付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「モリウサギ」 高村渚

2020-02-01 | ミステリー・推理小説
「仲間で定めた仲間のルールは守る。たとえ神が異論を唱えても」
 小説『ヴァルナシア旅行団』の台詞。

 これと定めたご主人様の望むままに、どんな獲物でも狩ってくる猟犬「守護獣」を獲たものは世界を征す……そんな都市伝説のような話が政財界や官僚の世界の一部では噂されているらしい。
 少なくとも、警察出身の政治家や公安委員長が絡む事件の捜査で陥れられ、左遷や免職どころか悪くすれば犯人にされていたかもしれない刑事が、一転して殉職もしなのに二階級特進するくらいには信憑性がある話として信じられているらしい。
 それは書店に並んだライトノベル『ヴァルナシア旅行団』のサイン本の前から始まった……。

 「コミケ土産です」と置いていかれた袋の中には、文庫サイズの小説が4冊。3話、4話、最終話……で、2話は?と訊いたら、1巻が1話2話同時収録です……って分かりにくい。
 軽く読めて面白かったので最後まで一気読み。巨悪に蟷螂の斧で挑もうとして追い落とされそうになっていた平刑事のもとに、名古屋からわざわざ転校してまで押しかけてきた見ず知らずの女子高生は、魔法のような情報収集から神業のような射撃までこなすスーパーレディでした。ただ、刑事と少女の共通点は1冊の本を愛していたというそれだけの話……というアクション主体の刑事ドラマ。
 面白かったけれど、それだけに守護獣の正体はあやふやなままにしておいた方が良かった気がします。

【モリウサギ】【高村渚】【藍乃屋】【押しかけ嫁】【連続少女誘拐事件】【殺人事件】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「劇場版シティーハンター 史上最香のミッション」 監督:フィリップ・ラショー

2019-12-04 | ミステリー・推理小説
 11月末公開のフランス映画、観てきました。
 田舎のシネコンの平日夜のレイトショーだけに公開直後でもガラガラでしたが、映画は最高! 黒岩涙香の「幽霊塔」以来の感動……みたいな翻案映画。

 ボディガードや探偵を請け負う凄腕のスイーパー(始末屋)こと、「シティーハンター」ことサエバ・リョウのもとに、相棒のカオリが請け負ってきた仕事は香水の警護。「キューピッドの香水」という、その香水は香りをかいだ者を虜にする洗脳効果があるというのだ。
 半信半疑の2人だが、香水の効果を確認しようとしていたところを、「キューピッドの香水」が海坊主と呼ばれる傭兵によって奪われてしまう……。

 えっと、初っぱなからシティーハンターでした。
 冴羽獠はフランスではニッキー・ラーソンという役名らしいけど、吹き替え版の映像に映るネームプレートにはしっかり「RYO SAEBA」とありました。ちゃんと作り込んでます。原作に登場するお約束の要素は、カラスからハンマーまできっちりはめ込まれ、レギュラーキャラクターたちが活き活きと飛び回っています。映画オリジナルの脇役たちも良い感じの雰囲気を出して違和感なくはまっています。でも、パンチョの澄んだ目はちょっと怖かったかも。
 最後はいつものように。そう、最後の最後までシティーハンターでした。

【シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション(吹替)】【ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント】【アルバトロス・フィルム】【フィリップ・ラショー】【エロディ・フォンタン】【山寺宏一】【沢城みゆき】【玄田哲章】【田中秀幸】【伊倉一恵】【神谷明】【浪川大輔】【多田野曜平】【土師孝也】【恒松あゆみ】【三上哲】【もっこり】【100tハンマー】【あひる】【モルモット】【「Get Wild」】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「警部マクロード(22)~市警察本部最悪の日」 主演:デニス・ウィーヴァー

2019-03-28 | ミステリー・推理小説
「ここはアラモの砦と思え。君に逃げ場はない!」
 持ち場を死守しろと発破をかけるブロードハースト。これがいわゆる原題の「THIS MUST BE THE ALAMO」の部分かな。しかし、これは人手不足でも暑くても通常任務をこなせという意味であって、まさかこのあと本当にアラモ砦ばりの攻防戦が起きようとは夢にも思わなかったのです。
 いろいろブロードハーストの自業自得が目立つ回です。

