見もの・読みもの日記

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金地屏風たくさん/江戸絵画への視線(山種美術館)

2016-07-13 11:48:52 | 行ったもの(美術館・見仏)
山種美術館 開館50周年記念特別展 山種コレクション名品選I『江戸絵画への視線-岩佐又兵衛から江戸琳派へ-』(2016年7月2日~8月21日)

 1966(昭和41)年に開館した同館が、館蔵品の中から名品を選りすぐって紹介する「山種コレクション名品選」の第1弾。私は山種美術館といえば「近代・現代日本画専門の美術館」のイメージが強く、ときどき、あ!こんな古い作品も持っているんだと驚くことはあるが、江戸絵画だけをまとめて展示するのは珍しいと思う。「初めてかもしれない」と書きかけたが、よく調べたら、広尾に移った2010年の開館記念特別展シリーズにも『江戸絵画への視線-岩佐又兵衛《官女観菊図》重要文化財指定記念-』という企画があった。

 最初に展示されていたのは、若冲の『伏見人形図』。縦長の画面に七体の布袋さんが並んでいる図。展示ケースの奥行きが薄いので、ぎりぎりまで作品に近づけるのが嬉しい。それから版画のような色の塗り方。酒井抱一、鈴木其一など琳派の作品が並び、華やか。それから「金屏風コーナー」があって、伝・宗達筆『槙楓図』、酒井抱一筆『秋草鶉図』、鈴木其一筆『四季花鳥図』、伝・土佐光吉筆『松秋草図』と並ぶ。保存がよいのか、照明の具合がよいのか、金の輝きに品と深みがあって美しい。はっきり記憶にあったのは『槙楓図』だけで、あとの作品は全く忘れていた。其一の『四季花鳥図』は、金地をものともしない、鮮やかな色彩の草花と鳥(右隻はニワトリの家族、左隻はオシドリの夫婦)はパラダイスに近いという意味で、ちょっと「南国風」。最初の三点は写真撮影が許可されているが、あまりバチバチ撮っている人はいなかった。



 金地屏風はこのほかにも『竹垣紅白梅椿図』『源平合戦図』『輪踊り図』(いずれも17世紀、作者不詳)が出ていて、同館のコレクションの厚みをあらためて感じた。『竹垣紅白梅椿図』は六曲一双の堂々とした屏風で、右隻から左隻へ斜めに横切る長い竹垣に、紅白の梅と紅白の椿がからんでいて、その間に小さな鳥たちが隠れている。山種の江戸絵画としてはおなじみの岩佐又兵衛筆『官女観菊図』や狩野常信筆『明皇花陣図』も。

 後半の「文人画」特集は地味だと思ったが、だんだんこの手の絵画が好きになってきた。たぶん初めて名前を意識した日根対山(1813-1869)の『四季山水図』は、夏と冬が墨画、春と秋が色つきで描かれている。紙本ではなく絖本。おおらかな山水と、その中に閑居する人物の姿に惹かれる。椿椿山の『久能山真景図』は久しぶりに見た。絵本の挿絵みたいでほのぼの。最後の岡本秋暉『孔雀図』は、低い姿勢に構えた孔雀が猛禽類らしく迫力があった。

 第2展示室は上村松園『蛍』など全て近代日本画。最後に1階のカフェで一休み。今期のオリジナル和菓子は力作揃いだが、『輪踊り図』にちなんだ「おどり姿」をいただく。駿河台下の和菓子屋ささまの「玉川」をカラフルにした感じ。お茶は「冷やし抹茶」で、ガラスの茶碗に大きな氷の塊が入っていた。幸せ。

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