付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★剣と惑星もの

2022-07-20 | ランキング・カテゴリー
 (転生とか憑依を含むけれど)主に地球人の主人公が、テクノロジーは進んでいて空中を飛ぶ船とか光線銃とかはあるけれど、戦いとなったら剣でのチャンバラが主流という地球と異なる星で大暴れする、テックレベルがごっちゃなタイプの物語を「剣と魔法」ものに倣って「剣と惑星」ものと呼ぶんだそうです。主に1960年代から使われているそうだけれど、ソード・アンド・プラネットという言葉は日本では普及しませんでしたね。
 
火星のプリンセス』 エドガー・ライス・バローズ(1917)
 元南軍騎兵のカーター大尉が洞窟で死にかけてたら、幽体離脱して火星に転生。地球より重力の軽い世界で超人的な運動能力を手に入れて無双。お姫さまを手に入れてめでたしめでたしという、異世界に転移して身体チートで無双するという、まさに「剣と惑星」のひな型です。
 飛行艇から空気製造プラントまで主に太古文明の遺産によるハイテクメカやら兵器が登場しますが、基本的には剣と筋力で戦います。

野獣の都』 マイクル・ムアコック(1965)
 シカゴ特殊研究所で物質移送機の開発をしていた若き物理学者マイクル・ケインは、実験の失敗で太古の火星へと転送されてしまった。この奇妙な植物が生い茂る異世界でケインは、マントに拳銃と短剣を装備したベルトだけを身につけた全裸の美女シザーラと出会うのだが……。
 あからさまな『火星のプリンセス』フォロワーですね。これは最初「火星の戦士」シリーズとしてスタートしましたが、やがてエルリックからホークムーンまで、同じ作者の書いたヒロイックファンタジーのシリーズがいろいろあるけれど、実は主人公は生まれ育ちは違っても同一存在、戦士エレコーゼの化身なんだよ!というエターナル・チャンピオンシリーズに含まれ、「永遠の戦士ケイン」シリーズということになります。

グラマリエの魔法家族』 クリストファー・スタシェフ(1969)
 2000年物の骨董品ロボット馬のフェスを相棒に、衰退期の間に連絡が途絶えて孤立した植民地の探索に旅立ったDDT(地方自治体民主裁定委員会)の調査員、ロッド・ギャロウグラスが発見したのは、地球の中世を思わせる惑星グラマリエだった。
 銀河文明のロストコロニーもので、再発見したら明後日の方に文明がねじ曲がっていて、剣と魔法の専制君主国家になっていたという話からの「おっさん・ミーツ・ねーちゃん」。

デイヴィッド王の宇宙船』 ジェリー・パーネル(1980)
 再発見されたロストコロニーは、文明が第一次大戦後あたりのレベルにまで後退していた。しかし、新たに星間帝国に加盟する際には、自力で宇宙へ飛び出すことが出来なければ未開地として植民地扱いされてしまうらしい。そこで審査が下される前に宇宙飛行の技術を手に入れようと、デイヴィッド王は特命の調査隊を星の世界へ送り出すのだが、その星は中世レベルにまで文明が後退した世界だった……。
 「剣と惑星」ものとしては同じ作者の『地球から来た傭兵たち』の方がふさわしいかもしれないけれど、あちらは地球の戦場から連れ去られたアメリカ軍人たちが重火器で騎馬のローマ騎士をなぎ払うような話なので、それもちょっと違うかなと。

航宙軍士官、冒険者になる』 伊藤暖彦(2017)
 人間を食料とする昆虫知的生命体バグスと人類の帝国が戦いを繰り広げている未来宇宙。超空間航行中のギャラクシー級戦艦イーリス・コンラートは謎の敵から攻撃を受け大破。唯一の生き残りとなった宙兵隊士官アラン・コリントが脱出ポットで降り立った星は、人類に連なる者が生息する、剣と魔法の世界だった……。
 母艦のバックアップも装備も失った宙兵隊士官と片手片足を失ったお姫様がパーティーを組み、勝手の分からない土地で活動基盤を築きながら成り上がっていきます。

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★レプティリアンもの

2022-07-04 | ランキング・カテゴリー
 ヒト型爬虫類が人間に擬態して現代社会に潜入して侵略を進めている……というのはトンデモ系陰謀論はおいといて、SFやファンタジーあるいはホラーのパターンの1つではあるのだけれど、一般的になったのは1983年製作のアメリカのテレビドラマ『V』(ビジター)だったのかも。
 ただ、最近は擬態が変身とか寄生するものが多くて、本当に皮を被っているタイプはそんなに多くないかも。『現代でモンスター駆除業者をやってたら社長が赤字をなんとかするために無理をしたせいで社員のほとんどが死んだからずっと一人で仕事をしてたら凄いことになりました』に出てきたアレは近いかも。

優しい侵略者』 キース・ローマー
 ある日ある時、突如空から宇宙船で降りてきた「モニター」によって世界中すべての政府は機能停止。瞬く間の地球侵略であったが、占領された世界は理想郷であった。正体も目的も不明なモニターのテクノロジーの前に、混乱することなく秩序は維持され、高度な知識すら与えられ、平和で完璧な社会が誕生しつつあった。だが「人に何かを指図されるのが大嫌い」なブロンデルは、ただそれだけの理由でレジスタンスに身を投じた……!
 スラップスティックな侵略SF。1966年作品。壮大な話をスカッと拍子抜けさせて、なおかつ面白く落とすのが巧いのだ。

地球への追放者』 K・H・シェール
 東西冷戦期、各国の軍部や政財界には要人と入れ替わったトカゲ型の異星人が潜入しており、核戦争の危機を煽っていた。これで文明が崩壊してしまえば、また未開の文明が1つ原子力時代を脱却することなく自滅してしまったのを発見したと、他の銀河文明にはばかることなく大手を振って領有するだけだ。しかし、そこに異星人の暗躍に気づいた者がいた。天才的科学者であり、アシュト星の元宇宙艦隊提督、そして非合法の科学実験を強行したため終身流刑の判決を受けて未開惑星「地球」に追放されたトロントゥルである……。
 典型的なレプティリアンによる陰謀もの。地球侵略の陰謀に気づいても、相手がうまく人間と入れ替わっているため、誰を信用して良いのか分からない手詰まり感はまさしく侵略者テーマならではの醍醐味。
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★創作論×ボーイ・ミーツ・ガール

2022-06-06 | ランキング・カテゴリー
 それまで創作論というと文学者の自分語りとかノウハウ本的なものが主流でしたが、10年代あたりからライトノベルにおいて「創作論×ボーイ・ミーツ・ガール」みたいな組み合わせの作品が見られるようになりました。
 とりあえず、サッと探したのが以下の通り。これ以外にあったら教えてください。

『小説家の作り方』 野崎まど(2011)
 作家の物実にファンレターを送ってきた少女は、とびっきりの美少女だけれどどこか世間知らず。彼に小説の書き方を教えて欲しいと頼み込んできた。この世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったのだけれど、それを文章にすることができないというのだ……。
「この世界に存在する全ての言葉が正解です」

『犬とハサミは使いよう』 更伊俊介(2011)
 岡山は東京より新刊の発売が1日遅い。それだけが、父親の転勤で引っ越しする家族と別れて、春海和人が東京に残った理由だった。その和人が強盗の凶弾に倒れて、この上もないくらい死んだ。ところが、気がついたらダックスフンドの姿で甦ってしまっていて……。
 自分が死んだことよりも、犬の姿で生き返ったことよりも、本を読めないということにもがき苦しむ読書マニアと、やたらめったら分厚い本を書いてはベストセラーにしてしまう、本を書きたくてたまらないS系執筆マニアの物語。
「書けない作家に価値なんてありません! 本を生み出してこその作家です!」

『半熟作家と“文学少女”な編集者』 野村美月(2011)
 売れっ子の高校生作家、雀宮快斗は新しい担当編集者に振りまわされていた。いつもならケンカして担当交代となるところが、いつの間にか天野遠子のペースに巻き込まれ、やるつもりのない原稿修正に応じてしまったり、勝手が違ってイライラがつのるばかり。そんなとき、まだ未発表の作品内容にまで言及する脅迫状じみたファンレターが届き……。
 文学少女シリーズの外伝。編集者になった天野遠子に、最後の最後まで追いつめられる新人作家の成長と挫折。
「作家は読者の言葉を聞くだけじゃダメなの。そこに作家自身の意志や誇りがなければ」

『エロマンガ先生』 伏見つかさ(2013)
 和泉マサムネは高校生にしてラノベ作家と兼業。そんな彼には引きこもりの妹がいるのだが、あるとき、ひょんなことから彼女が人気のイラストレイター「エロマンガ先生」であると知ってしまう……。
 才能はあるけれど自分の世界にこもって扱いづらい妹とそれに惚れ込んでしまった真面目な兄のドタバタコメディにして、創作者の苦悩と工夫と努力を軸にしたドラマです。 誰でも、自分だけの“世界で一番面白い小説”を持っているのだ。
「私がライトノベルだ!」

『男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。』 時雨沢恵一(2014)
 いかに文章を書き始め、ストーリーやキャラクターを考え、賞に応募し、採用され、作品を書き続けていくかを、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている男子高校生で売れっ子ライトノベル作家の回想を通じて描いていくもの。
「誰だって、許せない過去はあるよ。人は、そんな過去と一緒に、成長していくんだよ。苦い食べ物でも、やがて血肉にはなるでしょう」

『城ヶ崎奈央と電撃文庫作家になるための10のメソッド』 五十嵐雄策(2014)
 一ノ瀬渉は偶然から、美人で性格も良く運動にも秀でている胸の大きな女子高生・城ヶ崎奈央の秘密を知ってしまった。彼女は作家になりたかったのだ。それも電撃文庫で。しかし、彼女の作品の出来は今ひとつだった……。
 男子高校生が従姉の編集者から執筆上のメソッドを入手して、女子高生の創作活動を手助けする物語。
「文章力とか構成力なんてものは後からでもどうにかなる」