 ニューヨークは25年ぶりという猛暑に電力不足で、クーラーも止まり、テレビもつかない。建物の中が暑くて、娯楽もないとなると人々は街頭にたむろするようになり、ちょっとしたことで大騒動になる。暴動、停電、爆弾騒ぎと市内は騒然としていた。
 クリフォード本部長も暴動を警戒して状況監視室に特別警戒の応援に出かけ、市警本部はブロードハースト刑事が預かることとなった。
 張り切るブロードハーストだったが、そのとき、拘置所では黙秘を貫いていた美女が殺されていた。賭博組織の八百長、イカサマなどの裏情報を手に逃走していたシャノン・テイラーが、面会の弁護士を粧った殺し屋に口封じされたのだ。しかし、彼女がメモしていた手帳がどこにもない。
 彼女のメモが警察署内にあると考えた組織は、市警本部に殺し屋の群を送り込んで奪還を試みるのだが……。

 1973年にNHKで放送された「警部マクロード」、襲い来る犯罪組織の特攻隊を、騒動で手薄になった警察署の面々が迎え撃つという、まさにアラモの攻防戦の回。
 熱波のニューヨークということで温度計の数字は華氏105度を突破していますが、これは摂氏でいうと40度超えたあたり。当時の夏は30度を超えたあたりが普通でしたから確かに猛暑ですが、最近の日本では40度超があたりまえなので、気候が随分と変わったなあと思います。

【警部マクロード(22)】【市警察本部最悪の日】【THIS MUST BE THE ALAMO】【NBC】【ブロードウエイ】【デニス・ウィーヴァー】【J・D・キャノン】【ダイアナ・マルドー】【ケン・リンチ】【ラレイン・スティーヴンス】【マーク・ハンニバル】【宍戸錠】【市警本部三部作】【赤ん坊】【万引きババア】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「黒蜥蜴と怪人二十面相」 江戸川乱歩

2019-03-17 | ミステリー・推理小説
 江戸川乱歩賞というものがあるくらい、日本のミステリの代表作家の1人が江戸川乱歩。その江戸川乱歩の作品で活躍する名探偵と言えば明智小五郎。今でこそ孫の知名度で金田一耕助に押されがちですし、ミステリの名探偵といえば他にも大勢いるわけですが、映画やテレビドラマや舞台で演じられ、またパロディや二次創作で活躍する度合いを見ればまだまだトップクラス。
 その明智小五郎に挑む犯罪者として有名なのが怪人二十面相と女賊黒蜥蜴。
 主に少年少女向けの作品に登場し、そのころ、東京中の町という町、家という家では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました……という20の顔を持つ男、神出鬼没の大泥棒、人を殺さぬ愉快犯、でも美少年は虐める怪人二十面相(後に四十面相に改名)。
 かたや、妖艶な美貌と大胆な行動で暗黒街の女王として君臨し、コレクションした美女や美青年は剥製にして宝石と共に飾るという、退廃耽美で猟奇なアダルト向け作品に登場した稀代の女賊・黒蜥蜴。
 この黒蜥蜴と怪人二十面相が登場する2作品を1本に収めた、お得な1冊。これはぜひ手元に置いておきたい文庫ですね。
 ところがこの二大悪人をテーマにしながら、表紙は黒蜥蜴と怪人二十面相を押しやって、見知らぬ青年が中央に。もじゃもじゃ頭でもないので明智小五郎でもなさそう。なんだい、こりゃ?……と思っていたら、これは映画「文豪ストレイドッグス」の公開に合わせた、江戸川乱歩をテーマにしたコラボイベントの一環だったらしく、「文豪ストレイドッグス」版の江戸川乱歩だったようです。えーーーっ?

【黒蜥蜴と怪人二十面相】【江戸川乱歩】【春河35】【角川文庫】【明智小五郎の二大ライバル】【文豪ストレイドッグス】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「フライング・コップ」 主演:レスリー・ニールセン

