時間旅行ものと転生ものは混在しやすく、作品・作者ごとに定義が違っていたりするのだけれど、ここでは過去の自分に意識だけが戻るものを「タイムリープ」、機械や道具を使って過去や未来に身体ごと移動するものを「タイムトラベル」、機械や道具を使わずに身体が別の時代に移動するものを「タイムスリップ」、時代を問わず(現代から過去まで)他人の身体に意識が乗り移るのは「憑依」で、一時的ではないものは「憑依型転生」ということにしときます。ついでに平行世界を移動するのは「ワールドチェンジ」で良いでしょうか?
『アーサー王宮廷のヤンキー』マーク・トゥエイン (1889)
アメリカ人技師が部下に殴られた弾みでタイム・スリップ。アーサー王の宮廷に紛れ込み、国民の教育や科学技術の導入を試みるも、近代化の反動が起こってしまい……。
騎士の突撃を鉄条網で食い止めたり、電信網を整備したりとか、技術チートものの原点です。
『時果つるところ』 エドモンド・ハミルトン(1950)
東西冷戦は核戦争へと拡大した。だが、アメリカの小都市ミドルタウン上空で爆発した東側陣営の新兵器は、そのエネルギーで街全体を数百万年先の未来に飛ばしてしまう。そこは太陽と地熱の衰えにより寒冷化し、無人の世界となっている地球だった……。
スペースオペラ『キャプテン・フューチャー』で知られるハミルトンによる本格的タイムスリップSF。銀河文明との接触から地球再生計画までが語られます。
『戦国自衛隊』半村良 (1971)
大演習のさなか、富山湾沿岸に集結していた自衛隊1個中隊が接岸していた哨戒艇もろともタイムスリップした。接触した現地の武将の言葉によれば、今は永禄三年だというが、話を聞くに自分たちの知る歴史と微妙に異なることから、よく似た別の世界線であろうということになった。なにしろ織田家も松平家も存在しないのだ。
最上位の指揮官となった伊庭三尉は、春日山城の長尾景虎と協力体制を取ることにしたのだが……。
伝奇SF小説作家の生みの親であるが書いた、架空戦記の先駆けともいうべき作品。異世界転移で現代知識と現代装備で無双してブイブイいわせます。
『漂流教室』 楳図かずお(1972)
突然の大地震で大和小学校は校舎ごと未来世界へタイムスリップしてしまう。岩と砂漠だけの荒れ果てた大地に頓挫した校舎で教師のほとんどが亡くなった中、生き残った子供たちは協力して生き残ろうとするのだが、飢餓や伝染病の蔓延などで児童たちの数も減り続けていく……。
人間の強さと弱さ、気高さと醜さが表裏一体で語られる未来サバイバル小説。
『タイムスリップ大戦争』豊田有恒 (1975)
日本全土に地震発生。それは震度2の軽震だったが、その直後、日本列島が丸ごとタイムスリップしてしまったのだ。時は太平洋戦争のまっただ中。在日米軍も含めて最新鋭装備の戦力を持つ国家の出現に、世界情勢は大きく変化して正史から外れていくのだが……。
架空戦記の先駆であり、日本列島丸ごと時空転移ものの原点。
『王家の紋章』 細川智栄子あんど芙〜みん(1976)
財閥令嬢キャロル・リードは王家の呪いによって太古のエジプトへとタイムスリップしてしまう。そこで偶然出会った少年王メンフィスにその金髪碧眼の美貌を見初められるのだが、彼女の真価は何よりも現代科学と歴史の知識にあった……。
現代人が過去にタイムスリップして現代知識で成り上がる、現在のウェブ系ファンタジーの原典ともいうべき少女マンガ。実は未だ連載中で新刊が出る最長不倒作品。これを読んでいると、水のろ過技術とか鉄剣の製法は義務教育と思い込むようになります。
『鵺姫真話』 岩本隆雄(2000)
人類を宇宙に進出させることで地球環境の負担を軽減させようという進化計画がスタートしたが、候補生だった川崎純はその本格的な始動に沸き返る洋上都市を後にしていた。少女の視力が急激に悪化したことから、宇宙飛行士への道が断たれてしまったのだ。夢破れて故郷へ戻った純は、剣道の奉納試合を引き受けることになるのだが、それをきっかけに過去の世界へとタイムスリップしてしまう……。