『下読み男子と投稿女子』 野村美月(2015)
 葉鳥高校の氷ノ宮氷雪は孤高の美少女。美人で大人っぽい雰囲気でクラスメイトたちは近寄りがたいと遠巻きにあこがれるだけだ。でも、青は知ってしまった。氷雪が実はライトノベルを書いていて、スター文庫新人賞に投稿していて、そのタイトルが『ぼっちの俺が異世界で、勇者で魔王でハーレム王』ということを。彼のバイトは出版社の投稿作の下読みだったのだ……。
「ラノベのいいとこって、なんでもアリで、自由なとこなんじゃないかな。どんどん新しい書き方が生まれていって、わくわくさせてくれる。だから、やりたいことは全部やって、書きたいことを書こう」

『獣耳吸血鬼少女の売れないなろう作家が自作品を電子書籍にするようです』 左高例(2020)
 獣耳吸血鬼にして明治生まれの年金生活者カレーちゃんは、実は本が売れずに書籍化打ち切りを食らったなろう作家なのだ。このままだと貯金が底をついてしまう。そこで彼女は自作品をKindleに電子書籍として売り出すことに決め、アパートの大家にして友達のドリル子と協力して本の作成や宣伝を行うことにしたのだが……。
 もしかしたら参考になるかもしれない、電子書籍を自分で売り出すための方法も書かれた、美少女なろう作家の日常ファンタジー。これに関しては「ボーイ・ミーツ・ガール」ではなく「ガール・ミーツ・ガール」なドリル・コメディですけど。


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★「裏庭迷宮」モノ

2022-02-20 | ランキング・カテゴリー
 裏庭や自宅内部など極めてプライベートな空間に、自分だけ、あるいは自分とごく親しい仲間たちだけが利用できるダンジョンなり亜空間が発見されるところから始まる物語。昔なら「裏庭ロケット」でしょう。
 自分たちだけでこっそり冒険というだけではなく、そこで手に入れた経験値やアイテムなどを行使して、一般人も潜っているダンジョンで無双ぶりを発揮するまでがだいたいのお約束です。「悪役令嬢」とか「不遇職/スキル」とか「ざまぁ展開」ほどは意識されていないのだけれど、少しずつ増えています。
 自宅の庭とか裏山とか台所とか引き出しの中とか、自分だけがいち早くダンジョンの存在に気づき、しかもそこが他と比較しても簡単に攻略できてスキルやアイテムを手に入れられるので他人より優位に立てる……というのが存在意義。つまりチートの言い訳です。裏庭だから仕方がない。
 そんな作品の中から、書籍化されているものと、書籍化されていないけれど一度はランキング入りしていて読めば面白いものを幾つかピックアップしておきます。

『朝起きたらダンジョンが出現していた日常について…… 』 ポンポコ狸(2016)
 ある日、世界各国にダンジョンが発生して騒ぎになっていたが、なぜか高校生の九重大樹の部屋の引き出しにもダンジョンが出現していた。しかも、中には静かに鎮座するスライムが1匹。塩で簡単に倒せてしまうスライムでレベルをこっそり上げていた大樹だったが、家の事情でダンジョンに潜らなければいけなくなった友人の広瀬裕二と柊雪乃に付き合う事になる。そして外のダンジョンに挑んでみれば、レベルが少しばかり上がってもノウハウと装備がないとかなり苛酷な攻略だったが……。
 自宅の引き出しにダンジョン。
 こっそりレベルを上げながら、企業勢などと混じってダンジョン攻略して小遣い稼ぎ。

『地下室ダンジョン~貧乏兄妹は娯楽を求めて最強へ~』 錆び匙(2018)
 ある日、世界中にダンジョンが出現した。母親に死なれ、父親には捨てられ、今は田舎の倉庫暮らしの高校生の兄妹が、倉庫の地下のダンジョンを発見。暇つぶしの娯楽のつもりで挑むようになるのだが、本人たちも知らないうちにトップクラスの能力になっていた……。
 自宅にダンジョン。
 兄妹だけの冒険譚+ダメオヤジと地下を徘徊する謎のメイドさんたちとの物語。

『ダンジョンで稼ぐ』 SHIGE(2019)
 ある日世界中にダンジョンが出現していた。サラリ―マンの片山進が借りている、アパートから徒歩5分の駐車場にもダンジョンが出現。そこで『成長』というチ―トスキルをゲットした片山は、冒険者の中でも高額取得者へ成り上がっていく。
 愛車の真下に特殊ダンジョンが。

『ダンジョン・バスターズ』 篠崎冬馬(2019)
 庭にいきなりダンジョンが出現した。つい足を踏み入れてしまった江副和彦だったが、彼がダンジョンに進入したことでシステムが起動し初め、「世界中に出現する666のダンジョンを10年以内に攻略しないと世界が滅亡する」というフラグが立ってしまった……。
 庭からダンジョン。
 自分が引き金を引いてしまった呵責から、庭ダンジョンの特性を活かして資金稼ぎとスキル獲得で世界全体のダンジョン攻略を底上げしようと画策し、真相に気づいた政府との駆け引きが繰り広げられます。

『美味しいダンジョン生活』 神谷透子(2019)
 45歳のOL、潤子の家にダンジョンが出現した。今は亡き両親の思い出の詰まった家だが、ダンジョン出現が明るみになれば国に取り上げられてしまうし、過去には自宅にダンジョンが出現した家の子供が虐められた事例もある。誰にもダンジョンの存在を言えない潤子は、ソロでのダンジョン攻略を決意するのだが、そこは野菜がドロップするダンジョンだった……。
 自宅の中にダンジョン。誰にも言えず、こっそり攻略。

『あの有名なダンジョンが俺の家に出現した(仮)』 鹿鳴館(2019)
 日本にダンジョンが出現して4年。六角橋弥の住む家の脱衣場が階段に変わっていて、階段を降りるとダンジョンだった。愛猫たちとダンジョンに挑んでみた六角橋はそこで不思議な案内人に出会い、さまざまなスキルを手に入れる……。
 風呂場にダンジョン。
 自宅ダンジョンを国に登録し、管理者となった脱サラ男が、愛猫たちと国に登録したダンジョン攻略し、頭角を現していきます。

『ダンジョン運営ってキャンプ場経営に活かせるのだろうか?~無限の生産力で、のんびり山暮らし~』 おじおしょうた(2019)
 自作のARゲーム『天樹の森ダンジョン』のテストプレイをしていたら、経営するキャンプ場がダンジョン化してしまった。どうやら異世界と繋がってしまったようなのだが、ここは開き直って特殊な体験が出来るキャンプ場として売り出すことにした……。
 経営するキャンプ場がダンジョンに。
 なぜかダンジョンマスターとなってしまった主人公の、異世界交流&ダンジョンキャンプ経営記。

『自宅にダンジョンが出来た。(WEB版)』 なつめ猫(2019)
 世界中にダンジョンが突如して5年。無職になった中年男の山岸は、自宅の机の引き出しの中がミニチュアダンジョンと化していたのに気づいた。指先で小さな魔物を倒すだけで簡単レベルアップ! ここでレベルを上げた山岸は外のダンジョンにも挑むのだが……。
 自宅の引き出しにダンジョン。
 TSありの冒険譚。

『俺のうちにもダンジョンができました』 森羅月光(2019)
 地震の後に農場の裏山を見に行ったらダンジョンが出来ていた。最初はダンジョンがと言っても信じてもらえなかったが、モンスターを斃して手に入れたアイテムを持ち込むうちに信用されるようになり、母親が逆に乗り気になってダンジョン産の材料を使った商品を、自分の農場の特産品として売り出そうと画策し始める……。
 裏山にダンジョン。そして母さんは野心家だった。
 どうやら、日本の他の場所にもダンジョンができたらしいけれど、政府が隠して知らんぷりしているので、こちらも隠して知らんぷりしてワインやらなにやら出荷しては荒稼ぎする話。つまり、近所の年寄り連中と始めるダンジョン地場産業化計画。

『壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略』 君川優樹(2019)
 上司のミスを追求した証券マンが、飛ばされた田舎の支社に出勤してみればダンジョン化し始めていた……。
 出勤したら会社がダンジョンになっていた。
 気がついたらユニークスキルを手に入れていて、自衛隊に勧誘されたり英国のチームに誘われたりしながら独自の道を歩み続けます。 

『家の猫がポーションとってきた。』 熊ごろう(2020)
 飼い猫のクロが、自宅の庭にある納屋の中からダンジョンにつながっているのを見つけてきた。そこで魔物と化したネズミなどと戦っていたらしいのだが、そこは神様みたいな存在が世界にダンジョンを設置しようとランダム配置した1つだった……。
 庭からダンジョン。
 猫とコンビでダンジョン攻略しながら、自衛隊などと協力して全体の攻略速度と安全性の向上に寄与していきます。

『裏庭ダンジョンで年収120億円』 三上康明(2021)
 裏庭にダンジョンが出現した。しかも、ろくにモンスターも出ない浅い層にレアアイテムの魔結晶の鉱脈が!
 ひとり占めしてこっそり売りさばけば年収120億円。しかし、見つかったら政府に取り上げられてしまう。なんとか目立たず売りさばく方法はないかと考えるのだが……。

 裏庭にダンジョン。闇取引で一攫千金を狙います。

(2021/08/29投稿 2022/02/20追補 2024/03/22改稿)
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★ライトノベルで見る21世紀3

2022-01-26 | ランキング・カテゴリー
【2013】『本好きの下剋上』『転生したらスライムだった件』『八男って、それはないでしょう!』『ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた』『デスマーチから始まる異世界狂想曲』『サモナーさんがいく』『異世界食堂』『戦国小町苦労譚ザ・ニューゲート』『ギルドのチートな受付嬢』『こちら討伐クエスト斡旋窓口』『異世界から帰ったら江戸なのである』』連載開始。ここで『詰みかけ転生領主の改革』『幼女戦記』『ネトオク男の異世界貿易』『ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた』が書籍化。このあたりから、ウェブ小説の書籍化ペースが速くなります。ラノベにおけるウェブ小説の比率がかなり高くなってます。とりあえずウェブ発ではないところで『エロマンガ先生』。
          