2019-02-02 | ミステリー・推理小説
 70年代にケンタッキー州でアングラ系コメディ芝居を上演していたザッカー兄弟らがそのネタを抱えて映画界に乱入し、同人テイストが強いオムニバス・コメディ映画『ケンタッキー・フライド・ムービー』を公開したのが1977年。それがウケて、航空パニック映画をパロディにした『フライングハイ』を製作。
 その『フライングハイ』に胡散臭い医師の役で登場したのが、海洋パニック映画『ポセイドン・アドベンチャー』とSF映画『禁断の惑星』という、どちらも各ジャンルの代表的古典とも言うべき作品で船長役を務めていたレスリー・ニールセン。
 そのレスリー・ニールセンが、ザッカー兄弟とジム・エイブラムズによって主役に起用されたのが全6話のテレビドラマシリーズ『フライングコップ』です。各話30分で1960年代の刑事ドラマのフォーマットで作成され、豪華なゲストスターがオープニングで殺されて本編出番無しとか、パトカーは停車する時に必ず何かにぶつかって停まるとか、情報屋は学校の宿題から外科のバイパス手術まで何でも知っているとか、お約束ギャグ満載のドラマ。日本ではビデオ・パッケージの発売のみで、直訳すればいかにも警察ドラマっぽい「警察捜査隊」みたいなタイトル「Police Squad!」が「知能指数0分署」と頭の悪い翻訳をされ、『フライングハイ』で脚光を浴びたスタッフなのでそのまま『フライング・コップ』とも呼ばれるようになりました。その後、劇場版にもなって『裸の銃を持つ男』としてシリーズ化して日本でもそこそこヒットしましたが、やはり30分ドラマのフォーマットでいろいろ放り出しながら急転直下で話がまとまる『フライングコップ』の方が面白いなあ。
 ただ、英語の言葉遊び的なギャグが多いので、日本語吹き替えだけだと分かりにくいですね。画面の片隅でいつも何か不条理な出来事が起きていて、登場人物たちの会話からネタを推測する頭のトレーニング。「つまり、今のギャグが何を意味しているかというとですね……」というやつ。たとえば「容疑者を尾行しろ」と警部が部下に指示を出すと誘導員が旗を振って爆撃機が離陸していく……というのは、「追跡しろ」の「take off」が「離陸」と意味が重なっているからで……。

【フライング・コップ】【レスリー・ニールセン】【ジム・エイブラムズ】【デヴィッド・ザッカー】【ジェリー・ザッカー】【ジョー・ダンテ】【ウィリアム・シャトナー】【スラップスティック・コメディ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ピース」 樋口有介

2019-01-28 | ミステリー・推理小説
「子供たちを殴り倒してでも、子供たちを殺してでも、カメラの前から排除すべきだった」

 埼玉県の田舎町で、バラバラ殺人事件が1ヶ月の間に連続して発生した……。

 子供の無思慮な残酷さって、無性に腹が立つ時ってありますよね。
 畑中純の版画風のイラストって、すごくピンポイントで山場を押さえてますよね。

【ピース】【樋口有介】【畑中純】【中公文庫】【御巣鷹山】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「モモンガの件はおまかせを」 似鳥鶏

2018-07-23 | ミステリー・推理小説
「……外してたら恥ずかしいし」
 名探偵が思わせぶりなことを言いつつ、最後まではっきりさせない理由。

 キリン飼育員の桃本たちがフクロモモンガを保護した古いアパートの部屋には、ミイラ化した死体が転がっていた。もう何ヶ月も放置してあったと思しき死体のすぐ近くには、きちんと水と餌が用意されたモモンガのケージが置いてあった。
 いったい誰が何の目的で死体のすぐ横でモモンガの世話をしていたのか……?

 動物園ミステリーというより動物ミステリーの短編集。
 ツンデレ獣医の鴇先生はともかく、アイドル飼育員・七森さんの影が最近ちょっと薄いかな……というより、主人公にまとわりつく服部君の変態ぶりに磨きがかかったせいかもしれません。比較の問題で。
 一見、名探偵が鴇先生で、ワトソン役が主人公に見えますが、主人公がホームズのポジションで、その言動を至近距離から常に観察し、記録している服部君こそ真のワトソンといえるでしょう。

【モモンガの件はおまかせを】【似鳥鶏】【スカイエマ】【文春文庫】【楓ヶ丘動物園ミステリー】【密室】【ペット業者】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「薬屋のひとりごと7」 日向夏

2018-07-05 | ミステリー・推理小説
「ずいぶん、大きいですね」
「ええ、頑張って育てましたので」


 高順の持ち込んだ面倒ごと、猫猫に女官試験を受けさせ再び後宮に送り込もうという企みもとりあえず成功。猫猫は新たに医官専属の女官となった。
 もちろん当然のように猫猫の同僚となった女官たちは、やっかみで意地悪を仕掛けてくるが、猫猫はそんなことは気にしない。それよりも鬱陶しいのは、彼女の周りに常に出没している面倒くさい変人軍師であった……。