宇宙開発の拠点となる未来都市から一転して昭和の香り漂う故郷の町、さらには時間を跳躍して戦国時代に放り込まれるという二転三転。過去へタイムスリップした人間が未来の知識で活躍し、それゆえ畏れられたりあがめ奉られたりするというのも時間SFの定番。
『ちょんまげぷりん』 荒木源(2006)
直参旗本の木島安兵衛は、ある夜、不思議な光に足を踏み入れたかと思うと、いつの間にか奇妙な街に放り出されていた。空高く伸びる巨大な建築物、街を歩く奇妙な風体の町人たち。
そこで出会ったひろ子と友也の母子に、今は安兵衛の生きていた時代から180年後の世界だと告げられるのだが……。
現代に放り出された侍が、母子家庭に居候しているうちに、自分自身の生きる意味を見つける一方、周囲の人々にも家族の絆を再発見させるプロセスの物語。『スミス都へ行く』のように、時代錯誤の人間がその実直さで周囲を変えていく物語の典型ではあるけれど、そこで彼自身も変わっていくという点も重要。「ござる」口調の天才パティシエの活躍は読後感さわやか。
『織田信奈の野望』春日みかげ (2009)
なんの前振りもなく、戦国時代にタイムスリップしてしまった高校生、相良良春。彼の命を助けた足軽、木下藤吉郎がいきなり戦死してしまったために、なし崩しに織田家に身を寄せることになる。
しかし、いくら未来から来たといってもゲームくらいでしか戦国時代の知識がない良春は、桶狭間といってもどこの場所かも分からない。果たして、彼は主君……姫武将・織田信奈を救えるのだろうか……?
タイムスリップものなのだけれど、ちょいとずれた平行世界の過去へ紛れ込んだらしく、武将にも美少女が多数。男女に関係なく長子相続な世界なのですね。そりゃあ、確かに筋が通っている。
『戦国小町苦労譚』夾竹桃 (2013)
農業高校生の綾小路静子は、買い物帰りの山道でいつの間にか過去に飛ばされていた。
目の前には騎馬の武将。射小手に描かれた「五つ葉木瓜紋」と腰の「宗三左文字」などから相手はどうやら織田信長らしいと気がついた。一方、信長も目の前の娘がどうやらこの国の人間ではないと気がついた。もしかしたら南蛮の人間なのか。とりあえず実力さえあれば女であっても信長なら取り立ててくれるだろうと保護を期待する静子と、南蛮の技術を手に入れたい信長の利害が一致した……。
チートな異能力に頼らない内政系タイムトリップもので、農業系女子高生が戦国時代にトリップして信長配下となり、異世界DASH村を建設する話。
『銭(インチキ)の力で、戦国の世を駆け抜ける。』Y.A (2015)
人類が宇宙に進出してから数千年。零細運輸会社「足利運輸」唯一の貨物船〈カナガワ〉が時空間の異常に巻き込まれ、気がつけば地球の海に不時着。ところが地形もデータにある地球とは違っていて、どうやら過去に戻ってしまったらしく、しかもこの世界は元の世界とは別の次元らしいと判明する。
元の世界には戻れそうにもないけれど、宇宙船のローンも払わなくても良くなったと気を取り直した足利光輝たちは、沈没船のお宝を引き上げて、尾張の国で売りさばこうとするが、そこで織田信長に見咎められる……。
未来の知識と工業力で成り上がる、戦国内政系チート物語。チート系主人公はいろいろいるけれど、ここまで開き直ったチートだとむしろ清々しいというものです。もちろん戦国なので成り上がっていけば戦は避けられないことだけれど、そこはひたすら火力押しです。補給の勝利と言えなくもありません。
『薩摩転生~世に万葉の丸十字が咲くなり~』内富拓地&ほうこうおんち (2024)
1586年、九州平定に動き出した豊臣軍に挑みかからんとする島津の軍勢。しかし、そのとき天地が揺らめき、火山が噴火。気がつけば島津家一族郎党は、戦国時代から約1300年前、帝国存亡をかけた大戦国時代の真っ只中というローマ帝国へと転移していた……。