【2014】『異世界料理道』『嫌われ者始めました』連載開始。モンスター転生『転生したらスライムだった件』、弱小貴族のなり上がり『八男って、それはないでしょう!』、ダメ中年の人生やり直し『無職転生』、ゲーム世界へのTS転生『賢者の弟子を名乗る賢者』、その他『ザ・ニューゲート』『辺境の老騎士』『ギルドのチートな受付嬢』『こちら討伐クエスト斡旋窓口』『デスマーチから始まる異世界狂想曲』の書籍化。有名どころはほぼ出そろいました。また、ギルドものが1つのジャンルになっています。
        

【2015】『蜘蛛ですが、なにか?』『人狼への転生~魔王の副官』『公爵令嬢の嗜み』『信長の妹が俺の嫁』『冒険者デビューには遅すぎる?』『加賀百万石に仕えることになった』『VRMMOでサモナー始めました』連載開始。『蜘蛛ですが、なにか?』『人狼への転生~魔王の副官』『公爵令嬢の嗜み』『加賀百万石に仕えることになった』『異世界から帰ったら江戸なのである』『異世界食堂』『異世界料理道』書籍化。だいたい連載開始して半年、単行本3冊分くらい溜まると書籍化です。1冊分掲載されたところで書籍化、打ち切り、更新停止のコンボも出始めます。
     

【2016】『セーブ&ロードのできる宿屋さん』『ひとりぼっちの異世界攻略』『異世界落語』『アラフォー賢者の異世界生活』『出遅れテイマーのその日ぐらし』『異世界からの企業進出!?転職からの成り上がり録』『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』『オッサン(36)がアイドルになる話』『スーパーカブ』『ドラゴンは寂しいと死んでしまいます』『デーモンルーラー』『異世界のんびり農家』『転生太閤記』『陶都物語』『淡海乃海』ウェブ連載開始。メジャージャンルの隙間を突くような、定番ネタをひねった作品が増え始めます。そして『戦国小町苦労譚』『信長の妹が俺の嫁』『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』『異世界落語』『セーブ&ロードのできる宿屋さん』『冒険者デビューには遅すぎる?』『嫌われ者始めました』の書籍化。全体的に歴史物が増え始めています。他にもオッサンとかカブとか、ファンタジー・SF以外も頭角を現してきました。全体的に出版社が手広くジャンルに関係なく手を広げた印象です。
          

【2017】シビアな中世社会での成り上がり戦記『リオンクール戦記』、現代日本のエージェントもの『高貴な幼女の護りかた』、万能メイドさんもの『シャバの「普通」は難しい』、戦国転生ものの『信長の庶子』『信長公弟記~織田さんちの八男です~』連載開始。そして『スーパーカブ』まさかの書籍化! 他にも『異世界のんびり農家』『陶都物語』『出遅れテイマーのその日ぐらし』『オッサン(36)がアイドルになる話』『ドラゴンは寂しいと死んでしまいます』『転生太閤記』『淡海乃海』『デーモンルーラー』が書籍化していますが、中でも『淡海乃海』はコミカライズ、舞台化とマルチに展開していて、歴史ものとしては『戦国小町苦労譚』と並んで二強となっています。
    

【2018】VRゲームものが増えてます。『人外姫様、始めました』『クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……』『現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変』『佐々木とピーちゃん』『マジカルエクスプローラー』『悪役令嬢の監獄スローライフ』『世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)』連載開始。『シャバの「普通」は難しい』『人外姫様、始めました』『リオンクール戦記』『信長公弟記~織田さんちの八男です~』『高貴な幼女の護りかた』『異世界からの企業進出!?転職からの成り上がり録』『VRMMOでサモナー始めました』が書籍化です。早川書房が本格的にウェブ小説に手を出してきました。
    

【2019】『Dジェネシス~ダンジョンが出来て3年』『フシノカミ』『社畜男はB人お姉さんに助けられて』『月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい』『ホラー女優が天才子役に転生しました』『大江戸コボルト』『生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております』『異世界で上前はねて生きていく』連載開始。『クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……』『マジカルエクスプローラー』『悪役令嬢の監獄スローライフ』『世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)』『フシノカミ』『異世界で上前はねて生きていく』が書籍化。ゲームの脇役転生も悪役令嬢ものに続いて1ジャンルとなったようです。主人公が女なら悪役令嬢、男なら脇役モブ転生。そして、ここしばらくは中年男女が異世界や戦国時代に転生することで不遇だった状況がリセットされて成り上がる、中年異世界転生夢小説的なものが増えていましたが、このあたりから現代社会の転職などで不遇だった状況がリセットされるものが目立ち始めます。
      

【2020】『現代でモンスター駆除業者をやってたら社長が赤字を何とかするために無理をしたせいで社員のほとんどが死んだからずっと一人で仕事をしてたら凄いことになりました』『オールラウンダーズ!!』『クラスで2番目に可愛い女の子』『厳しい女上司が高校生に戻ったら俺にデレデレする理由』『酔っ払い盗賊、奴隷の少女を買う』連載開始。SNSのネタ投稿がウケ、即刻書籍化された『パワー・アントワネット』。他にも『現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変』『Dジェネシス~ダンジョンが出来て3年』『社畜男はB人お姉さんに助けられて』『月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい』『ホラー女優が天才子役に転生しました』『生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております』『厳しい女上司が高校生に戻ったら俺にデレデレする理由』が書籍化されています。書籍化作品の半分は中年夢小説というべきものとなっています。
     

【2021】『神の庭付き楠木邸』連載。『神の庭付き楠木邸』『佐々木とピーちゃん』『大江戸コボルト』『現代でモンスター駆除業者をやってたら社長が赤字を何とかするために無理をしたせいで社員のほとんどが死んだからずっと一人で仕事をしてたら凄いことになりました』『クラスで2番目に可愛い女の子』『酔っ払い盗賊、奴隷の少女を買う』が書籍化されましたが、すべてウェブ連載の書籍化。見覚えない作品も改題していたり、大手以外の小説サイトだったり。気がつけば、高校生から30台あたりまでの男性があたりまえのように高校生くらいの少女に好かれ、同居だとか同棲だとかお隣同士だとか席が隣だとかで、異能バトルも世界の危機も関係なく、ただ平和にイチャイチャするラブコメ系が急増していました。12月時点で平均すると4割に届くかも……というありさま。70年代テレビドラマか、少女マンガの世界でしょうか?
           

【2022】『蜘蛛ですが、なにか?』書籍版完結!


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★ライトノベルで見る21世紀2

2022-01-25 | ランキング・カテゴリー
【2006】林トモアキが脂の乗りきった時期で、深見真の『疾走する思春期のパラベラム』もスタート。こうした異能バトル全盛の中に「スケバン刑事」をリスペクトした『メイド刑事』とか異世界と繋がった現代社会を舞台にした『ドラグネット・ミラージュ』などが混じります。ウェブでは『ゲート~自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の連載がスタートしています。
       

【2007】さっくりした俯瞰で、異能バトル2:SF2:ミステリ1くらいが我が本棚の2007年ラインナップ。異次元から銀河宇宙までひっくるめてパロディにした『ステレオタイプ・パワープレイ』が登場した年です。
    

【2008】『魔法科高校の劣等生』がウェブで連載開始。オンラインゲームの世界を舞台にした『千の剣の舞う空に』『女子高生=山本五十六』も登場。一方、マンガ絵のイラストつけばワンチャンあるんじゃない?と武侠小説『マーベラス・ツインズ』の翻訳開始。深夜の半額弁当争奪戦『ベン・トー』も始まります。
    

【2009】「読む劇薬」「天才」と編集者から評された野﨑まどがこの年デビュー。映画「サマーウォーズ」がこの年に公開されてヒット、さまざまなノベライズのバリエーションが登場。全26話のテレビアニメ『宇宙かける少女』も上下巻でノベライズが刊行。ノベライズというジャンルへの取り組み方が両極端な作品が並びました。
     

【2010】前年スタートの『這いよれ!ニャル子さん』に続いて『うちのメイドは不定形』も登場。クトゥルフ神話がすっかり日常系コメディの枠に収まってしまいました。一方、SF系アクションや異能バトルもそこそこ数が出ていますし、日常系ラブコメも少なくありませんが、異世界ファンタジーはやや少なめです。『ログ・ホライズン』もウェブ連載開始していますが、この年に『ゲート~自衛隊、彼の地にて、斯く戦えり』の書籍化も始まります。
       

【2011】『無職転生』『薬屋のひとりごと』『幼女戦記』『アルカナ・オンライン』『ネトオク男の異世界貿易』がウェブ連載開始。ネット小説の書籍化専門レーベルなども登場し、『小説家になろう』掲載作品の書籍化が進み始めます。
         

【2012】『辺境の老騎士』『Re:Monster』『詰みかけ転生領主の改革』『死神を食べた少女』『やり直してもサッカー小僧』連載開始。『Re:Monster』『死神を食べた少女』『アルカナ・オンライン』書籍化。ウェブ発が一気に増えたけれど『スカイ・ワールド』はメディアミックスの書き下ろし。
       
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★ライトノベルで見る21世紀1

2022-01-24 | ランキング・カテゴリー
【2001】いろいろなレーベルが出そろった2001年。新規参入あり、撤退ありの乱世の幕開けです。
    

【2002】『まぶらほ』とか『バッカーノ!』がこの年スタートの代表作。『ソードアート・オンライン』もこの年にウェブで連載が始まりました。
     

【2003】ビーンズ文庫から『彩雲国物語』、スニーカー文庫から『涼宮ハルヒの憂鬱』。ハヤカワ文庫がこのあたりからまたマンガ家を表紙に起用するのが増え始め、ソノラマでは吉岡平の二等士シリーズが続きます。児童向けSF全集がマンガ絵に変わったのもこのあたりから。
    