 お約束の上司や同僚の嫌がらせ、または嫌がらせに見える仕掛けでありますが、そんなものは右から左にスルーするのが猫猫クオリティ。それよりも厄介なのは、後宮の妃らへの毒殺騒ぎなのです……ということで、後宮を舞台にしたミステリはまだまだ続きます。姚と燕燕と猫猫の微妙な関係も今回のポイントです。

【薬屋のひとりごと7】【日向夏】【しのとうこ】【ヒーロー文庫】【見目麗しい中世の痛快ミステリー】【小説家になろう】【ウェブ小説】【食中毒】【蛙の卵】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「虚ろなる十月の夜に」 ロジャー・ゼラズニイ

2018-02-02 | ミステリー・推理小説
「達人というものは、手数をむやみに増やすのではなく、無駄を省こうとするものなんだ」
 番犬スナッフは猫のグレイモークにそう語った。あの教区司祭は好戦的プレイヤーだが達人ではないと。

 時はおそらく19世紀末。その10月は特別な月だった。
 扉を開けるのか閉じるのか。獲物を切り裂いて回るジャックと丘の上の魔女ジル、地下の棺桶に眠る伯爵、死体をつなぎ合わせて生み出された人造巨人、銀の銃弾を弱点とする獣に変化する男、狂える怪僧、いつしかロンドン郊外の集落に集まってきた謎の人物たち……。
 彼らはプレイヤーとして《開く者(オープナー)》と《閉じる者(クローザー)》に別れ、使い魔(コンパニオン)を駆使して10月最後の日に行われる儀式を賭けて相争う。だが、その過程で誰かが1人の警察官を殺害してしまう。
 その事件解決のために村に姿を現したのは、変装の達人にしてヴァイオリンの名手の名探偵だった。
 果たして、ハロウィーンの夜に門は開くのか、閉ざされるのか……。

 これまでさんざんギリシア神話やらインド神話やら各地の神話伝承をモチーフにした幻想的なSFを発表していたロジャー・ゼラズニイが、最後に手を付けたのはクトゥルー神話でした。
 特に名前は出てこないのだけれど、切り裂きジャックに吸血鬼ドラキュラ、フランケンシュタイン博士のモンスター、名探偵シャーロック・ホームズらが登場し、旧き神々の復活を巡って抗争を繰り広げる話なのだけれど、物語としてはジャックの飼い犬スナッフの語りで進むので、主な登場人物はネコにヘビにコウモリにリスにフクロウに……と動物モノの体裁です。ぜんぜんほのぼのしてませんけれど。
 ただ、ストーリーや設定が分かりにくいのはいつものゼラズニイ。かなり読み進めないと、どこで誰が何をしようとしているのか分かりません。語り手が犬だしね。

【虚ろなる十月の夜に】【ロジャー・ゼラズニイ】【広江礼威】【竹書房文庫】【クトゥルー】【ナイアルラトホテプ】【マザーグース】【五芒星杯】【儀式殺人】【ドリームワールド】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「警部マクロード(30)~市警本部大攻防戦」 主演:デニス・ウィーヴァー

2017-12-30 | ミステリー・推理小説
 ニューメキシコ州タオスからニューヨーク市警へ研修に派遣された保安官補サム・マクロードは、大都会においてもカウボーイハットとシープスキンのジャケット姿で西部の流儀は崩さない。
 しかし、今夜の市警本部は監査の役人がやってきて来るし、男の全身にペンキを塗りまくった女権論者がわめき立ててと大騒ぎだった。ところがそんな騒ぎをさらに煽るかのように、この市警本部に密かに保護されていた重要事件の証人を狙って重武装の殺し屋たちが突入しようとしていた……。

