生身で精神だけ過去や未来に飛ぶとか、事故で身体ごと異世界に飛ばされるのではなく、アイテムや機械を使って過去や未来へ旅行する作品を「タイムトラベル」としました。いちばん有名なのは「ドラえもん」のタイムマシンか「タイムボカン」かな? 人によってはタイムスリップやタイムリープなどをタイムトラベルに含めることはあります。
『タイムマシン』 H・G・ウェルズ(1895)
著名な科学者が時間が第4の次元であるという秘密を解明、時間移動装置を完成させると自らを実験台にして未来への旅行に出発したのだが、そこは紀元802701年の未来世界。人類は無能で知性に欠けているが平和で穏やかなイーロイと、獰猛な食人種族モーロックへと分化していた……。
時間旅行ものの古典にして原点。ここで過去ではなく未来へというパターンは意外に少ないかも(冷凍睡眠除く)。
『夏への扉』 ロバート・A・ハインライン(1957)
1970年12月。婚約者に裏切られ、仕事も発明も奪い取られてしまった男が30年後に蘇る冷凍睡眠を申し込んだ。再び甦生できる保証もない未来への旅に同行するのは猫のピートだけだったが……。
その冷凍睡眠で未来へ往き、そこからまた過去へ飛ぶのがこの作品。タイムマシンもののセレクトでこれを外したら怒られそうな、ベスト・オブ・SFといって常に上位に来るロマンティックSFで、ネコ小説で、一種の恋愛小説で、「あきらめるな。幸せをつかむためにがんばれ」という話。ルンバの原型が登場します。
『テクニカラー・タイムマシン』 ハリイ・ハリスン(1967)
倒産寸前の映画会社がみつけた金の玉子はタイムマシン。世に認められない天才科学者の発明を手に入れた会社は、これならセット代もエキストラの給金もタダだ!と大喜び。普通にセットをつくるより安い予算でタイムマシンを完成させ、歴史を遡って、実際に起きた出来事を撮影するだけと簡単な仕事になるはずだったのだが……。
三葉虫でバーベキューとか次第にバイキングの思考に染まっていくスタッフとか本番突入してしまうお色気担当女優とかネタを絡めつつ、ちゃんとタイムパラドックスとか歴史改変ネタを取り込んでいるところがお見事。
『この人を見よ』 マイクル・ムアコック(1969)
カール・グロガウアーはジェームズ卿がタイムマシンの試作品を完成させたとき、帰還の保証どころか生きて目的の時間に到達するかも定かでない実験に協力した。キリストが磔にされた十字架に異常な執着を覚えていた彼が選んだ目的の時代は紀元29年。キリストの磔刑を見ようとしたのだ。しかし、到着したのは1年前の紀元28年。タイムマシンは壊れ、しかもやっと見つけたイエスは救世主どころか白痴同然で、マリアは身持ちの悪い浮気性の女だった……。
1940年に生まれた男の30年の軌跡と、紀元28年の世界が交互に描かれる人生の漂流譚。エピック・ファンタジーの大御所、マイクル・ムアコックの代表作。
『時空の旅人』 眉村卓(1977)
下校時のスクールバスが未来世界からの逃亡者に乗っ取られた。特殊な装置を取り付けられたバスは即席のタイムマシンと化し、乗り込んでいた高校生男女や教師を巻き込んだまま一方通行の時間遡行を続けていく……。
歴史を修正しようという勢力が過去への介入を開始。歴史改変のターニングポイントとなるのは天正10年6月2日の本能寺の変……っていうコンセプトが特色。過去を改変できるものなら、改変することによってより良い未来が訪れるなら、それをやるのは正義じゃないの? そんなに核兵器で荒廃した世界が見たいのか?と。
『プロテウス・オペレーション』 ジェイムズ・P・ホーガン(1985)
原爆開発に先んじたナチス・ドイツは第二次大戦に勝利し、欧州、アジア、アフリカと勢力圏を拡大しており、最後の自由主義の砦であるアメリカ合衆国に勝利の希望はほとんどない。残された方法は、荒唐無稽ではあるが時間の流れを遡って1974年から1939年の世界に特殊部隊を送り込み、第二次大戦でドイツが勝利しなかった世界を作り出すことだけだった……。
時間改変ものもいろいろありますが、これは「歴史を正しい流れに戻す」話ではなく、「歴史を自分たちの都合の良いように改変する」のが目的の話。ハードSFミステリ『星を継ぐもの』でデビューして注目を浴びたJ.P.ホーガンの作品には、独創的なアイデアを軸に、人々の自由な思想や行動を抑圧しようとする専制的な勢力との対決を描いたものがほとんどですが、これも類といえるでしょう。