【2004】桜坂洋がハリウッド映画化し、有川浩が電撃文庫でデビュー。架空戦記にも萌えブームが伝播。このあたりから「ライトノベル」という売れるジャンルがあるらしいと意識され始め、ライトノベルとはなんぞや?という研究本がぞろぞろ出始めます。
     

    

【2005】主人公がティーンエイジャーで、学校の内外で異能バトルが繰り広げられるような話は常に一定数あります。このあたりからいろんなジャンルでメイドさんの露出が増え始める中、吉岡平がソノラマ文庫でバロウズ作品の異伝や外伝を書き始めています。
     
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私的年間ベスト2021

2021-12-31 | ランキング・カテゴリー
 今年も読んで愉しい小説がいっぱい。公私ともに忙しく、積ん読の山が高くなる一方ですが、そんな中からとりあえず読めたものからの年間ベスト。記憶の残滓にまた1冊。

『一般人遠方より帰る。また働かねば!』 勇寛
 そこそこ稼いでほどほどに幸せな生活をしたいだけの異世界帰りの男が、いろんな事件に巻き込まれていくうちに雪だるま式に話が大きくなって、いつの間にか警察に追われたり政府に警戒されたり、果ては超能力やら魔術を使うような秘密結社だか犯罪組織の抗争に巻き込まれ、東西奔走しないといけなくなる苦労譚。
 あくまで静かに生活したいだけの主人公に対して、勝手に盛り上がっていく支援者たちの熱狂とのギャップが泣かせます。

『辺境下級貴族の逆転ライフ』 漂月
 貴族の庶子として生まれたものの嫡子の弟や妹が大好きで、弟や妹もおにいちゃん大好き……という文武両道のオネエ言葉の主人公が、同じく庶子のリン王女を助けてゲスな王侯貴族と戦ううちに、このまま国盗りしちゃった方が簡単でない?と気づいてしまい、前世知識やら母から教えられた魔女の秘術で蹂躙していく話。

『勇者になれなかった三馬鹿トリオは、今日も男飯を拵える。』 くろぬか
 またしても世界の危機でも無いのに異世界から勇者召喚する国があった。しかも、能力不十分と判断した人間はそのまま放逐するという所業。そんな話で異世界に召喚され、着の身着のままで路頭に迷ったおっさん3人は冒険者として登録するのだが、飲まず食わずの3人は現地の人間が食べたら危険と廃棄している魔物の肉を、狩っては食い、狩っては食いのキャンプ生活。普通のパーティーなら2,3日で引き返すところを、平気で1週間やそこらは森で狩り暮らしをするようになるのだが……の愉しいグルメキャンプ生活。

『佐々木とピーちゃん』 ぶんころり
 異世界の賢者がこちらの世界の文鳥に転生し、前世の魔法であっちの世界とこっちの世界を行き来しつつ、飼い主と文鳥の2人で楽しいスローライフをおくるはずが、あっちこっちで大事件に巻き込まれててんやわんやになる話。
 さえない中年男がひょんなことから頭角を現し、世間的にも成功して異性からもモテるようになるというサラリーマン夢小説の王道パターンに、異能バトルから異世界転移までこの10年ばかりの流行の設定をすべてぶちこんできれいにまとめるという、ここ5年ほどのライトノベル界の総まとめとも言うべき作品です。

『アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい』 翠川稜
 幼少時の実父の虐待で心と体に傷を負い、陰キャ、ボッチ、コミュ障になってしまったオッサンが、トラックにはねられて高校時代に逆行転生。2度目の高校生活はうまくやろう、新しい家族とも仲良くやりたいと頑張るのだが……。
 今年前半までに刊行されたウェブ小説の書籍化作品のうちおよそ3割が「中年のオッチャンやオバさんが新たな人生をやり直す」話。やり直す人生は、別に異世界とか未来世界とかゲームの世界である必要はなく、そういう意味で「もっともウェブ小説らしい」作品の1つ。ちょっと脚を踏み出し、少し手を差し出すだけで、彼はいろんなものを手に入れられるのです。
 なお中盤からは「平凡な男子高校生がなぜか女子にモテモテになる」異能も異世界もない学園ラブコメが急増します。

『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』 七斗七
 清楚系お嬢さまVTuberとしてデビューした泡雪だったが人気は今ひとつ。ところが、ある日、配信を切り忘れてストゼロで酒盛りを始めてしまったことから素の性格が全世界に露見し、SNSのトレンド一位となって一躍脚光を浴びてしまう……。
 ウェブ小説ではこの1年ほどで急増したVチューバーものですが、書籍化されたものはまだ多くありません。そんな中で「面白いけど、これは無理だろう」と思われていた作品がまさかの先陣を切りました。

『家の猫がポーションとってきた。』 熊ごろう
 両親を喪い愛猫のクロと二人暮らしの高校三年生、島津康平。ある日、クロが自宅の庭にある納屋の中にダンジョンへの入口を見つけてきてしまう……。
 ここ数年で増えた「自宅の近所にダンジョンが出現しました」モノの1冊。気軽にさくさく読めるダンジョン攻略もので、ダンジョンマスターと探索者の距離が近すぎるのが特色。楽しくストレスフリーで読めるのがありがたいです。

『大相撲令嬢』 川獺右端
 無実の罪を着せられ、王子から婚約破棄を告げられたフローチェ・ホッベマー侯爵令嬢は、前世で女子相撲部だった頃の記憶と相撲魂が蘇る。ついでにこの世界が乙女ゲーム「光と闇の輪舞曲」の舞台とまるきり同じということにも気付くが、ともかく不正には正面からぶちかましをかけるしかない……。
 悪役令嬢ものも一通りパターンが出尽くして、イロモノパターンが出始めました。婚約破棄された瞬間に王子を撃ち殺すとか即座に反撃するものも出てきました。ほぼ大切り状態です。そんな中、相撲しばりで話を展開する「大相撲令嬢」がまさかの書籍化です。

『理想の聖女? 残念、偽聖女でした!』 壁首領大公
 不動のニートことwebライターの不動新人は、明け方近くまでゲームをやった果てにばったりと倒れるように就寝。目が覚めたら見知らぬお城の中にいた。どうやらプレイしていたギャルゲーの『永遠の散花~Fiore caduto eterna~』の世界に転生していたのだが、嫌われ者の偽聖女エルリーゼになっていた……。
 これまた悪役令嬢ものの亜流。本物っぽい偽物が本物を駆逐する話。表面を取り繕うのが上手くなりすぎた破滅指向のサイコパスの主人公が、特定の誰かに思いを寄せることもなく、自分の身の犠牲など屁とも思わず、必要なことをただ誰よりも熱心にやり続けることで、本物よりも本物らしい聖女になってしまう話です。

『神の庭付き楠木邸』 えんじゅ
 遠い親戚が建てたまま空き家になっていた、田舎の一軒家の管理人を任された、旅館の息子の楠木湊。屋敷は立派なものだが、内覧だけで借り手のないまま放置されていたらしい。実は大量の悪霊が巣食っていたのだが、湊は自覚のないまま祓ってしまったのだ……。
 地味な話なので書籍化ないかなーと思っていたらまさかの書籍化。最近の流行は「もふもふ」と「スローライフ」らしいので、異世界ではないけれど要件クリアしてたようです。

『現代でモンスター駆除業者をやってたら社長が赤字をなんとかするために無理をしたせいで社員のほとんどが死んだからずっと一人で仕事をしてたら凄いことになりました』 gulu
 荒野は外来異種と呼ばれるモンスターを対象にしたフリーランスの駆除業者。前は駆除会社に勤務していたが、社長が赤字をなんとかするために無理をしたせいで社員のほとんどが死んで以来ずっと一人で仕事をしていた……。
 顔がいいわけでもなければ金があるわけでもないおっさんが、通りすがりの女子高生と知り合ったことから大規模な生物災害に巻き込まれ、その中で知る人ぞ知る存在になっていく物語。

『死なないセレンの昼と夜』 早見慎司
 地球から海が失われて人類が黄昏の季節となり、わずかに生き残った人々が細々と文明を維持している西暦2500何年かのこと。ほぼ無人の荒野を走るサイドカーがあった。それは吸血鬼の少女、セレンのコーヒー屋台だった……。
 ヒトの文明が最後の残り香を残すのみとなった世界を旅する、不死の少女による出会いと別れの旅行記。いわゆる終末世界の旅行ものと言えるジャンルかな。人間の優しさと醜さ、強さと弱さが語られます。
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★ネコが主役の物語

2021-10-23 | ランキング・カテゴリー
 主にラノベ系を中心に、ネコが活躍する話をリストアップ。児童文学とか一般文芸だと犬が主人公だったり、主人公と犬のペアの物語は多いのですが、こういう話ではネコ派が強い気がします。

『夏への扉』 R・A・ハインライン
 1970年12月。婚約者に裏切られ、仕事も発明も奪い取られてしまった男が30年後に蘇る冷凍睡眠を申し込んだ。再び甦生できる保証もない未来への旅に同行するのは猫のピートだけだったが……。
 ベスト・オブ・SFといって常に上位に来るのがタイムトラベルがテーマでロマンティックSF。タイムパラドックスものだけれど、ネコ小説で、一種の恋愛小説で、「あきらめるな。幸せをつかむためにがんばれ」という話なのだ。2021年に山崎賢人主演により日本で映画化されてます。

『猫に転生したんだけど、飼い主がいないスキにVRMMOやる』 天野緋真
 黒川北斗は声優だったが、今はとある女優に飼われている。はっきりいえば死んでしまって、オスの猫に転成したのだ。そして今はナナホシと呼ばれている。
 ちょっと頭の良いネコとして知られているナナホシだが、VRゲームの中ではネコの姿であっても他のプレイヤーと意思疎通できる。そんなわけでご主人様の留守中にこっそりダイブカプセルに潜り込み、電脳世界で遊んでいたのだが……。