 『警部マクロード』は『刑事コロンボ』など3作品と合わせてアメリカでは「NBCミステリー・ムービー」として週替わりで放映されており、日本ではNHKで宍戸錠による吹き替えで放映されていました。
 ニューメキシコのド田舎から大都会ニューヨークの市警本部に出向してきた型破りな保安官が、都会の洗練された捜査方法なんかお構いなしのニューメキシコ流で犯罪に挑むという話で、現代アメリカが舞台なのに列車強盗や牛泥棒が暴れ回ったり、騎馬警官隊が活躍したり、大型トラックがコンボイを組んで暴走したりとやりたい放題。その中でも、この「市警本部大攻防戦」を含む市警本部三部作が、警察本部をアラモ砦に見立てた暴走回として有名。
 なろう系小説に多い、科学技術が遅れた異世界で内政チートで活躍する系の話の逆パターン、洗練された大都会に昔ながらの腕っ節とガンアクションで押し通すのが当たり前の田舎から来た男が大暴れして、既存の秩序をぶち壊していくのです。あくまで流儀が違うだけでローフル・グッドの陣営なので成立するアクションドラマで、そうでないとタダの怪獣映画かピカレスクですね。

【警部マクロード(30)】【市警本部大攻防戦】【NBC】【ブロードウエイ】【デニス・ウィーヴァー】【J・D・キャノン】【ダイアナ・マルドー】【ケン・リンチ】【宍戸錠】【マンハッタン無宿】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「魔法使いと刑事たちの夏」 東川篤哉

2017-08-07 | ミステリー・推理小説
「民主主義なんて、そんなの所詮、強欲な政治家や資本家どもの行動に見せ掛けの合理性を与えるだけの茶番じゃないの」
 だから、ちょっとくらいねじ曲げてもと魔法使いマリィ。

 八王子署のM男、変態刑事の小山田聡介の自宅には魔法使いが住み込んでいた。自称1017歳の魔法少女マリィが、家政婦として働くことになったのだ。
「また殺人事件? 犯人が誰かぐらいは、魔法で教えてあげられるわよ」
 マリィの怪しげな魔法なら犯人を一発で見つけられるが、それでは逮捕できないのだ……。

 魔法少女とドM刑事にドS上司が絡みつつ、殺人事件を解決していく叙述ミステリ短編集。

【魔法使いと刑事たちの夏】【魔法使いマリィ】【東川篤哉】【Minoru】【文春文庫】【禁断のユーモア・ミステリー】【三つ編み】【芸能事務所】【推理作家】【選挙運動】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「エリザベス王女の家庭教師」 スーザン・イーリア・マクニール

2017-06-27 | ミステリー・推理小説
「人々の助けになれないんだったら、王女でいる意味なんてどこにあるというの?」
 エリザベス王女の言葉。

 首相のタイピストからMI-5の工作員に抜擢されたマギーだが、持久力に難ありでとても戦地には送り出せないと送り返されてしまう。
 代わりに彼女が送り込まれたのはウィンザー城。14歳のエリザベス王女の数学教師をしろというのだが、実はナチスドイツが城の王族たちを狙っているという情報があって、その警護も兼ねていた……。

 『チャーチル閣下の秘書』に続く、第二次大戦の下のイギリスを舞台に首相秘書となった女性の活躍を描くシリーズ2作目。推理小説というよりスパイ小説です。今回は疎開している王女の警備役。さらに親子の秘密も明らかになり、死んだはずの父と娘の関係が大きく変化することになります。
 でも、個人的にはこういうタイプは苦手。まだ女性は家庭にあるのが当たり前という時代で、この戦争を契機に社会進出が進んでいくという過渡期なので仕方がありませんが、ヒロインの自己主張が激しく、自分をもっと評価して欲しいという欲求が強すぎるので苦手です。
 あと、王家の使用人への身辺調査がザルだよね……。

【エリザベス王女の家庭教師】【マギー・ホープシリーズ】【スーザン・イーリア・マクニール】【創元推理文庫】【シュレーディンガーの猫】【ブラウン・ウィンザー・スープ】【出たとこ勝負】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「薬屋のひとりごと6」 日向夏

2017-01-24 | ミステリー・推理小説
「大丈夫です、寝台の木目でも数えているうちに終わりますから」

 壬氏に求婚された猫猫だが、今までと変わりなく接したい彼女に壬氏は焦る。
 そもそも皇弟として政に関わる者に恋する自由はないし、猫猫もまた壬氏の心を知りつつも、軍師羅漢の縁者という己の立場を考えると首を縦に振ることはできない。
 そんな中、西都で招かれた宴席で、花嫁が自殺するという事件が起こり……。

