付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「コップクラフト6」 賀東招二

2016-12-11 | ミステリー・推理小説
 サンテレサ市に市長選挙のシーズンが到来した。
 しかし最有力候補は異世界レト・セマーニよりの住人に対して差別的な言動で知られていて、異世界人の騎士ティラナとコンビを組む地球人の刑事マトバとしても少し面白くない。
 ところが対立する有力候補がセマーニからの移民と思われる犯人によって射殺され……。

 異世界と地球世界との玄関口にある湾岸都市を舞台にした銃と魔術のポリスアクション。
 表紙だけでは何の話かまったく分からないねと嫁さんが言ってましたが同感。スクール水着に違和感がないのが困りものです。
 でも、和牛霜降り肉を炭の塊にするのは許しがたく、万死に値します。

【コップクラフト6】【賀東招二】【村田蓮爾】【ガガガ文庫】【ポリスアクション】【ドワーフ】【仕込み銃】【選挙戦】【バーベキュー】
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「シャーロック・ホームズの不均衡」 似鳥鶏

2016-07-15 | ミステリー・推理小説
「黙っているだけでお前を求めてくれる人間などいない。生きている価値のある人間になりたいなら、誰かに求められるのを待つな」
 自分の価値は自分で守れと御子柴辰巳。

 一般人は知りもしないことだが、世界には名探偵の遺伝子群を持つ人間が存在し、その推理力・問題解決能力を手に入れようと国際的な争奪戦が繰り広げられていたのだ。
 長野山中のペンションで不可能犯罪を解決した天野直人と七海の兄妹は、謎の組織に負われることとなる。知られてはいけないのはホームズ遺伝子を持つのは謎を解決した直人ではなく、言葉を話せない妹の方だということだった……。

 ミステリ小説での密室殺人というのは、ほとんどの場合、パズル以上の意味はありません。他に誰も出入りできない状況で人が死んでいたとして、自殺や事故でなければ殺人であり犯人がいるはずですから、犯人や凶器が出入りした理由が分かろうが分かるまいが捜査には何の問題もありません。リアルなら、まず怪しい人間を取り調べてからトリックを自供させるだけなのですから。
 この話はその矛盾を逆手に取ります。不可能犯罪は犯人が逃げ切るために仕掛けるのではなく、興味深い謎を提示して探偵の遺伝子を持つ人間を焙り出すためにやるのだというのです。
 そういうわけで密室殺人やらなんやらが連続殺人ではないのに連続します。
 そして悪の走狗の講談社! いいのか、これ?

【シャーロック・ホームズの不均衡】【似鳥鶏】【丹地陽子】【講談社文庫タイガ】【名探偵獲得競争】【金のガチョウ】【戦闘メイド】【北斗の拳】【CIA】
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「薬屋のひとりごと5」 日向夏

2016-06-30 | ミステリー・推理小説
 子の一族の反乱が鎮圧され、玉葉妃が正室となり、そして壬氏は偽りの宦官ではなく皇弟として今まで以上に政に参画していくこととなる。
 その壬氏からの命令で、彼と共に玉葉后の故郷である西都へと向かうことになった猫猫は、またいつものごとく、さまざまな事件に巻き込まれていく……。

 蝗害対策もまだ半ばで巻き起こる毒菓子事件とか紙の村の権利問題とかだけれど、いちばん先が読めないのは壬氏の配偶者問題。周囲からは本命候補のひとつと目されていながら、猫猫本人がまったく自覚も何もないところがミソなのに、さらに周囲が婚姻は考えなくても良いから種付けだけしてもらえと身も蓋もない煽り方をするものだから。

【薬屋のひとりごと5】【日向夏】【しのとうこ】【ヒーロー文庫】【見目麗しい中世の痛快ミステリー】【小説家になろう】【ウェブ小説】【亡命】【飲み比べ】
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「幽霊塔」 江戸川乱歩

