○福岡市美術館
太宰府の九州国立博物館から、福岡市美術館に移動。目の前に大濠公園の水景が広がる、好きな美術館だ。調べたら、中国・西湖の風景を模したというけれど、それはちょっと規模が違いすぎ。むしろ揚州の痩西湖に近い感じがする。
九博でゆっくりし過ぎて、到着は4時近くになってしまった。お目当ての『北京・故宮博物院展』に入る前に尋ねたら、今日は夜7時まで開いているという。え、そんな情報なかったぞ、と耳を疑ったが、これはラッキー。常設展示(~17:30)を先に見に行く。
■古美術企画展示室 北京・故宮展関連企画『明の夢・清の華』(2011年11月1日~12月27日)
旅行直前にこの企画を知って、色めき立った。サムネイルに上がっていたのが、明代の『百鳥図』(若冲ふうの鳳凰が描かれた)だったので。展示品は、磁器・工芸品などとあわせて18件。うち6件が絵画資料である。呂紀筆『花鳥図』、伝・辺文進筆『百鳥図』、伝・辺文進筆『紅蓼白鷺図』は、黒田資料(旧福岡藩主黒田家伝来)の一部である。呂紀の『花鳥図』は、全体に薄墨を塗った背景に、孔雀の雌雄、雀、カササギ(?)を描く。花は白梅、赤い芍薬(?)。花や鳥の特定には自信がないな…。柳の枯れ枝のゴツゴツした質感、べたっと墨を置いたような岩の描き方に目が留まる。印記あり。
『紅蓼白鷺図』は印記なし。紅蓼(たで)のゆらゆら揺れる感じが夢のようで、女性的な美しい画面。『百鳥図』も印記なし。辺文進の画風とは異なり、明代後期のものと推定されている。正方形に近い、横広な画面に、雌雄の鳳凰を囲む多種多様な鳥(基本、つがい?)の姿が描かれている。これ、好きだー。同種の絵画の中でも、抜群に明るく祝祭的な印象があるように思った。
『文官肖像』は、一般資料(特定のコレクションに属さない)で、清代とあったが、描かれている人物は、黒い冠(烏沙帽)に赤い衣で、明代官吏の常服(※参考:百度=中国語サイト)である。等身大を超える大きな画幅。袖をたくしあげて、石帯に手を添え、かすかに指を見せる。何者とも分からないのが気になる。
伝・沈周筆『山水図巻』には、日本人好みのゆるい愛らしさを感じた。沈周は明代後期の文人画家だそうだが、ネットに上がっている代表作の画風を見ると全然違うように思う。森山コレクション(福岡生まれの経済人・森山馨氏旧蔵)だそうだ。
■その他の古美術企画展示
上記と同じ室内に「田中丸コレクション」という別コーナーがあって、唐津、高取、上野(あがの)焼など、九州各地の茶陶が展示されていた。九州茶陶って、どれも個性的で魅力的だな、とあらためて思う。田中丸コレクションは、田中丸善八氏(1894-1973)の収集による九州陶磁コレクション。同氏は、百貨店「玉屋」の創業者で、九州北部の主要都市で「デパート文化」の一時代を築いた(現在は福岡県からは撤退)。以上、私は調べてはじめて知ったのだが、会場のお客さんが「田中丸」という名前を見るや「ああ、玉屋か」とつぶやいていたのが、さすが地元で、印象的だった。
松永記念館室では「文様の楽しみ」を開催中。松永安左エ門氏(耳庵と言ってくれるほうが分かりやすいのに)の旧蔵コレクションから、特徴的な文様に着目して、陶磁器・織物など、約20件を展示。鎌倉時代の『扇面散文鏡』(和鏡)が目を引いた。展示室の一角に茶室・春草蘆が模してあった。複雑な経緯がよく分からなかったが、茶室・春草蘆は東博の構内に、その春草蘆があった柳瀬山荘は埼玉県志木市に現存するらしい(※東博のページ)。「電力の鬼」と呼ばれた松永耳庵が生きていたら、いまの東電や原発をめぐる紛糾に何ていうのかなあ、などと、ぼんやり考える。
東光院仏教美術室も久しぶりに見た。仁王、十二神将×2組と、こわもての仏像が多いが、中央の台上の十二神将は、狭い展示台に身を寄せ合いすぎで、笑えてしまう。
いまだけの特典としては、福岡市博物館の改修休館にともない、国宝の金印(漢委奴国王印)が展示中である(2011年11月8日~2012年4月1日)。福岡市民にはどっちでもいいことかもしれないが、遠方から行くと、いくつも施設をまわれないので、ちょっと得をした気分になる。
以上をゆっくり見ていたら、17時過ぎになってしまった。特別展示が19時までで、本当によかった(別稿に続く)。