 ネコに転生してしまった男の電脳プレイ日記。ゲーム中に生前の知り合いと遭遇してしまったり、ご主人様にバレそうになったりと波瀾万丈の日々です。

『猫の地球儀』 秋山瑞人
 その世界には猫しかいなかった。遥か太古に人間によって知性化された猫だけが、その宇宙コロニーの住人なのだ。しかし、彼らにとって宙を見るということは禁忌だった。スカイウォーカーという名前を受け継いだというだけで宣教部隊に殺される時代だったのだ……。
 人間がいなくなった後の猫の世界で、青い世界をめざすネコとアンドロイド、冒険者たちの物語。ちょっとほろ苦く切ない終わり方は、泣かせるネコ小説との評判も高かったのでした。

『猫だってアイテムを収集すれば最強になれます!』 川崎AG
 ある日、異世界へと召喚された男は『猫』の姿になっていたが、彼には【収集家】のスキルが付いていた。なんでもかんでもコレクションするほど強くなっていくスキルで、そもそもこのスキルを付与してしまったが為に、人間の形で転生できなくなってしまったという因縁のスキルであった……。
 人間が魔族に支配されている世界で、魔王退治も人類救済もコレクションのついでなんや……というコレクション・ストーリー。チート過ぎる主人公の能力を、身体が猫になってしまったという一点でバランスをとってます。

『テイルチェイサーの歌』 タッド・ウィリアムズ
 テイルチェイサーは偉大な一族の末裔ではあるけれど、これといった取り柄もない猫だ。けれど愛しい牝猫ハシュパッドたちが前触れもなく姿を消したとき、解決策も見いだせない長老たちに見切りをつけ、ただ1匹で森の奥へと旅立った。そこで出会うのは頼もしい仲間と世界を支配しようとする邪悪な勢力との戦いだった……。
 小さな猫が冒険に飛び出し、行きて還りしの物語。やっぱり猫は自由な生き物なんですね。

『ミル』 手原和憲
 ある日突然、下宿に押しかけてきたカワイイ女子高生は、実は86歳のバケネコだった……。
 一所にとどまれず、各地を放浪しながら長い年月を過ごしてきたバケネコと飼い主になった青年のハートウォーミングな日々の物語。見た目は女子高生なのに、言動はしっかり老婆なミルはまさにロリババア。

『家の猫がポーションとってきた。』 熊ごろう
 飼い猫のクロが、自宅の庭にある納屋の中からダンジョンにつながっているのを見つけてきた。そこで魔物と化したネズミなどと戦っていたらしいのだが、そこは神様みたいな存在が世界にダンジョンを設置しようとランダム配置した1つだった……。
 庭から見つかったダンジョンを中心に、猫とコンビで攻略していく少年の物語。強いし頭も良いし、でもキャットフードが大好きで、気分は乗らないときは寝ているクロが可愛いよね。

黒猫ニャンゴの冒険~レア属性を引き当てたので、気ままな冒険者を目指します~』 
 苛められていた高校生は、階段から同級生に突き落とされて死んだ……と思ったら、異世界で猫人に転生していた。身体は小さく、体力もない、魔力もない、知力もないという異世界最弱の種族である。しかも、彼ニャンゴが巣立ちの儀で女神から授かった加護は、役立たずの「空」属性だった……。
 かなりネコ寄りの獣人になってしまった主人公が、種族としてのハンディキャップを努力と工夫で乗り越えていく冒険譚。耳を澄ませて情報を集め、役立たずスキルを磨き上げ、虐めっ子に反撃したりしながらの成り上がりです。

あなたのために、ネコはゆく』 永田ガラ
  人間に喜んでもらうことが大好きな子猫「ねむりっこ」。 自分は天使なのに、何もできないと悲しむねむりっこだけれど……。
 命を狩るのについつい1年の猶予を与えてしまう死神と、死ぬつもりだったのにその1年で死にたくない理由ができてしまう人間たち。人々に幸せを与えようとする天使なネコと、そのネコに甘えて無理難題を持ちかける人間たち。そんな死神と子猫がすれ違う、愉快でせつない物語です。

田中家、転生する。』 猪口「田中家」 
 田中家は平凡な一家。今年から年金暮らしの両親の悩みは、3人の子供がまだ誰も結婚していないことくらいか。そんな一家が南海トラフ大地震に被災して全滅してしまうが、気がついたら異世界の辺境を守護する貴族の家に転生していた。それも見事に家族揃って。ネコももちろん大事な家族である……。
「猫のいない世界なんて、タピオカとミルクティーの入っていないタピオカミルクティーだ」
 猫をこよなく愛し、また猫に愛され平凡に生きてきた田中家が清く正しく世間知らずに異世界で生きていく、じゃじゃ馬辺境貴族の日常譚。コーメイさん以下飼い猫も集結し、田中家を守って大活躍。

マタタビ潔子の猫魂』 朱野帰子
 内気で陰気な28歳の派遣OLが限界までストレスを溜め込むと、意図せずして飼い猫に憑かれて大暴れしてしまう……。
 飼い猫が怪猫だったというスラップスティック・ブラックコメディだけれど、「これ、魔太郎だよ」と笑っていたら、解説でもそんなようなことが書かれていました。みんな考えることは同じ。

殺戮の魔猫~くはははは、知らんのか! チーズは空気に触れると鮮度がおちる~』 異世界印の転生饅頭
 日本人が異世界に猫ケトスとして転生し、怨嗟の果てに魔族と化して500年。敬愛する魔王様は今も眠りにつき、猫はただ玉座で惰眠をむさぼり、気が向けば美味しいご馳走を探して人間の世界を散歩する。しかし、侮ることなかれ。その駄猫ケトスこそ、魔王軍最高幹部の大魔帝。主神すら屠る最強の魔猫であるのだが、ついつい気まぐれで悪戯好きな猫の器に引きずられてしまうのだ……。
 人と猫と魔の心が1つの身体に混ざり合い、単純に戦闘力や魔力だけを比較するなら神々すら相手にならないのだけれど、むちゃくちゃ手加減しないと勢い余って大陸沈めたり星を砕いたりしかねないケトスのつれづれ日記。グルメ捜しに奔走するのも、なにもしなければその本質である「憎悪」に引きずられて世界を滅ぼしてしまいかねないから……ということらしいです。

槍使いと、黒猫。』 健康
 無職になってしまった青年シュウヤは、夢の中でRPGのキャラクターメイキングを楽しんでいたと思ったら本当にそのまま異世界に、ヴァンパイフハーフから派生した新種族セイヴァルトとして転生していた。光と魔の力を合わせ持っていて太陽の光も聖水も平気だという。しかし、放り出されたのは明かりもほとんどない地下世界。暗闇の世界を戦いながら放浪しているうちに、彼は封印されていた神獣ロロと契約するのだが……。
 スケベで陽気な槍使いと黒猫の異世界放浪記で、思うままに戦い、助け、抱く、ストレスフリーな主人公です。これだけ顔が良く、陽気でコミュニケーション能力もバイタリティもある青年が、なぜ無職に甘んじていたのかが最大の謎。
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★男女比の狂った社会

2021-10-06 | ランキング・カテゴリー
 かつて男女の役割や地位が逆転した「男女逆転」というくくりで作品を探したことがありますが、そもそも男子の出生率・生存率が極端に低い世界の物語なんですね。ウェブ小説にもそういう設定の話がちょこちょこあるので、ここらでもう一回拾い集めてみました。

『エルフと戦車と僕の毎日』 佐藤大輔
 高校生のユタカが転移したのは、国を失ったエルフが少数民族として弾圧されている世界で、まさに祖国回復の戦争が始まろうというタイミングだった。やる気ばかりで武器も人も資金もない中、ユタカは周辺各国の思惑を利用して真っ当な戦争の準備を進めるのだが……。
 エルフが巨乳でもともと種族として男女比が偏っているハーレムありきの社会構造という設定に、ちょっとあざとさを感じます。佐藤大輔作品としては、IF戦記と萌えのバランスの食い合わせが悪い感じです。

『男女比がぶっ壊れた世界の人と人生を交換しました』 もぎすず
 身体がデカくて顔が厳つくて中学時代はまったくモテず、その先も死ぬまで彼女ができなさそうな高校生に通りすがりの女神が声をかけてきた。モテモテの人と人生を交換しませんか?と。そちらは平行世界で男性の比率が極端に少なく、女神お気に入りのイケメンが、モテすぎて困っているので、モテない男性を探していたらしい……。
 男性の数が少なく、保護される形で男性が集まっている特区以外では存在が都市伝説となっている世界の物語。社会的な男性の優遇度合いと人数差によるデメリットがトントンくらいでしょうか。

『スカーレット・ストーム~第二海軍物語』 中岡潤一郎
 明治41年、シベリア奥地ツングースで謎の大爆発がおこって以後、世界各国でなぜか男子の出生率が急速に低下、21%にまで下がるに至り、もはや女性の社会進出は避けられることではなくなっていた。昭和16年、凶作にあえぐアメリカは日本との開戦を決意するが、そのとき帝国海軍の一翼には女子兵による補助海軍、第二海軍があった……。
 登場人物が女性としての悩みや苦しみを抱えながら戦場に挑み、散っていく物語です。商業出版で女性を主役にした真面目な戦争モノとして、しかもライトノベル風のイラストをつけて出したという、いわば萌え戦記の先駆け。

『(仮題)とある転生者の異文化体験』 ピッピの助
 男の数が極端に少なく、女性が男を養う一夫多妻もあたりまえの世界に転生した。男性は常に国の保護の対象でちょっとつきまとわれただけでも警察がガチで対応してくれる。そんな世界で、Vtuberとしてデビューしてみたが、男性Vtuberはだいたい女のなりすましが多いことから最初は目立たず低迷していたのだが、その歌声や作詞作曲能力が次第に評価され始めていく……。
 ガールズバンドものの二次創作。元ネタに男性の出番が極端に少ないため、「ここは男女比率が極端な世界だ」と解釈して世界観を構築した作品。Vtuberデビューからクラスメイトへの楽曲提供、それがやがて国家間のトラブルにまで波及していく疾走感と痛快さが面白い。当然、男女比の歪さはハーレム形成の免罪符となります。