2016-01-03 | ミステリー・推理小説
 「幽霊塔」というのは元々はアメリカのベンジソン夫人による「ファントムタワー」を原作に、黒岩涙香が好き勝手に翻案した明治のミステリ小説。舞台はイギリスなのに登場人物が日本名なのがいかにも明治の翻案小説で、自分が読んだことがあったのが涙香バージョンで、その黒岩版をブラッシュアップしたのが江戸川乱歩版です。
 表紙はアニメ作家の宮崎駿。映画「カリオストロの城」も、この「幽霊塔」がイメージソースの1つと明言しているくらい物語とギミックに惚れ込んでいるファンなので、描くのも表紙に飽き足らずカラー口絵付き。しかも16頁。60年前に読んだときの思い出から、「幽霊塔」の本当の原作の話まで語り倒したエッセーマンガな上に、さまざまなバージョンの時計塔の設計デザインも考察。なおかつ文章通りの外観ならこれだけど、映画化するならこうでないとダメだと新バージョンも追加。さらに文章の書き方にも言及して絵コンテまで切ってます。
 その上で、

「えいがはつくりません」

と言い切るあたりが屈折してるなあと思います。
 きっと、もう10年若かったら「つくらせろ」と言ってたんだろうな。

【幽霊塔】【江戸川乱歩】【宮崎駿】【岩波書店】【勇敢な青年と美しい女性との怪奇大ロマン】【時計塔】【通俗文化の王道】【高等遊民】【アリス・M・ウィリアムスン】【灰色の女】
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「薬屋のひとりごと4」 日向夏

2015-12-13 | ミステリー・推理小説
 後宮での年期が近々終わる友人の小蘭が転職先を探していると聞いた猫猫は、子翠に連れられ小蘭と共に後宮内の大浴場に向かう。伝手がないなら作るだけだ。
 しかし、そこで彼女はここに来るはずのない、上級妃の里樹妃に出会う。
 この気弱な四夫人は、自分が与えられた浴室で幽霊を見たために、そこが使えなくなったのだという……。

 猫猫は壬氏が宦官ではないと知るが、時を同じくして後宮に秘められていた悪意が剥き出しになり、猫猫に危機が迫る。拉致され、後宮より連れ出された猫猫の運命や如何に!……という、毒物マニアの少女が活躍する後宮ミステリの4冊目で一区切り。
 キャラが濃すぎて一歩間違えたら話を持って行きそうになる片眼鏡軍師などはチラ見せで隅っこに追いやられるので、あくまで猫猫と壬氏による物語として終始します。
 ところで、自分があえて悪役となることで、仕える人間にとっての敵対勢力をすべてまとめ上げるというと、ボトムズのクメン篇とか、ちらほら心当たりはあるのですが、いざまとめようとするとなかなか思い出せません。劇場版999の黒騎士は意図的なんだっけか?

【薬屋のひとりごと4】【日向夏】【しのとうこ】【ヒーロー文庫】【見目麗しい中世の痛快ミステリー】【小説家になろう】【ウェブ小説】【浴場】【むだ毛処理】【アイスクリーム】【温泉】【鉄砲】【逆子】【叛乱】【玉藻】
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「ばけもの好む中将 四」 瀬川貴次

2015-11-17 | ミステリー・推理小説
「いつも言っているではないか。怪異は愛でるものだと。遠くの月を眺めるように、あるいは手の届かない高貴な女人に恋するように。そうやって憂き世を忘れ、心を遠く高く遊ばせるのだよ」

 なかなかホンモノの怪奇現象に巡り会えない左近衛中将・宣能。気分転換にと、今度は奇跡が起こるという寺を参拝することにした。
 御仏の霊験ではいささか物足りないがやむを得ない……。

 怪異大好きな貴族が巻き込まれる怪異冒険譚で、今回の内容を簡単にまとめると、踊る大捜査線~THE LONGEST DAY。
 なぜか、今までに無くスラップスティックな巻。

3.内親王に仕える思慮深い女房、三の姉。
4.恋多く罪深き美女、四の姉。
5.学者の妻で理論的な五の姉。発明家。
6.身分の低い武士と駆け落ちし、乳飲み子をかかえた六の姉。
8.帝の妃、梨壺の更衣。心優しい八の姉。
10.神出鬼没、正体不明の十の姉。
11.才気あふれる小宰相の君。明るく闊達な十一の姉。
12.お転婆な独身。真白の君。

【ばけもの好む中将 四】【踊る大菩薩寺院】【瀬川貴次】【百足屋ユウコ】【集英社文庫】【平安冒険譚】【ジャイアントロボ】【高枝切りばさみ】【健康シューズ】【美顔ローラー】
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「ママは何でも知っている」 ジェイムズ・ヤッフェ

