付け焼き刃の覚え書き

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「カクレカラクリ」 森博嗣

2008-07-10 | ミステリー・推理小説
 中高生男子が夏休みの課題図書にすると良いと思った、工学バンザイな宝探しの物語。

「やっぱり、冒険よね。人生に必要なものは」
 真知花梨の言葉。

 廃墟マニアの大学生2人が手に入れたのは、美少女・花梨の携帯アドレス。
 廃炭坑のある寂れた村の旧家の出身である彼女が、旅行の間の宿を提供してくれるというのだ。
 それは花梨の気を引きたい栗城とそれを手伝おうという郡司による計画の成果ではあった。しかし、鈴鳴の村に着いた2人が遭遇したのはこの上もなく錆びついた廃工場、村中に設置されたカラクリ仕掛け、そして誰も正体は知らないけれど、120年前に天才絡繰り師が隠したという絡繰りの伝承だった。
 絡繰りは本当に存在するのだろうか……。

 古い因習が残り、没落しつつある2つの旧家が対立している村に、都会の大学へ通っている片方の旧家の跡取り娘が帰ってきたのは、おりしも120年前に隠された大カラクリが蘇るという噂のある年だった……という、横溝正史あたりが書くと死人が5人くらいは出て、最期は警察と村人総出の山狩りになりそうなシチュエーション。
 しかし、そうならないのが工学系ミステリに走る森博嗣。普通だったら、悲劇のヒロインか悪の華になりそうな旧家の長女が「やっぱり、冒険よね」で、その妹・玲奈が「黒いオイルが染みこんだスティールとか好き。ぞくぞくする」「大学に入ったら、絶対にロボットとか作って、メカに囲まれて暮らすんだ」。探偵役の大学生たちも廃工場に興奮し、錆びた鉄が好きという連中なので、いくら古い因習に縛られた村で対立する旧家の娘と息子がつき合おうと、曰くありげな人間が右往左往して屋敷の住人はほとんど姿を見せなかろうと、おどろおどろしい話にならないんですよねえ。
 そして、隠されたカラクリを探すにしても、アプローチはあくまで理詰めのアプローチというところがミソかな。
 2006年にテレビドラマ化。

【カクレカラクリ】【森博嗣】【山田章博】【講談社ノベルス】【An Automaton in Long Sleep】【スターリング・エンジン】

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