『回帰祭』 小林めぐみ
 植民惑星の閉鎖された都市には、300年前に地球の環境汚染から逃れてきた人々の子孫たちが暮らしていた。しかし、この都市の男女比率は9:1。16歳でのカップリングに失敗し、女性をパートナーにできなかった少年は全員が復興したという地球へ回帰させられることになるというのだが……。
 16歳を目前にした少年少女と喋るウナギの物語。こちらは珍しく男の方が多い社会の物語ですが、開拓地とか植民地とかではこれはむしろ常態だったりするので珍しくないと言えば珍しくありません。

『ようこそ女たちの王国へ』 ウェン・スペンサー
 下級兵士出身のウィスラーの一族は農民ながら、その娘たちは物心ついたときから実弾の詰まった銃を玩具代わりに育てられており、屋敷もそこらの軍の駐屯地よりも堅固な要塞のようであった。しかし、長男ジェリンはあと数ヶ月で16歳。その後は近在の農家に売られるか交換で婿取りする材料にされる運命だった……。
 男女比が1:20の女権社会で、1人の美しくて勇気のある少年が幸せな結婚をするまでの、波瀾万丈の物語。この手の男性が少ない社会というのはたいてい男性が大事にされて特権階級になりがちなのだけれど、この作品では「男は貴重な種馬で財産だから、大事に育てて余所から良い種馬を仕入れるための原資にする」存在なんですね。少数派が常に威張っていられるとは限らないのだ。

『大奥』 よしながふみ
 公家出身の美貌の僧・有功は、春日局により無理矢理還俗させられ、徳川家光の小姓となるべく大奥に入れられる。しかしそこで彼が知ったのは、既に本物の家光はすでに赤面疱瘡で死亡しており、家光の身代わりを務めている少女・千恵に世継ぎをもうけさせるために、彼が呼ばれたということだった……。
 謎の疫病、赤面疱瘡のまん延によって男女比が1:4となり、男の代わりを女性が務めるようになった日本での将軍家の年代記。


 男性の比率の極端に少ない世界の物語は、ウェブ小説ではちょくちょく見かけますが、男が少ない>大事にされる>増長する者が多いので誠実な主人公が慕われるor女性に群がられて女性恐怖症になりがちな男が増える中、平然と対応する主人公がモテる……という貞操観念逆転パターンが多いので、よしながふみの『大奥』とかウェン・スペンサーの『ようこそ女たちの王国へ』みたいに種馬扱いされる話は少ないのですね。
 ならばと「ノクターンノベル」で検索かけてみれば、今度は逆に女性の数が少ない世界が多くなるという不思議。男が少ない>大事にされる>逆ハーレムエンドというのが多いのかな?
 つまりどちらのパターンも、少数派が少数派であるがゆえにハーレムつくってめでたしめでたしが多そうなので(探せば同性愛ものもありそう)、そのパターンに陥らなかった『大奥』や『ようこそ女たちの王国へ』はスゴいなあと思いました。
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★パンデミック小説

2021-09-05 | ランキング・カテゴリー
 パンデミックとは伝染病の世界的大流行のこと。人類を滅亡に導き、文明を崩壊させんとするパンデミックをテーマにした小説は、この新型コロナウィルス(COVID-19)が蔓延する中で読むのはなかなか辛いものがありますが、それゆえに作品から受けとれるものもまた多くなっているんじゃないかなと思います。

『復活の日』 小松左京
 その年のインフルエンザは悪質だった。今までのインフルエンザと比較して致死性が非常に高い上にワクチンの効果が出にくいタイプだった。ワクチンの開発が急がれ、軍や政府機関はその確保を最優先事項とした。しかし、新種のインフルエンザと平行して、全く別の未知の流行病が蔓延していたのだ。医療従事者による懸命の治療が間に合わず、医師や看護師すら倒れ、街には回収しきれない死骸があふれた。都市機能・政府機能は次々にマヒし、ついには世界中の街並みに動く者はいなくなる。ただ、南極に孤立した調査隊員たち1万人を除いて……。
 1964年発表のトラウマ級パンデミック作品。滅び行く文明の中で最後まであらがいながら病魔と戦う人々から、生き残った人々がいかに人類文明を維持するために既存の倫理とか人道とか社会規範を捨てて0から構築していく苦悩と自己犠牲までが語られます。映画化もされましたが、そのせいで新型コロナウィルス蔓延で自衛隊が出動するシーンをニュースで見るとつい目が火炎放射器を探してしまいます。

『アンドロメダ病原体』 マイクル・クライトン
  地球へ帰還した人工衛星を回収に向かった軍のチームと連絡が途絶。調査に発進した偵察機のカメラは、周辺の町の人間が死に絶えたように見える光景を映し出した。なんらかの生物学的汚染が発生したと判断され、ワイルドファイア警報が発令された。事前に定められていた手続きに従って秘密裏に招集されたメンバーは、人里離れた砂漠の地下に建設された研究施設にて原因の究明と解決に取り組むことになった……。
 パンデミックを荒野の町1つに食い止めるべくサンプル調査を続ける科学者たちの5日間の記録。映画化もされた1969年作品。ほぼ研究所内部で話が進むのに、そのスリリングな展開は読む手が止まりません。

『カサンドラ・クロス』 監督:ジョルジュ・パン・コスマトス
 逃走中のテロリストが大陸横断鉄道に潜り込んだが、男は既に致死性の病原菌に感染していた。男の行方を突き止めた軍は列車をニュルンベルクに停止させ、窓から出入口まで溶接するなどして完全密封してポーランドの防疫施設に送り出すこととした。しかし、乗客の老セールスマンは知っていた。その途中にあるカサンドラ鉄橋は老朽化が進み、崩壊の恐れがあると近隣の住民には知られていたのだ……。
 未知の(軍用の)病原菌による感染への恐怖が前半、崩落の可能性が高いルートからの回避が後半という1976年のサスペンス映画。公開後に発売されたノベライズ版を読みました。不吉な予言を信じてもらえないカサンドラの故事を踏まえたストーリー。みんな不吉な予想は信じたくないのだ。それはテレビのニュースワイドなどで専門家の予想や警鐘を莫迦にして笑い飛ばすコメンテイターを見てれば分かりますね。老セールスマンが収容所の生き残りのユダヤ人で、当時を思い出してパニックに陥るのも時代を感じさせられます。

『ロンドン・ペストの恐怖』 ダニエル・デフォー
 1665年、50万都市ロンドンをペストが襲い8万人以上の命が奪われた。治療法を知らぬ市民は極限状況に追い込まれ、街から逃げ出す人々も多かったが、一方、周辺の町々では避難民を追いかえさんと銃をかまえてバリケードを築いていた……。
 『ロビンソン・クルーソー』の著者がペスト禍を目の当たりにして、当時の地獄絵図を精密に描き出したもの。ペストにかかって道連れとばかりにわざわざ人のいるところに出かけていったり、死者が減少し始めた途端にもう安全と喜んで街に出かけて、あるいはわざわざ避難先から出戻ってきたあげくに一家全滅したりする姿をみれば、今の熱があるのにわざわざ会食したり旅行する人の姿そのままですが、実は「新型コロナなんか存在しない」とデモしたりする人がいる分、現状は17世紀ロンドンより酷そうです。

『錆喰いビスコ』 瘤久保慎司
 人を生きながら錆びさせる《錆び風》が蔓延し、異形の怪物が跋扈するようになった日本で、人間は社会のシステムを変革させながら対応することで文明を維持し続けていた。しかし、それによって国家としての統制は失われ、各地方都市が独自の発展を遂げてきた。「人喰い茸」の異名を持つ少年ビスコは幻の茸を求めて関所を破り、砂漠を渡り、カバ兵やカタツムリ爆撃機と戦い続けている……。
 パンデミックというより、それに失われてしまった世界の再生とそこで生きる少年たちの冒険を描くポストアポカリプスもの。
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★チートキャラもの

2021-08-17 | ランキング・カテゴリー
 チート(いかさま)能力というのは、昔は敵対者の能力だった気がします。不死とか相手の攻撃全反射とか。主人公は頑張って修行して手に入れた力で戦うのだ……。
 実際どうだったかはともかく、今はみんな平気でチートな力を使ってます。必殺・無敵・魔力無限等々、チート=ズルではなく、=とてもスゴい力くらいのニュアンスになってますが、たまたま偶然に手に入れたり、神様の気まぐれでもらったり、ガチャひいたり、生まれつきだったり、努力とか根性とか無縁な感じです。かといって、その能力に甘んじてストーリーを作っていたら単調な「俺様ツエー」な自己満足に陥ってしまうので、そのあたりのさじ加減が難しいのです。権力も財力も武力も知力も圧倒的な主人公がおとなしくその能力を振るう機会を見つける話の代表と言ったら「水戸黄門」「暴れん坊将軍」。勉強になります。

『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』 之貫紀
 現代社会にダンジョンが出現するようになって3年。偶然の事故からダンジョン探索者として世界ランキング1位の能力を手に入れてしまったサラリーマン研究者、芳村圭吾はあっさり退社を決意。ダンジョンに潜って生計を立てることにした。この力があれば、イヤな上司の指示でつまらない仕事をしなくて済む。めざせスローライフ!
 ところが彼の能力が及ぼす影響は現代社会を大きく揺るがし、あまりのんびり休めるような生活にはならないのだった……。

 チート能力者でも、現代社会の枠組みでのんびり生きていこうと思うと、なかなか難しいのだ。
 息の合ったコンビだけれど不思議に恋愛臭のない男女が、真っ向からダンジョンに挑む他の冒険者を尻目にマイペースに検証を積み重ねていく、空想科学冒険小説。モンスターバトルはほとんどないけれど、緩急がついた展開で飽きさせず、スピーディーに物語は二転三転していきます。