 人気画家の食中毒から湖を歩いて渡る仙女の謎まで、あちらこちらでさまざまな事件に巻き込まれながら、常にその背後に見え隠れするのは西欧から来た女の影。連作ミステリが続きますが、それより猫猫と壬氏の関係の方が大問題ですよね。

【薬屋のひとりごと6】【日向夏】【しのとうこ】【ヒーロー文庫】【見目麗しい中世の痛快ミステリー】【小説家になろう】【ウェブ小説】【BL】【サツマイモ】【ロミオとジュリエット】【鳩】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「月物語」 西尾維新

2017-01-14 | ミステリー・推理小説
「ちゃんと喋れよ」
 羽川さんのぼやき。
 今川版ジャイアントロボに限らず、きちんと言葉にしていたら回避できるトラブルは少なくありません。

 若き棋士、桐山零は将棋会館の前で新聞紙にくるまって寝ている、黒と白の髪の不思議な少女に出くわした。

 羽海野チカの将棋マンガ「3月のライオン」12巻の特装版に同梱されていた西尾維新コラボ小説で、いつもとちょっと違う羽川さんは羽海野チカによるもの。
 老倉さんがペンパルから送りつけられた不可解な局面の謎を解く物語で、老倉育を「自慢の友達」と言い切る羽川さんの面の皮を愉しむ話でした。

【月物語】【西尾維新】【羽海野チカ】【講談社BOX】【100%趣味で書かれた将説です】【青春をゼロから羽ばたく物語】【郵便対局】【ペンパル】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「深き森は悪魔のにおい」 キリル・ボンフィリオリ

2016-12-20 | ミステリー・推理小説
「学生さんはビールを飲み、ボートを漕ぎ、本を読んでいるべきです。卒業すればそんなセックスに使う時間なんていくらだってあるんですからね」
 スコーン・カレッジの食料品貯蔵室の用度係のヘンリーの言葉。

 70年代末から80年代にかけてサンリオSF文庫なるものが刊行されていました。
 キティちゃんに代表されるメルヘンとファンシーが売り物のサンリオがSFですよ。10年足らずで終わってしまった理由が、高すぎたせいとはいうけれど、当時はハヤカワもサンリオも1冊360円くらいでどっこいどっこい。訳が悪かったともいうけれど、誤訳は他のレーベルでもいくらでもありました。やはり、先発の創元やハヤカワと差別化を図ったのか、あまりにもマイナーでマニアックなラインナップのせいだったのでしょう。
 ゼラズニィとフィリップ・K・ディックが多かったのはともかく、SFといっておきながら、当時流行りのスペキュレイティヴ・フィクション(思弁小説)までSFの範疇にひっくるめたのか、SFだかファンタジーだか怪奇小説だか純文学だかなんだか分からない物までてんこ盛り。高校の図書館に入っていた『手で育てられた少年』なんて著者こそ英国ニュー・ウェーブの代表作家のブライアン・W・オールディスですが、内容はホレイショ・スタブズという少年が18歳になるまでの性の遍歴を描いた自伝的小説。SFじゃねーよ!という生徒の声に気づいた司書の手によって、閉架書庫へ移動させられてしまいます。

 連続強姦事件が発生する。
 犯人はゴムのマスクをかぶり、山羊のような臭いのする男。伝説のけもの男か、はたまた悪魔主義者か?
 盗品売買も生業とするチャーリー閣下だが、友人の妻たちが次々に被害に遭い、やがてジョアンナにも魔の手が伸びるとなれば、解決に本腰を入れざるを得ないというものであった……。

 そんなサンリオSF文庫だけに、『深き森は悪魔のにおい』もサイコ・オカルトミステリの皮を被ったブラックユーモア・ピカレスク。怪しい美術商“チャーリー・モルデカイ閣下”が、飲んだくれのスナイパー・チャーリー、片目の用心棒ジョック、美人妻ジョアンナを相棒に事件に挑むミステリ。どこにSFがあるんだ!?といえば、彼の作品群には1作だけSF短編があるんだって。

【深き森は悪魔のにおい】【モルデカイ・シリーズ】【キリル・ボンフィリオリ】【サンリオSF文庫】【サイコ・オカルト・ミステリ】【ユーモア・ピカレスク】【悪魔的自由】【ジャージー島】【トロッキーは生きている!】【ベーコンエッグ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする