵和歌巻』などが挙がっている。え、でも、米芾はぁ~? 藤原佐理はないのお~?と、無理を承知で難癖をつけたいところもある。

 書跡だけでは売れないと判断したのか、後半には「とじ込み付録/水墨画とは何か」という関連特集あり。人気と実力の画家をバランスよく取り上げていると思うが、浦上玉堂を入れてほしかったな、私の好みでは。あと、ホセ・フランキーさんのイラストが、けっこう好き。
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