『殺戮の魔猫~くはははは、知らんのか! チーズは空気に触れると鮮度がおちる~ 異世界印の転生饅頭
 日本人が異世界に猫ケトスとして転生し、怨嗟の果てに魔族と化して500年。敬愛する魔王様は今も眠りにつき、猫はただ玉座で惰眠をむさぼり、気が向けば美味しいご馳走を探して人間の世界を散歩する。しかし、侮ることなかれ。その駄猫ケトスこそ、魔王軍最高幹部の大魔帝。主神すら屠る最強の魔猫である……。
 単純に戦闘力や魔力だけを比較するなら神々すら相手にならないのだけれど、むちゃくちゃ手加減しないと勢い余って大陸沈めたり星を砕いたりしかねないのだ。あと、猫の器に引きずられ、気まぐれで悪戯になってしまうのが困りもの。
 チートすぎても自重しないといけないという話で、無敵の猫の冒険譚。


『ザ・ホワイトハウス』 アーロン・ソーキン
 民主党から大統領選挙に出馬したジェド・バートレットが1999年1月にアメリカ合衆国大統領に就任した。
 大統領と大統領を支える首席補佐官らスタッフが、アメリカ内外の現実に起こり得る様々な問題に対処していくのだが……。

 チートは無敵じゃない。いくら頭が良く、志が高く、人望があり、信仰の厚い人物が、優秀で理想を持ったスタッフと共に、世界最大の国家において最高の地位に就いたとしても、できないこと、やれないことばかり。中間選挙は勝てないし、銃禁止法案も核実験禁止条約は通らないし、環境問題には手をつけられない。政府を倒そうとする市民すら守らなくてはいけないのが民主国家。「敵も勝つことがあるのが民主主義です」「民主主義はしんどいな」という登場人物の言葉が作品のテーマです。
 「有権者がかならずしも正しい判断をするわけではない」から支持率を気にしていては正しい(と思う)政治はできないけれど、無視していては足下をすくわれる。これこそが憲法解釈としても倫理的にも正しいはずの法案が通せないけれど、反対派の論理も絶対に間違っているとはいえない。1つの情報についての分析は一致しているのに、結論がまったく逆になってしまう……。(現実に妥協しながらも)権力者が夢や理想を追いかけていく物語です。

『閣下が退却を命じぬ限り』 剣崎月
 今年38歳のリヒャルト・フォン・リリエンタール閣下は、北の小国ロスカネフ王国の参謀長なのだが、同時にアディフィン王国のフォン・アンディルファードであり、アブスブルゴル帝国のフォン・マリエンブルクでもあり、神聖帝国皇帝の異母弟にしてバイエラント大公国の大公アントン・フォン・アディフィンでもあり、グリュンヴァルター公王国の公王でもあり、レオミュール侯国侯王、ブリタニアス君主国の皇太子にしてクリフォード公爵アンソニー・オブ・ブリタニアスでもあり、今は滅びたルース帝国の皇太子でもあった。付け加えるなら、ド・メキシアルトカーンやらデ・シシリアーナなんていうのもある。ぶっちゃけ王族同士の婚姻が進んで血統が入り組んだ大陸のほぼすべての国で王位継承の上位にあるか王そのもので、はたまた次に教皇にしたい最有力候補である異端審問官の元締めシシリアーナ枢機卿でもあり、軍人としてはその知略で「1人で1万キロの戦線を支えている」とも評され、金保有率世界一にして世界の1/8の大地を個人所有している世界最大の富豪でもあり、モルゲンロート財閥ですら出入りの御用商人扱いである。
 その旧大陸から新大陸まで、政財界から宗教界までその威光の及ばぬ場所はなく、40万くらいまでの軍なら1人で吹き飛ばせる最後の専制君主こと閣下が恋をした。王国陸軍少尉にして彼氏いない歴=年齢のイヴ・クローヴィス23歳。長身のタフな職業軍人である彼女相手には、閣下の知謀も権力もまったく役立たずであった……。

 チートキャラでも恋愛は別物という話。
 (本人は自覚していないけれど)シモ・ヘイヘの狙撃技術と舩坂弘の身体能力を持つ転生者イヴ視点の『閣下が退却を命じぬ限り』は完結し、閣下視点の『Eはここにある』が連載中。『閣下が退却を命じぬ限り』では常に沈着冷静に見えた閣下が、いかに取り乱していたが語られます。あそこの国は彼女を揶揄したから滅ぼしちゃおうかとか、婚姻の承諾を得るために教皇に圧力かけちゃおうとか、彼女には城を贈ろうか国を贈ろうかとか、閣下の無茶ぶりに側近達が右往左往するさまが冷徹な国際政治の裏側とともに語られます。

『現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変』 二日市とふろう
 逆行転生者である桂華院瑠奈は日本を救いたい。そのために前世知識を活かして不良債権処理に手を出し、金融機関再編を呑み、企業合併を繰り返している。必要とあればアメリカ西海岸に飛び、大統領選さなかの共和党候補のパーティーにも顔を出すし、東京都知事選にも介入する。
 問題は周囲が彼女を誰かの操り人形としか見ていないことだ。それが新たな火種となる。ロマノフ系の血が入っている瑠奈の資金源はロマノフ王朝の隠し財産ではないかとか、樺太に独立国家を建設しようとしているのではないかとか。なにより彼女はまだ小学生だった……。

 バブル崩壊後の現代悪役令嬢による日本再生譚。
 名家の血筋の美少女は前世知識を持ち、その歌声は万の聴衆を魅了し、ハイテク株で手に入れた財は世界経済を揺り動かし、その身体能力はアクション映画をスタントなしで乗り越えられる。でも、彼女はまだ選挙権もない未成年。それが彼女の誰にもなんともしがたい、最大の弱みだったのです。

『ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた』 桂かすが
 月給25万円+成功報酬で期限は20年間という、ハロワで見つけた謎の求人情報に応募した山野マサルは、気がついたら異世界の地に配属されていた。放っておくと20年以内に破滅を迎えるという世界で、神様のスキル実験のお仕事だったのだ。好きに生きていけば良いと言われ、とりあえずチート気味な能力とアイテムはもらったのだが……。
 典型的なチート能力者によるハーレム冒険ものなんだけれど、チート能力は万能ではないのです。
 つまりポイントを割り振れば簡単に基礎能力を上げることもできるし、熟練の剣士や魔法使いにもなれる。でも、基礎鍛錬ができていないと簡単に頭打ちになるし、死ぬときはあっさり死んでしまう世界。ウサギ相手に負けるところから始まる冒険譚です。だいたいヒロインが増えるのも、死ぬ寸前のトラブルに巻き込まれたのがきっかけでと、トレードオフがしっかりできているのがポイント。


 以上、無敵の力で、他の者の努力をせせら笑いながら独り良い目を見るような話ではない作品を幾つか。
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★みんなが知ってる過去改変モノ

2021-08-15 | ランキング・カテゴリー
 「悪役令嬢もの」とか「ゲーム世界の脇役に転生」とかの最大の魅力であり欠点となるポイントは、元のストーリーについて読者がほとんど知らないということ。国が滅ぶとか一族郎党皆殺しとかの運命を回避するために、悪役令嬢やらかませ犬やらモブ脇役が頑張る話なのに、基本的に元々のストーリー展開の大半は作者の頭の中。なので「こんな事件が」「こんなキャラが」と後から言われても「後出し設定だからなあ」とつい冷めがち。読者の頭の中にこ個々のキャラクター設定やイベントが入っている方がひっくり返ったときの爽快感が大きいのだろうけれど、そうすると二次創作パロディか仮想戦記が本領のジャンルなんでしょう。
 そういう意味で、歴史改変もので織田家周辺がにぎわうのも納得。

偽マフティーとなってしまった。』連邦士官
 『機動戦士ガンダム~閃光のハサウェイ』の二次創作。気がついたらテロリストの偽マフティになっていた。このままだとハイジャックに参加して、映画開始10分で殺されてしまう。なんとか回避しようと四苦八苦しているうちに、酒代稼ぎに酒場でカボチャ仮装で踊った「連邦に反省を促すダンス」がなぜかネットで大反響。アッという間に拡散し、このカボチャ男こそ真のマフティー、暴力に訴えるマフティーの正体はシャア・アズナブル、踊るマフティはアムロ・レイだとか分からないことになってしまった。インテリたちが彼の考えてもいない意味を勝手に解釈して上乗せしていく。ダンスは大衆に広まっていく。正体がばれたら殺されるというのに、いつの間にかハサウェイと対峙して話すはめになり、ますますわけがわからなくなっていく。カミーユでも乱入して殴り飛ばしてくれないかなあと願いつつ、彼は自分でも意味不明なトークを繰り広げていく……。
 バタフライ効果で変わっていく宇宙世紀。

北政所様の御化粧係?戦国の世だって、美容オタクは趣味に生きたいのです?』笹倉のり
 歴史改変もの。美容品メーカーの開発担当だった主人公が、気がつけば戦国時代に転生、山内一豊の姫になる。その美容知識で化粧品の再現に乗り出すが、その噂が広がりすぎ、このままでは拙いと大坂城の大奥に送り込まれることとなった……
 美容から変える戦国日本史。

転生内親王は上医を目指す』佐藤庵
 歴史改変もの。城郭オタクの研修医が当直明けに階段から転落し、気がついたら幼女に転生していた。時は明治。しかも天皇陛下の息女、内親王である。日本の城郭を戦火から救うため、そして、父と兄を病魔から守るため、新米研修医としての知識と、学生時代の日本史講師としての知識を元になんとかしようと奮闘し始めたのだが、その言動に目が留まり、気がつけば明治の元老たちに周囲を固められていた……。
 おっさんだらけの逆ハーレムモノで大山閣下が大暴れする、医学メインの近代史。

エヴァ体験系』ku-10
 『新世紀エヴァンゲリオン』の二次創作。元自がシンジに憑依し、大人の良識と判断力と原作知識を使い、中学生のパイロットとしてできる範囲で生き延びていく話。具体的には、ホウレンソウのできない大人のフォローをして、とりあえず突っ込めな作戦指示に逆提案したり、汚部屋同居を回避しながら円満な人間関係の構築をめざします。
 エヴァの世界に冷静の大人が1人入り込んだら、当然そうなるだろうなという物語。

【賛美歌13番】もしも悪役令嬢に○○○○○が転生したら【超短編】』主(ぬし)
 “彼”に仕事を依頼する時は、賛美歌13番をラジオでリクエストすればいい。
 その公爵令嬢は最初からどこか違っていた。悪役令嬢といわれているが、この娘が裏の世界で何をしているのか誰も正確には把握していない。ただ“依頼成功率99パーセント”、“不可能を可能にする令嬢”という噂だけがその筋で知られているだけだ。
「ゆ、ユーリ、ダメだ! エリザベートの背中に近寄るな!」
 『ゴルゴ13』の二次創作。デュークって公爵の意味なんだよ?