太宰府の九州国立博物館から、福岡市美術館に移動。目の前に大濠公園の水景が広がる、好きな美術館だ。調べたら、中国・西湖の風景を模したというけれど、それはちょっと規模が違いすぎ。むしろ揚州の痩西湖に近い感じがする。
九博でゆっくりし過ぎて、到着は4時近くになってしまった。お目当ての『北京・故宮博物院展』に入る前に尋ねたら、今日は夜7時まで開いているという。え、そんな情報なかったぞ、と耳を疑ったが、これはラッキー。常設展示(~17:30)を先に見に行く。
■古美術企画展示室 北京・故宮展関連企画『明の夢・清の華』(2011年11月1日~12月27日)
旅行直前にこの企画を知って、色めき立った。サムネイルに上がっていたのが、明代の『百鳥図』(若冲ふうの鳳凰が描かれた)だったので。展示品は、磁器・工芸品などとあわせて18件。うち6件が絵画資料である。呂紀筆『花鳥図』、伝・辺文進筆『百鳥図』、伝・辺文進筆『紅蓼白鷺図』は、黒田資料(旧福岡藩主黒田家伝来)の一部である。呂紀の『花鳥図』は、全体に薄墨を塗った背景に、孔雀の雌雄、雀、カササギ(?)を描く。花は白梅、赤い芍薬(?)。花や鳥の特定には自信がないな…。柳の枯れ枝のゴツゴツした質感、べたっと墨を置いたような岩の描き方に目が留まる。印記あり。
『紅蓼白鷺図』は印記なし。紅蓼(たで)のゆらゆら揺れる感じが夢のようで、女性的な美しい画面。『百鳥図』も印記なし。辺文進の画風とは異なり、明代後期のものと推定されている。正方形に近い、横広な画面に、雌雄の鳳凰を囲む多種多様な鳥(基本、つがい?)の姿が描かれている。これ、好きだー。同種の絵画の中でも、抜群に明るく祝祭的な印象があるように思った。
『文官肖像』は、一般資料(特定のコレクションに属さない)で、清代とあったが、描かれている人物は、黒い冠(烏沙帽)に赤い衣で、明代官吏の常服(※参考:百度=中国語サイト)である。等身大を超える大きな画幅。袖をたくしあげて、石帯に手を添え、かすかに指を見せる。何者とも分からないのが気になる。
伝・沈周筆『山水図巻』には、日本人好みのゆるい愛らしさを感じた。沈周は明代後期の文人画家だそうだが、ネットに上がっている代表作の画風を見ると全然違うように思う。森山コレクション(福岡生まれの経済人・森山馨氏旧蔵)だそうだ。
■その他の古美術企画展示
上記と同じ室内に「田中丸コレクション」という別コーナーがあって、唐津、高取、上野(あがの)焼など、九州各地の茶陶が展示されていた。九州茶陶って、どれも個性的で魅力的だな、とあらためて思う。田中丸コレクションは、田中丸善八氏(1894-1973)の収集による九州陶磁コレクション。同氏は、百貨店「玉屋」の創業者で、九州北部の主要都市で「デパート文化」の一時代を築いた(現在は福岡県からは撤退)。以上、私は調べてはじめて知ったのだが、会場のお客さんが「田中丸」という名前を見るや「ああ、玉屋か」とつぶやいていたのが、さすが地元で、印象的だった。
松永記念館室では「文様の楽しみ」を開催中。松永安左エ門氏(耳庵と言ってくれるほうが分かりやすいのに)の旧蔵コレクションから、特徴的な文様に着目して、陶磁器・織物など、約20件を展示。鎌倉時代の『扇面散文鏡』(和鏡)が目を引いた。展示室の一角に茶室・春草蘆が模してあった。複雑な経緯がよく分からなかったが、茶室・春草蘆は東博の構内に、その春草蘆があった柳瀬山荘は埼玉県志木市に現存するらしい(※東博のページ)。「電力の鬼」と呼ばれた松永耳庵が生きていたら、いまの東電や原発をめぐる紛糾に何ていうのかなあ、などと、ぼんやり考える。
東光院仏教美術室も久しぶりに見た。仁王、十二神将×2組と、こわもての仏像が多いが、中央の台上の十二神将は、狭い展示台に身を寄せ合いすぎで、笑えてしまう。
いまだけの特典としては、福岡市博物館の改修休館にともない、国宝の金印(漢委奴国王印)が展示中である(2011年11月8日~2012年4月1日)。福岡市民にはどっちでもいいことかもしれないが、遠方から行くと、いくつも施設をまわれないので、ちょっと得をした気分になる。
以上をゆっくり見ていたら、17時過ぎになってしまった。特別展示が19時までで、本当によかった(別稿に続く)。