戦国最恐、島津家の軍勢が戦力十分にして戦意過剰なまま異世界に転移していたら……という仮想戦記がまさかのコミカライズ。ウェブ版は西暦1453年の黒海沿岸に転移してオスマン帝国とぶつかりますが、そこは原案ということにしてさらに時間を遡り、3世紀ローマでの戦いが描かれていきます。
『アーサー王宮廷のヤンキー』マーク・トゥエイン (1889)
アメリカ人技師が部下に殴られた弾みでタイム・スリップ。アーサー王の宮廷に紛れ込み、国民の教育や科学技術の導入を試みるも、近代化の反動が起こってしまい……。
騎士の突撃を鉄条網で食い止めたり、電信網を整備したりとか、技術チートものの原点です。
『時果つるところ』 エドモンド・ハミルトン(1950)
東西冷戦は核戦争へと拡大した。だが、アメリカの小都市ミドルタウン上空で爆発した東側陣営の新兵器は、そのエネルギーで街全体を数百万年先の未来に飛ばしてしまう。そこは太陽と地熱の衰えにより寒冷化し、無人の世界となっている地球だった……。
スペースオペラ『キャプテン・フューチャー』で知られるハミルトンによる本格的タイムスリップSF。銀河文明との接触から地球再生計画までが語られます。
『戦国自衛隊』半村良 (1971)
大演習のさなか、富山湾沿岸に集結していた自衛隊1個中隊が接岸していた哨戒艇もろともタイムスリップした。接触した現地の武将の言葉によれば、今は永禄三年だというが、話を聞くに自分たちの知る歴史と微妙に異なることから、よく似た別の世界線であろうということになった。なにしろ織田家も松平家も存在しないのだ。
最上位の指揮官となった伊庭三尉は、春日山城の長尾景虎と協力体制を取ることにしたのだが……。
伝奇SF小説作家の生みの親であるが書いた、架空戦記の先駆けともいうべき作品。異世界転移で現代知識と現代装備で無双してブイブイいわせます。
『漂流教室』 楳図かずお(1972)
突然の大地震で大和小学校は校舎ごと未来世界へタイムスリップしてしまう。岩と砂漠だけの荒れ果てた大地に頓挫した校舎で教師のほとんどが亡くなった中、生き残った子供たちは協力して生き残ろうとするのだが、飢餓や伝染病の蔓延などで児童たちの数も減り続けていく……。
人間の強さと弱さ、気高さと醜さが表裏一体で語られる未来サバイバル小説。
『タイムスリップ大戦争』豊田有恒 (1975)
日本全土に地震発生。それは震度2の軽震だったが、その直後、日本列島が丸ごとタイムスリップしてしまったのだ。時は太平洋戦争のまっただ中。在日米軍も含めて最新鋭装備の戦力を持つ国家の出現に、世界情勢は大きく変化して正史から外れていくのだが……。
架空戦記の先駆であり、日本列島丸ごと時空転移ものの原点。
『王家の紋章』 細川智栄子あんど芙〜みん(1976)
財閥令嬢キャロル・リードは王家の呪いによって太古のエジプトへとタイムスリップしてしまう。そこで偶然出会った少年王メンフィスにその金髪碧眼の美貌を見初められるのだが、彼女の真価は何よりも現代科学と歴史の知識にあった……。
現代人が過去にタイムスリップして現代知識で成り上がる、現在のウェブ系ファンタジーの原典ともいうべき少女マンガ。実は未だ連載中で新刊が出る最長不倒作品。これを読んでいると、水のろ過技術とか鉄剣の製法は義務教育と思い込むようになります。
『鵺姫真話』 岩本隆雄(2000)
人類を宇宙に進出させることで地球環境の負担を軽減させようという進化計画がスタートしたが、候補生だった川崎純はその本格的な始動に沸き返る洋上都市を後にしていた。少女の視力が急激に悪化したことから、宇宙飛行士への道が断たれてしまったのだ。夢破れて故郷へ戻った純は、剣道の奉納試合を引き受けることになるのだが、それをきっかけに過去の世界へとタイムスリップしてしまう……。
宇宙開発の拠点となる未来都市から一転して昭和の香り漂う故郷の町、さらには時間を跳躍して戦国時代に放り込まれるという二転三転。過去へタイムスリップした人間が未来の知識で活躍し、それゆえ畏れられたりあがめ奉られたりするというのも時間SFの定番。