『クロノス・ジョウンターの伝説』 梶尾真治(1994)
住島重工は時間軸圧縮理論を利用した物質過去放出機、「クロノス・ジョウンター」の開発に成功した。だが、この機械は物質を過去に飛ばすことが出来ても長時間留まらせることが出来ず、しかも戻ってくるときには更に未来にはじき飛ばされるという重大な欠点があった。研究員であった吹原和彦は片思いの相手、蕗来美子がタンクローリー事故で亡くなったことを知り、彼女を助けるべくクロノス・ジョウンターに乗り込むのだが……。
物質過去射出機クロノス・ジョウンターというアイテムが中核になったラブストーリー。最初から欠陥機です。後にこれを原作に『この胸いっぱいの愛を』という映画が作成され、その映画をもとに梶尾真治がまた小説を書くという、まるでアリステア・マクリーンの『ナバロンの要塞』『ナバロンの嵐』みたいな展開になりました。
『昨日は彼女も恋してた』 入間人間(2011)
小さな離島に住む少年と少女は、道ですれ違うのもイヤなくらいに仲が悪い。そんな2人が、失敗ばかりの科学者の松平さんの助手として、何番目かのタイムマシンの実験につきあうはめになった。オンボロ軽トラを改造したタイムマシンに、今度もやっぱり失敗だと確信した2人だが、予想外に実験は成功。気がつけば2人は9年間前の世界にいた……。
ちょっとだけ昔。自分たちはこの先の未来をよく知っている……というところから始まって、いきなり衝撃的なラストで涙目。続編の『昨日は彼女も恋してた』と合わせてどうぞ。
『ニンジャバットマン』 神風動画(2018)
バットマンはゴリラ・グロッドの時空震エンジンの実験を食い止めようとするも既に手遅れ。アーカム・アサイラムにいたヴィランたちもろとも戦国時代の日本にタイムスリップしてしまう。だが、既にヴィランたちは各地の戦国武将と入れ替わっており、織田信長に成り代わった宿敵・ジョーカーがバットマンを倒さんと軍勢を差し向けていた……。
アメコミの代表作「バットマン」を日本でアニメ化した『ニンジャバットマン』。バットマシン大暴れから合体変形巨大ロボットまでやりたい放題の戦国時代。
最近の作品だとアニメ『T・Pぼん』になるかしら?
『タイムマシン』 H・G・ウェルズ(1895)
著名な科学者が時間が第4の次元であるという秘密を解明、時間移動装置を完成させると自らを実験台にして未来への旅行に出発したのだが、そこは紀元802701年の未来世界。人類は無能で知性に欠けているが平和で穏やかなイーロイと、獰猛な食人種族モーロックへと分化していた……。
時間旅行ものの古典にして原点。ここで過去ではなく未来へというパターンは意外に少ないかも(冷凍睡眠除く)。
『夏への扉』 ロバート・A・ハインライン(1957)
1970年12月。婚約者に裏切られ、仕事も発明も奪い取られてしまった男が30年後に蘇る冷凍睡眠を申し込んだ。再び甦生できる保証もない未来への旅に同行するのは猫のピートだけだったが……。
その冷凍睡眠で未来へ往き、そこからまた過去へ飛ぶのがこの作品。タイムマシンもののセレクトでこれを外したら怒られそうな、ベスト・オブ・SFといって常に上位に来るロマンティックSFで、ネコ小説で、一種の恋愛小説で、「あきらめるな。幸せをつかむためにがんばれ」という話。ルンバの原型が登場します。
『テクニカラー・タイムマシン』 ハリイ・ハリスン(1967)
倒産寸前の映画会社がみつけた金の玉子はタイムマシン。世に認められない天才科学者の発明を手に入れた会社は、これならセット代もエキストラの給金もタダだ!と大喜び。普通にセットをつくるより安い予算でタイムマシンを完成させ、歴史を遡って、実際に起きた出来事を撮影するだけと簡単な仕事になるはずだったのだが……。
三葉虫でバーベキューとか次第にバイキングの思考に染まっていくスタッフとか本番突入してしまうお色気担当女優とかネタを絡めつつ、ちゃんとタイムパラドックスとか歴史改変ネタを取り込んでいるところがお見事。
『この人を見よ』 マイクル・ムアコック(1969)