2015-11-01 | ミステリー・推理小説
「自分でもない、家族でもないものに血道をあげている人間--たとえば、ニューヨーク・ヤンキースとか、レナータ・テバルディとかに熱をあげている連中はね、その熱たるや、個人的な悩みごととか、野望なんかより、はるかにはげしいものなのよ」
 デイビット刑事のママは「連中には連中の世界があるの」と告げた。
 つまりアニメやマンガやゲームであろうが、野球やオペラであろうが、マニアの世界は関心のない人間にとってはミステリのテーマになるくらい、未知の領域なのだ。
 でも、ママ。バットマンは空を飛ばないんだ。滑空はするかもしれないけど。

 ブロンクスの殺人課の刑事デイピットは、毎週金曜の夜には妻を連れて実家のママのもとを訪れ、夕食を共にするのが習慣だ。
 そのディナーの席でデイビットがぽろりと漏らした捜査上の謎を、幾つか質問をしただけで簡単に解決してしまうのがママだ。
 ママは人間ってものがどうふるまうかなんて、世間一般も殺人現場も変わらないというのだ……。

 安楽椅子探偵の古典的作品で、狭い世間でしか生きてないと思われがちな女性が人間のやること考えることなんて、どこでもたいして変わらないと謎を解いていくあたりは、田舎だってそんなにのどかで平和なところじゃないと語るミス・マープルと同じ。『ママは何でも知っている』が1952年で、クリスティの『火曜クラブ』が1927年なので、さしづめ「ミス・マープルのライヴァルたち」といったところかな。
 ディナーの会話が謎解きに終始すれば普通の安楽椅子ミステリなのだけれど、デイビットの妻であるシャーリィが口をはさみ始めると、瞬く間に嫁姑戦争になり、そちらはそちらでサスペンスです。

【ママは何でも知っている】【ジェイムズ・ヤッフェ】【ハヤカワ文庫HM】【安楽椅子探偵ものの最高峰】【<ブロンクスのママ>シリーズ】【空想の友達】【三層ピノクル・サンドイツチ】【文通】【スーパーマン】【牛肉の蒸し焼き】
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「猟犬の國」 芝村裕吏

2015-10-20 | ミステリー・推理小説
「仕事は生きることであり、生活そのものだ。でも生活保護は仕事をくれない」

 どんな国にも情報機関はある。
 もちろん日本にも内調とか自衛隊、外務に警察といろいろある。だが、その中の1つには名前すらない。その歴史はあるけれど名も無き組織は言う。「何事もないのが一番いい。そのためならどんなこともする」と。
 その組織を仮にイトウ家と呼ぼう……。

 『マージナル・オペレーション』や『遙か凍土のカナン』、『富士学校まめたん研究室分室』などでちらほら陰から国を護る姿が暗示されていたイトウさん家の物語。
 シニカルなスパイ小説かと思っていたら、日本人ではないけれど日本を護る南米出身のパトリシオ・山本・フランシスコ(仮名)さんと、新米スパイの須頭幸恵さんによるバディ小説になって、展開は謀略と裏切りと銃と血にまみれた非道い話のはずなのに、2人のかけあいのせいで……というか幸恵さんの罵詈雑言のせいでなんだかホンワカしちゃって、つまりいつもの芝村節の炸裂。著者が新境地を開いたのではなく、売り方を変えて読者層を広げようとしている本作りのような気がしました。

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「薬屋のひとりごと3」 日向夏

2015-10-03 | ミステリー・推理小説
「お気に入りは隠しておかないと、誰かに隠されてしまうわよ」
 安氏はそれだけ言い残した。

 後宮へ出戻りの身である猫猫(マオマオ)の扱いは難しい。居場所がないというより、引く手あまたで落ち着かないのだ。皇帝の寵妃である玉葉妃の妊娠も暗殺を警戒して秘密厳守だが、誰か感づいているのか、ちらほら探りを入れる気配もある。
 そんなとき、隣国の特使としてやってきたのは金髪美女の2人組。
 何が目的か、彼女らは数十年前の特使に舞を披露したという伝説の妓女、それが見たいと無理難題を言ってきた。そこで花街の事情に詳しい猫猫に壬氏から相談が持ちかけられるのだが……。

 東洋風の中世世界を舞台に毒物マニアの少女が活躍する後宮ミステリで、今回も毒殺事件から廟の秘密、先帝がかかった呪いとさまざまな謎が舞い込んで、片っ端から猫猫が解決していきますが、宦官であるはずの壬氏の謎についてはひたすら見ない振り聞かないふりで考えないようにしています。
 幽霊事件ははっきりさせてしまえば怖くも何ともありませんが、宦官の謎ははっきりさせてしまうと怖いことになりそうだと直感的に忌避してるんですね。

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「薬屋のひとりごと2」 日向夏

2015-04-01 | ミステリー・推理小説
『愚帝は民が無限だと思い、賢帝民が有限だと知っている』
 民は税があまり高くなければそれでいいのだ。

 後宮を解雇されて花街に戻ってきた猫猫だったが、宦官・壬氏に連れ戻され、外廷の下女として出仕することになった。
 壬氏への嫉妬から他の官女に絡まれながらも下働きに奔走する猫猫は、宮中の内外で起きるさまざまな事件や事故が、1つ1つは些細なものながらも重なり合って大きな事件の引き金になろうとしていることに気づいた……。

 花街育ちで毒薬マニアの少女が、後宮から外に出てさまざまな事件に挑みます。
 治癒魔法でどんな重傷も一発回復……とはいかない世界で、この主人公はひたすら傷物になり続けます。その半分は実験のための自傷行為なので、他人が文句を言う筋合いはないかもしれませんが。
 さらに変人軍師こと猫猫の父親と思しき羅漢の登場で、物語は前巻以上に混迷を深めていきます……といっても、猫猫と羅漢の接触そのものは皆無なんですけどね。
 連載時と比較するとちょちょいと手直しが加わって、単なる短編集ではなく、ちゃんとした長編ミステリになってます。世間一般のモラルからちょいと外れていて、無駄に準備が良くて自分の関心事には熱心なのにそれ以外はさっぱり……というあたり、猫猫はミステリの正統派主人公にふさわしいヒロインといえるでしょう。

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「ペガサスと一角獣薬局」 柄刀一

2015-03-15 | ミステリー・推理小説
 “世界の伝説と奇観”という企画を担当するフリーカメラマンの南美希風は、世界各地を飛び回るが、行く先々で奇妙な事件に遭遇する。
 ドラゴンに踏みつぶされた男、ユニコーンに串刺しにされた男、命を再生する館……だが、幻想の果てに、南は論理で糸口を見出すのだった……。

 幻想と論理の推理短編集。トリックとしてはトンデモ系が多いかな。そう言われてみれば不可能とは言わないけれど、それで一発勝負で巧くいくのは奇跡だよとか、なぜそんなことをする必要が……とか、ツッコミどころが多い、トリックのためのミステリー。
 主人公が心臓移植手術で九死に一生を得たとか、担当編集者が実姉だという設定が、ちっとも本編ストーリーに絡んでこないことだけが気になりました。

【ペガサスと一角獣薬局】【柄刀一】【光文社文庫】【湖水地方】【氷河】【ウェールズ地方】【ランドエンド・ハウス】【ボトルシップ】
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「スミソン氏の遺骨」 リチャード・ティモシー・コンロイ

2015-02-25 | ミステリー・推理小説
「どんな宣伝でも、宣伝しないよりはまし」
 それがワシントンの流儀だと、ヘンリー・スクラッグズ。

 博物館や美術館内部の話というと、『ミイラにダンスを踊らせて』のメトロポリタン美術館とか、『乾燥標本収蔵1号室』の大英自然史博物館とか、ノンフィクションでいろいろ面白い作品があるのですが、こちらは博物館を舞台にした長編ミステリ。

 ヘンリー・スクラッグズは42歳の冴えない渉外業務室職員。端的に言えば、スミソニアン博物館に出向で送り込まれた事務方。
 出世の道は見えないけれど、変わり者のキュレイターたちに囲まれて忙しい日々を送っていたのだが、スミソニアンの創設者の遺骨が妙なところから発見されたのを発端に、あちらこちらで他殺死体を次々に見つけてしまい……。