起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない』Reppu
 目が覚めたらマ・クベになっていた。時は宇宙世紀、処はオデッサ。ガンダム本編開始まであとわずか。なんとか生き残ろうと、使えないアッザムは魔改造し、ザクレロだって用途を限定すれば使えることを証明し、地球戦線でいちばん必要だったのはヒルドルブなんだよ!とか、外人部隊や囚人部隊を救ったりしながら、なんとかテキサスコロニーで白い奴に殺されたり、地中海で自爆しないで済むルートを模索するクベ大佐。しかし、陰湿な政治家きどりのインテリが、いつの間にか上司からは信頼され、部下からは崇拝され、女性士官達からは思慕の情をぶつけられる愉快な男になっていた。もはや彼が願うのは自分の死を回避することではない。1人でも多くの仲間を生き延びさせることだった……。
 『機動戦士ガンダム』の二次創作。「ムーミン谷の赤い彗星」以来の感動であった。しかし、ザクレロやヒルドルブすら活躍の場を見つけ出せたのに、箸にも棒にもかからないアッザムの立場って。
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★Vtuberもの

2021-08-11 | ランキング・カテゴリー
 今では「子供のなりたい職業ランキング」の上位ランクとなったYouTuber、Vtuber。当然、ウェブ小説でもここ数年で作品が一気に増えました。とはいえ、書籍化されているものはほとんどなく、全体的にはまだ「追放」「ざまあ」「悪役令嬢」が主流です。『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』が切り込み隊長くらいのポジションです。
 ただ、その多くが「面白い設定のYouTuber/Vtuberが配信して人気を得るまで」で終わりがち。いくら配信者が妖怪を演じているけど本当に妖怪、魔王を演じてる魔王、TS転生者とかでも、話があくまで配信周辺に終始していると行き詰まりがちです。バーチャルRPGのスローライフものと同じで、ただ日々の話が流れるだけで起伏にかけがちになり、前回と同じような話が次回も続くのです。最初は面白いけれど、読んでいて飽きてしまう。作者も飽きるのか途中で停まる。
 そんな中で中盤以降も面白く読めている作品を幾つか。

現代にTS転生したけど馴染めないから旅に出た』 漆間鰯太郎
 交通事故で死んだと思った営業マンが、気がつけば見知らぬ部屋で寝ていた。しかし、その姿は銀髪の美少女。どうやら現代から現代へ憑依転生してしまったらしい。男としての自分は死に、かといって女性の自分にも馴染みきれない主人公は、どちらでもない第3の存在を、インターネット上の配信者として創造することにした。仮面で顔を隠した美少女らしき人物の怠惰で投げやりな配信は、少しずつ人気が出てくるのだが、その存在に彼女の姉が気がついた……。
 TS転生してしまい「自分」というものを失ってしまった主人公が、チューバーとしての人格を生み出すことによって新しい自分を見つけるまでの、シリアスな水曜どうでしょう百合風味。配信モノであり、ロードムービー。完結。外伝はモロ百合。

Vの者!~挨拶はこんばん山月!~』 サニキリオ
 増長しすぎて居場所がなくなって引退した元トップアイドルの拓哉。居酒屋でバイトしながら怠惰な毎日を送っていた彼が、バーチャルライバー“竹取かぐや”の音楽ライブ配信を見たことからかつての夢を思い出し、気づけばオーディションに応募していた。しかし、合格はしたもののその境遇は「山月記」の李徴そのままだと、「傲慢な態度で生きていたため、とうとうライオンになってしまった」獅子島レオという役を演じることとなったのだが……。
 人生再スタートの元アイドルが、配信者としての日々の中から失われたはずの絆を見つけ出し、新たな道を歩み出す物語。

逆行転生したおじさん、性別も逆転したけどバーチャルYouTuberの親分をめざす!』 ブーブママ
 ライブ鑑賞中に落雷で死んだ男が悪魔に転生させられる。悪魔の経験値稼ぎ用として面白い人生をやってくれないかというのだ。もし、人生をやり直せるなら……Vtuberになりたい!と蓮向ナルトは4歳からやり直すことにした。そして世界初のVtuberを目指すのだ。今から英才教育で頑張れば、キズナアイはおろかAmiYamatoにだって勝てる。本当は世界初のバーチャルアイドルを名乗りたかったのだが、彼が生まれる以前に時祭イブがいるので、さすがにこれには勝てなかった……。
 幼年期から完璧なVtuberをめざし、プログラミングから音楽、語学、空手と英才教育を受けていく少女(元おっさん)の人生やり直しTS転生Vtuberもの。素直に社交界とか芸能界にデビューした方が成功しただろうに、かたくなにバーチャル世界を目指します。完結。

転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります』 田舎犬派
 転生したらなんか電子生命体になっていた。ところが今の世の中は軌道エレベーター建造が失敗したことに始まる混乱で、生存に最低限必要なモノ以外は切り捨てる時代を経由し、次第に復興しつつあるものの、人々の多くは地下都市に住み、食の楽しみも知らず、四季折々の風物など考えたこともない生活をおくっていた。そんな時代に転生した電子生命体は「わんこーろ」を名乗って配信を始め、埋没した過去のデータをサルベージしては仮想空間に再現し始めたのだが……。
 ポスト・アポカリプスのネット配信を経由して、かつての日本文化を復活させていく物語。

アラサーがVtuberになった話。』 とくめい
 過労で倒れてブラック企業を退職した男は、妹のススメで企業Vtuberに転職、イケメン神坂 怜としてデビューした。しかし、女性Vtuberばかりがもてはやされがちな業界。神坂の配信はことあるごとに炎上はしても登録者数は延びない底辺Vtuberとなってしまうが、腐ってもブラック企業で活躍していたアラサー。声が良いだけでVtuberとしては三流だったが、実務者としては一流だった……。
 炎上ばかりの男性Vtuberが、かわいい妹を愛でながら、会社からは頼りにされ、同期の女性Vtuberには信頼され、それによってまた炎上してしまう、鎮火と炎上が代わる代わる来るマイペース配信物語。
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★水商売もの(ウェブ小説)

2021-08-10 | ランキング・カテゴリー
 昔、「オール読物」とか「小説新潮」とかを読んでいたときは時々見かけたけれど、最近はとんとご無沙汰だった水商売・風俗の世界を舞台にした作品は、「小説家になろう」とかを読んでいると見かけるようになりました。ウェブ小説では数は多くありませんが、こういう作品も気分転換に良いのです。というか、本質的にはファンタジー等での王道パターンと変わりはありません。

立身出世物語。俺は風俗店(ここ)で今日も頑張っています。』 もふもふもん
 仕事を辞めて自宅でゴロゴロしていた主人公の目に留まった「総合レジャー施設の経営と運営」の求人広告。交通の便が良くて給料も悪くないと応募してみれば、あれよあれよという間にファッションヘルスのマネージャーになっていた……。
 名古屋を舞台にした風俗シリーズの第一弾。ヘルスからキャバクラと仕事を任されていくうちに、主人公の意外な才能が発揮され、周囲の評価がぐんぐん上がって大きな仕事を任されるようになっていくというビジネスものの王道。テーマがテーマだけれどR18ではありません。自分ではあたりまえのことと思っていて、前職では全然活かせていなかったけれど、はまるところにはまれば誰もが驚く異能になる……というのは、異世界追放ものとかVtuberものとかに限らないのです。

Kitchenより愛を込めて~ホストクラブ体験記~』 もふもふもん
 パティシエ仕事の経験もある元バーテンダーが、昔お世話になった先輩からの頼み事で、少しの間だけホストクラブの厨房に入る事になった。表の仕事はせず、ただ裏で厨房仕事だけしていればいいという主人公に反発を覚えるホストもいたが、その生み出すフルーツ盛り合わせやオツマミ、賄いに、いつしかホストも客も引き込まれていた……。
 名古屋を舞台にした風俗シリーズの第三弾。『異世界居酒屋「のぶ」』とか『異世界食堂』とか、元の世界では当たり前の料理が異なる世界では食べる者に驚きと感動を与え、それによってドラマが生まれる……パターンの現代社会版です。イースター島で寿司屋を開くとか、ニューヨークにラーメン屋を出店するとかと同じですね。食のギャップにドラマが生まれるのは、別に異世界に限定しなくても良いのです。

人生で一番時給が高かったバイトの話』 とみながけい
 まだ最低賃金が400円台だった1980年代。バイト先が倒産して生活費にも困っていた専門学校生が見つけたのは、新宿歌舞伎町の喫茶店で時給1800円という破格のバイト。ウェイターがやれる体格の良い者ということで応募してみれば即採用!
 しかし、そこはヤクザが経営するゲーム屋だった。100万200万と動く金。金払いはいいけれど、気を抜くと客に殴りかかられたり包丁で切りつけられることも茶飯事。しかし、そんな世界に主人公はいつしか惹かれていく……。

 上の2作があくまで合法にビジネスをしようというところから来るビジネス小説、苦労譚、立身出世譚だったのに対し、こちらは完全に龍が如くなヤクザな世界。政治家や芸能人から密売人やヤク中まで入り乱れる中で、平凡な専門学校生が「やるときはケンカではなく殺す気で先手必勝」と腹をくくる物語です。
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