付け焼き刃の覚え書き

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「カリブ諸島の手がかり」 T・S・ストリブリング

2010-07-31 | ミステリー・推理小説
「世の中は不公平にも、富める者と貧しき者に分かれております。富める者に造幣局があるように、貧しき者には偽金造りがいるのです」
 聖品店主アンリ・トゥールの言葉。

 ヴァン・ダインの登場以前、ストリブリングが生み出した素人探偵ポジオリ教授の探偵譚の数々は世間一般の知名度は高くなかったけれど、エラリー・クイーンや有栖川有栖などが高く支持するプロ好みの逸品なんだそうな。

 アメリカ人心理学者が夏期休暇に訪れたカリブの島々で遭遇した、亡命中の元独裁者やヴードゥー教司祭らの奇怪な事件の数々。

 船旅の序盤でたまたま難事件を解決してしまったことから、新聞記事で噂が先回りして、行く先々で名探偵の役割を押しつけられるポジオリ教授。面倒だ、困ったことに巻き込まれたと嘆きつつ、大人物扱いされるのに気をよくしたりするあたりは小市民。
 イギリス紳士がお高くとまっている島もあれば、アメリカ軍が撤退して政情不安な島もあり、ヒンドゥー教の寺院に人々が集まる島もあれば、密林の奥地にヴードゥーの要塞ありと、多様なカリブ諸島を舞台にした、皮肉とユーモアに満ちた連作ミステリー。
 わあ、こりゃあ、すごいわ。

【カリブ諸島の手がかり】【T・S・ストリブリング】【河出文庫】【ヒンドゥー教徒】【クリケット】【犬】

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