 舞台となるのはスミソニアン協会。スミソニアンというと、航空宇宙博物館だけのような気がしていたけれど、実は自然史博物館とか絵画館とか動物園まで含めた博物館群なんですね。なるほど。
 その組織や様子についても語られていくのですが、ここで語られる博物館の様子が『レリック』のニューヨーク自然史博物館とイメージがかぶってしまい、必要以上に怖かった。どちらかというとユーモア・ミステリなのにね。 

【スミソン氏の遺骨】【リチャード・ティモシー コンロイ】【創元推理文庫】【博物館の愉快な毎日】【マミー】【IPES】【イソギンチャク】
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「風に乗りて歩むもの」 原田宇陀児

2015-02-19 | ミステリー・推理小説
「生きることに背を向けたら、諦めたら、俺は本物の、立ち直れない老いぼれだ」

 五大湖に浮かぶ小島マニトウに建設されたテーマパーク「イーグルランド」。その遊園地を早朝貸し切りで楽しんでいた少女の1人が消えた。少女3人が乗りこんだジェットコースターだったが、戻ってきたときには2人しか乗っていなかったのだ。
 消えたイーグルランド・オーナーの一人娘の捜索が行われるが、その行方は皆目わからなく、化け物ウェンディゴの仕業と言い出す者さえ出てくる始末。
 一方、残りの少女のうち1人の護送を引き受けたタクシードライバーのボギィだったが、依頼主の警部は「行き先は言えない」と言い、石ころ(グラニット)と呼ばれる少女も行く先を告げず、ただタクシーを走らせるのだが……。

 寡黙な少女と老ドライバーのミステリアスな逃避行。
 話がどちらの方向へ振れるか分からないまま進むので、中盤まではドキドキです。ただ、途中からはミステリの王道と理解して読了。

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「探偵映画」 我孫子武丸

2015-02-17 | ミステリー・推理小説
 探偵映画の完成目前に、監督が消えた! 映画の結末は、映画界の鬼才と呼ばれる大柳登志蔵以外に誰も知らない。
 監督の行方を捜す傍ら、残されたスタッフと役者でなんとか映画を完成させなければならないと、撮影済みのシーンからスクリーン上の犯人を推理しようとするのだが……。

 映画製作現場を舞台にしたミステリー。
 ミステリー映画のオチをなんとか推理して完成させるというと、米澤穂信の『愚者のエンドロール』が比較的記憶に新しいですが、もともとの発行順で言うとこちらが先。もっと、このネタの先行作品はありそうな気がするけれど。
 謎解きとしては88ページ目あたりで確信し、あとは確認のために読んだようなものかな。登場人物の役者魂には脱帽。

【探偵映画】【我孫子武丸】【文春文庫】【叙述トリック】【名探偵再登場】【嵐の山荘】
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「浜村渚の計算ノート」 青柳碧人

2015-01-19 | ミステリー・推理小説
「0で割っちゃ、ダメです」
 それは悪魔と交わした重要な約束の1つを破ることになると浜村渚。

 天才数学者・高木源一郎はテロリストである。
 彼は「黒い三角定規」を名乗り、数学教育を軽視する日本政府に鉄槌を下すべくテロ活動を開始した。
 彼の武器は数学教育ソフトとして普及していたプログラムに予備催眠をかけ、己が手先とすることにある。少なくとも高校教育で数学を学んだことのある者は、なにかしら「黒い三角定規」の走狗になる可能性があるのだ。
 これに対抗できるのは、ある程度の数学能力を身につけていて、かつ留学などの理由で日本の数学教育を受けていなかった者でしかない。
 手詰まりになった捜査本部は、塾にも通ったことのない数学好きの中学生、浜村渚。の助けを借りることを余儀なくされるのだが……

 「頭の悪い文系どもは、数学の美しさ、完璧さの前に恐れおののき、ひれ伏すがいい」という挑戦に立ち向かうマイペース女子中学生と若手刑事の事件簿で、のほほんとしているのは中学生だけで、周囲は死屍累々の連続殺人事件。
 いろいろなテーマをミステリに組み込む話は幾つもあるけれど、これは数学テーマが上手く1つ1つの短編の謎に違和感なく組み込まれてます。あえていうなら、ここまで数学軽視の教育にシフトした日本なんて、テロなんか関係なく、10年経たずに滅びるんじゃないかということでしょうかね。

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