カール・グロガウアーはジェームズ卿がタイムマシンの試作品を完成させたとき、帰還の保証どころか生きて目的の時間に到達するかも定かでない実験に協力した。キリストが磔にされた十字架に異常な執着を覚えていた彼が選んだ目的の時代は紀元29年。キリストの磔刑を見ようとしたのだ。しかし、到着したのは1年前の紀元28年。タイムマシンは壊れ、しかもやっと見つけたイエスは救世主どころか白痴同然で、マリアは身持ちの悪い浮気性の女だった……。
1940年に生まれた男の30年の軌跡と、紀元28年の世界が交互に描かれる人生の漂流譚。エピック・ファンタジーの大御所、マイクル・ムアコックの代表作。
『時空の旅人』 眉村卓(1977)
下校時のスクールバスが未来世界からの逃亡者に乗っ取られた。特殊な装置を取り付けられたバスは即席のタイムマシンと化し、乗り込んでいた高校生男女や教師を巻き込んだまま一方通行の時間遡行を続けていく……。
歴史を修正しようという勢力が過去への介入を開始。歴史改変のターニングポイントとなるのは天正10年6月2日の本能寺の変……っていうコンセプトが特色。過去を改変できるものなら、改変することによってより良い未来が訪れるなら、それをやるのは正義じゃないの? そんなに核兵器で荒廃した世界が見たいのか?と。
『プロテウス・オペレーション』 ジェイムズ・P・ホーガン(1985)
原爆開発に先んじたナチス・ドイツは第二次大戦に勝利し、欧州、アジア、アフリカと勢力圏を拡大しており、最後の自由主義の砦であるアメリカ合衆国に勝利の希望はほとんどない。残された方法は、荒唐無稽ではあるが時間の流れを遡って1974年から1939年の世界に特殊部隊を送り込み、第二次大戦でドイツが勝利しなかった世界を作り出すことだけだった……。
時間改変ものもいろいろありますが、これは「歴史を正しい流れに戻す」話ではなく、「歴史を自分たちの都合の良いように改変する」のが目的の話。ハードSFミステリ『星を継ぐもの』でデビューして注目を浴びたJ.P.ホーガンの作品には、独創的なアイデアを軸に、人々の自由な思想や行動を抑圧しようとする専制的な勢力との対決を描いたものがほとんどですが、これも類といえるでしょう。
『クロノス・ジョウンターの伝説』 梶尾真治(1994)
住島重工は時間軸圧縮理論を利用した物質過去放出機、「クロノス・ジョウンター」の開発に成功した。だが、この機械は物質を過去に飛ばすことが出来ても長時間留まらせることが出来ず、しかも戻ってくるときには更に未来にはじき飛ばされるという重大な欠点があった。研究員であった吹原和彦は片思いの相手、蕗来美子がタンクローリー事故で亡くなったことを知り、彼女を助けるべくクロノス・ジョウンターに乗り込むのだが……。
物質過去射出機クロノス・ジョウンターというアイテムが中核になったラブストーリー。最初から欠陥機です。後にこれを原作に『この胸いっぱいの愛を』という映画が作成され、その映画をもとに梶尾真治がまた小説を書くという、まるでアリステア・マクリーンの『ナバロンの要塞』『ナバロンの嵐』みたいな展開になりました。
『昨日は彼女も恋してた』 入間人間(2011)
小さな離島に住む少年と少女は、道ですれ違うのもイヤなくらいに仲が悪い。そんな2人が、失敗ばかりの科学者の松平さんの助手として、何番目かのタイムマシンの実験につきあうはめになった。オンボロ軽トラを改造したタイムマシンに、今度もやっぱり失敗だと確信した2人だが、予想外に実験は成功。気がつけば2人は9年間前の世界にいた……。
ちょっとだけ昔。自分たちはこの先の未来をよく知っている……というところから始まって、いきなり衝撃的なラストで涙目。続編の『昨日は彼女も恋してた』と合わせてどうぞ。
『ニンジャバットマン』 神風動画(2018)
バットマンはゴリラ・グロッドの時空震エンジンの実験を食い止めようとするも既に手遅れ。アーカム・アサイラムにいたヴィランたちもろとも戦国時代の日本にタイムスリップしてしまう。だが、既にヴィランたちは各地の戦国武将と入れ替わっており、織田信長に成り代わった宿敵・ジョーカーがバットマンを倒さんと軍勢を差し向けていた……。
アメコミの代表作「バットマン」を日本でアニメ化した『ニンジャバットマン』。バットマシン大暴れから合体変形巨大ロボットまでやりたい放題の戦国時代。
最近の作品だとアニメ『T・Pぼん』になるかしら?