付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「萌え豚転生」 神通力

2021-12-27 | 異世界転生
「使えるものはなんでも使う。利用できるものは躊躇いなく利用する。王族・貴族の生き方なんてそんなものさ。長く使いたいと思ったものでも必要とあらば壊れるまで酷使することも厭わない」
 誰もが生まれながらに誰かの道具なのだと第二王子ルタバガの言葉。

 冷酷非道な悪徳商会と噂されるゴルド商会の8歳になる息子が階段から落ちた。甘やかされて育った上に極度の女好きの肥満児、ホーク・ゴルドがメイドの尻を触って振り払われたあげく勢い余って転落したのだ。
 ところが目を覚ましたホークは豹変していた。
 数いる若いメイドたちを解雇し始め、虐げられていた異母妹とは距離を起きつつ衣食や教育に気を配り、婚約者とも礼儀正しく距離を置き始めた。メイド長は別人と入れ替わったのかと疑うほどだが、彼女自身が終始立ち会っていたからそれはない。けれど、それは完全に間違ってもいなかった。転落のショックで前世の記憶を取り戻したのだ……。

 陰気で人づきあいが苦手で、太っていたこともあって女性には馬鹿にされ敬遠されていたことから女性不信にもなっていたアラフォー男が、よそ見運転をしていた中年女に撥ねられて異世界に転生する物語。定番ネタと言えば定番だけれど、『異世界に転生したら本気出す!』とか日本でがんばれない奴が異世界でがんばれるわけがない……というところから始まるアンチテーゼ。簡単にスタート段階からフルスペックで超人的能力を発揮するようなチートもなく、ストーリーに必要のないハーレム展開の恋愛ネタで話を台無しにすることもなく、主人公は金持ちのボンボンで前世記憶が蘇っても自虐的で自己評価が低く自己防衛でハリネズミのよう。他人が自分から離れていっても平気なように、裏切られても良いように、心の中に「要らないものリスト」を用意している男の生き方を見守る話です。
 ウェブ版ではストーリーが進むにつれ商売に冒険にはっちゃけて暴れ回りますが、書籍化では物語としてきりよいところまで、自分に絶望していた男が世界と仲直りするまででまとまってます。
 悪役転じてゲームや小説の主人公を食ってしまう話は多いけれど、いわゆるヒロインっぽいキャラを片っ端から排除した上でおっさんばかりで身内を固めていくので、主人公の周囲から女っ気がどんどん無くなっていくのが特色。作者曰くなにかといえばヒロインといちゃつくのがうっとうしいということだけれど、たまにはこういう話があっても良いですよね。表紙イラストのホークがいきなり険のとれたポッチャリ美少年になってますし、イラストのイーグルパパとかとても悪人顔に見えませんけど。

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