見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2016年7月展覧会拾遺@東京

2016-07-16 07:09:27 | 行ったもの(美術館・見仏)
レポート未掲載が溜まっているので、まとめて。

日本民藝館 『沖縄の工芸』(2016年6月21日~8月21日)

 玄関を入ると、大階段前の展示ケースには朱塗の沖縄漆器。踊り場には漆喰づくりの個性豊かなシーサー。沖縄だなあと思いながら2階に上る。大展示室の中は紅型(びんがた)で統一。2012年にも同じような展覧会『琉球の紅型』があったことを思い出し、見覚えのある模様を見つけて喜ぶ。奥の壁の中央には、藍地に鶴亀・松竹梅と「胡」の字を染め抜いた「芝居幕」が飾られていた。「胡」は苗字なのかなあ、と考える。「沖縄の織物」の部屋に飾られていた、絣や縞の着物も簡素で美しかった。芭蕉の繊維で織ったものもあるらしい。「沖縄の焼物」では、腰に下げたらフィットする抱瓶(だちびん)が欲しい。

 興味深かったのは、1940年、柳宗悦が沖縄を訪ねたときの短い映像が上映されていたこと。戦前の沖縄! 首里城(焼けたんだよね?)や玉陵(たまうどぅん)など、見覚えのある風景が映っている。人々の服装はずいぶん違う。同じ年、坂本万吉が撮影した写真には、紅型を染め、焼物を焼く人々の姿のほか、崇元寺の石門や円覚寺の堂宇(確かに鎌倉の円覚寺に似ている)も写っていた。この撮影から5年後に、沖縄を襲った運命のことを思うのはつらい。

静嘉堂文庫美術館 『江戸の博物学~もっと知りたい!自然の不思議』(2016年6月25日~8月7日)

 「本草書の歴史をたどりつつ、それと並行して江戸時代の人々に西洋博物学がどのように受け入れられてきたのか」を紹介する展覧会。行ってみたら、想像以上に「書物」を見る展覧会だった。めずらしい漢籍が多数。『新編証類図註本草』(元刊本)は水牛の図が開いていた。『纂図増新群書類要事林広記』(明刊本)は桃の種類を記した箇所で、モンゴル文字が見えた。『飲膳正要』(元刊本の明代復刻)は、中国唯一のモンゴル系の食物の本。判型はかなり大きい。「蝦(エビ)」について「味甘、有毒多食損人、無髯者不可食」云々とあった。

 江戸の学者たちの著書・蔵書も多数。多紀元簡が校勘した『本草和名』や西川正休が訓点をつけた『天経惑問』なども。大槻玄沢旧蔵書は、大槻文彦氏を通じて静嘉堂に入った。『日東魚譜』など、挿絵が楽しいものが多い。『解体新書』は有名な表紙ではなく、「眼目編」という箇所が開いていて、新鮮な印象だった。ポスターにもなっている司馬江漢『天球全図』の本物は意外と小さい。でも確かに迫力がある。岩崎灌園『本草図譜』は、あまりに色鮮やかでセンスがいいので、植物図鑑というより、植物柄のテキスタイルブックみたいだと思った。最後の『鱗鏡(うろこかがみ)』は初公開。高松藩の家老だった木村黙老の撰。近縁種の魚も、その模様や体型の特徴を細かく楽しそうに描いている。たくさんページを開けてくれていて嬉しい。狩野探幽『波濤水禽図屏風』は、この展覧会の中では異色だが、意外と違和感なくマッチしていた。

東京国立博物館 特別展『古代ギリシャ-時空を超えた旅-』(2016年6月21日~9月19日)

 ギリシャ本国の各地の博物館のコレクションで構成された展覧会。古代ギリシャ世界のはじまりから、ミノス文明、ミュケナイ文明を経て、幾何学様式、アルカイック時代、クラシック時代、マケドニア王国、ヘレニズム、ローマにおけるギリシャ文明の受容までをたどる。高校時代に読んだ澤柳大五郎『ギリシアの美術』(岩波新書)が今でも頭に入っているので、基本的な時代区分には迷わない。ミノス文明(ミノア文明、クレタ文明)は面白い。華やかで、どこか軟弱な感じ。牡牛が神聖視されていたようだが、蛸とか魚とかイルカとか、海洋文明らしいモチーフも散見される。

 古典ギリシャの都市国家について、民主政治に使われた投票具などが展示されていたのも面白かった。オストラキスモス(陶片追放)に使われた陶片(オストラコン、本当にゴミのような陶片なのだな)には、テミストクレスとかアルキビアデス(ソクラテスの弟子の?)の名前があり、詳しい説明はなかったけど、おお~と感心して見入った。

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