付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「Z-ツェット-」 青池保子

2019-02-09 | 戦記・戦史・軍事
「据え膳くうと腹をこわすぞ!」

 東西冷戦下のヨーロッパで、NATO軍情報部の〈鉄のクラウス〉ことクラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐は共産圏相手の防諜作戦を展開していた。
 青年、コードネーム〈Z〉は情報部の新人だが、少佐はZさえ遊ばせておく余裕がなかった。東独国家保安省MFSがクウェートと西側との石油輸出量交渉に圧力をかけるため、石油相の子息令嬢を誘拐しようと動き出したことまでは察知していたのだが、世界中に散っている14人の子供たちのうち、誰が狙われているかまでは突き止められなかったのだ……。

 1976年より連載開始の『エロイカより愛をこめて』は、当初は超能力を操る3人の少年少女と美術窃盗犯で男色家の伯爵とのドタバタコメディでスタートしたのだけれど、2話にて登場した鉄のクラウスに見せ場をみんな持って行かれます。以後は怪盗エロイカことドリアン・レッド・グローリア伯爵と硬派な少佐とのスパイ・コメディとなってエスパー3人の出番はまったくなくなるのだけれど、「ボルト1本でも軍事情報」というネタそのものは時事も取り入れ、少女マンガのコメディながら軍事評論家のアドバイスを受けながらと、中身はけっこうハード。その本編からコメディ要素と伯爵を抜き、掲載誌を「プリンセス」から「LaLa」に移し、新米スパイを主役にしたシリアスなスピンオフ作品が「Z」のシリーズ。ドイツ語なのでツェットと読みます。私らはドイツ語のアルファベットは少佐から学んだのです(ちなみにギリシア語読みは「スターレッド」から学びました)。
 そういや、この作品が聖地巡礼の走りだったかも。この作品の影響でドイツのエーベルバッハ市に日本人観光客が急増し、作者に市から名誉賞が贈られているはずです。

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