『ちょんまげぷりん』 荒木源(2006)
直参旗本の木島安兵衛は、ある夜、不思議な光に足を踏み入れたかと思うと、いつの間にか奇妙な街に放り出されていた。空高く伸びる巨大な建築物、街を歩く奇妙な風体の町人たち。
そこで出会ったひろ子と友也の母子に、今は安兵衛の生きていた時代から180年後の世界だと告げられるのだが……。
現代に放り出された侍が、母子家庭に居候しているうちに、自分自身の生きる意味を見つける一方、周囲の人々にも家族の絆を再発見させるプロセスの物語。『スミス都へ行く』のように、時代錯誤の人間がその実直さで周囲を変えていく物語の典型ではあるけれど、そこで彼自身も変わっていくという点も重要。「ござる」口調の天才パティシエの活躍は読後感さわやか。
『織田信奈の野望』春日みかげ (2009)
なんの前振りもなく、戦国時代にタイムスリップしてしまった高校生、相良良春。彼の命を助けた足軽、木下藤吉郎がいきなり戦死してしまったために、なし崩しに織田家に身を寄せることになる。
しかし、いくら未来から来たといってもゲームくらいでしか戦国時代の知識がない良春は、桶狭間といってもどこの場所かも分からない。果たして、彼は主君……姫武将・織田信奈を救えるのだろうか……?
タイムスリップものなのだけれど、ちょいとずれた平行世界の過去へ紛れ込んだらしく、武将にも美少女が多数。男女に関係なく長子相続な世界なのですね。そりゃあ、確かに筋が通っている。
『戦国小町苦労譚』夾竹桃 (2013)
農業高校生の綾小路静子は、買い物帰りの山道でいつの間にか過去に飛ばされていた。
目の前には騎馬の武将。射小手に描かれた「五つ葉木瓜紋」と腰の「宗三左文字」などから相手はどうやら織田信長らしいと気がついた。一方、信長も目の前の娘がどうやらこの国の人間ではないと気がついた。もしかしたら南蛮の人間なのか。とりあえず実力さえあれば女であっても信長なら取り立ててくれるだろうと保護を期待する静子と、南蛮の技術を手に入れたい信長の利害が一致した……。
チートな異能力に頼らない内政系タイムトリップもので、農業系女子高生が戦国時代にトリップして信長配下となり、異世界DASH村を建設する話。
『銭(インチキ)の力で、戦国の世を駆け抜ける。』Y.A (2015)
人類が宇宙に進出してから数千年。零細運輸会社「足利運輸」唯一の貨物船〈カナガワ〉が時空間の異常に巻き込まれ、気がつけば地球の海に不時着。ところが地形もデータにある地球とは違っていて、どうやら過去に戻ってしまったらしく、しかもこの世界は元の世界とは別の次元らしいと判明する。
元の世界には戻れそうにもないけれど、宇宙船のローンも払わなくても良くなったと気を取り直した足利光輝たちは、沈没船のお宝を引き上げて、尾張の国で売りさばこうとするが、そこで織田信長に見咎められる……。
未来の知識と工業力で成り上がる、戦国内政系チート物語。チート系主人公はいろいろいるけれど、ここまで開き直ったチートだとむしろ清々しいというものです。もちろん戦国なので成り上がっていけば戦は避けられないことだけれど、そこはひたすら火力押しです。補給の勝利と言えなくもありません。
『薩摩転生~世に万葉の丸十字が咲くなり~』内富拓地&ほうこうおんち (2024)
1586年、九州平定に動き出した豊臣軍に挑みかからんとする島津の軍勢。しかし、そのとき天地が揺らめき、火山が噴火。気がつけば島津家一族郎党は、戦国時代から約1300年前、帝国存亡をかけた大戦国時代の真っ只中というローマ帝国へと転移していた……。
戦国最恐、島津家の軍勢が戦力十分にして戦意過剰なまま異世界に転移していたら……という仮想戦記がまさかのコミカライズ。ウェブ版は西暦1453年の黒海沿岸に転移してオスマン帝国とぶつかりますが、そこは原案ということにしてさらに時間を遡り、3世紀ローマでの戦いが描かれていきます。