
だれも知らない
どこに行くのか
みな行くところ
風は吹きすさび
海はめぐる
けれどだれも知らない』
たぶん知っているのは神様。
“ロリコン”という言葉のもととなったナボコフの『ロリータ』は、読んでみてもぜんぜんロリコン小説ではないのです。異常性癖の話に分類されるかもしれないけれど、つまりは普通に女に入れあげて身を持ち崩す話なので。
一方、昔、よくロリータ特集とか雑誌で企画されると、記事では『ロリータ』と抱き合わせであるかのように『ジェニーの肖像』が必ず紹介されていた気がします。
1938年冬。ニューヨークの貧しい青年画家イーベンは、夕暮れの公園で1人の少女に出会った。
数日後、イーベンは少女ジェニーと再会するが、彼女はなぜか数年を経たかのように成長していた。
それからイーベンとジェニーはたびたび会うようになり、イーベンは少しずつ成長していく少女の肖像画を描き続けるのだが…。
時を超えた恋の物語。
すごく泣ける美少女恋愛小説なんだけれど、最近ではちょっと「リカちゃんからの電話」の原型みたいな気がしてきて、素直に読めなくなりました。
「もしもし、わたしジェニー。お電話ありがとう。今ね、お出かけ中なの」「もしもし、わたしジェニー。お電話ありがとう。今ね、あなたの家に向かっているのよ」「わたしジェニー。今公園の角にいるの……」
あ、なんかリカちゃんだかメリーさんだかで泣けてきた。逆浸食だ……。
結局、ロバート・ネイサンは持てない男だったんじゃないかという疑念がぬぐえません。自分が幸せだったら、物語もハッピーエンドにするんじゃない?
【ジェニーの肖像】【ロバート・ネイサン】【創元推理文庫】【傑作ファンタジイ】【白の女王】