付け焼き刃の覚え書き

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「ひとりぼっちの異世界攻略」 五示正司

2018-02-27 | 異世界転移・召喚
「普通に無理に決まってるじゃん。どこの世界に森の中でサバイバルして生きていける高校生がいるの? いたとしても、そいつを普通って言わないよね? できることができればいいんだよっ、できないことまで全部やろうとするから無理なんだよ。オタたちのことで怒ってるかって? 怒ってるよ。全部なんてできないのにやろうとするオタたちにも、全員を救うなんてできもしないのにやろうとする委員長にも、できることすらしなかった屑にも怒ってるよ、呆れるのを一周回って怒ってるよ、できないものはできないに決まってんだろ?」

 突然光り、教室に浮かび上がる魔法陣。これはヤバイと咄嗟に逃げ出した遙だが、結局逃げ切ることはできず異世界転移するはめに。
 けれど、転移直前に教室から逃げ出していたために異世界で生きるためのスキル獲得競争に出遅れ、チートスキルは売り切れ。残り物の「ぼっち」「ひきこもり」「にーと」「木偶の坊」「器用貧乏」など不良スキルや称号をまとめて押しつけられ、魔物が跋扈する森の奥へと放り出されてしまう。
 その頃、チートスキルを手に入れて異世界転移したクラスメイト41人の中では、初っぱなから不協和音が鳴り響いていた……。

 最近多いクラス丸ごと異世界転移で、その中でも「強奪」「魅了」スキルとかあってクラスが仲違いする系統の話で、主人公は最弱でどん底に落ちるとこから始まる話なんだけれど、陰鬱とか重いとか殺伐としているという雰囲気があまりないのは、その負の部分を主人公が一手に引き受けて、しかもそれを語りの地の部分でほとんど見せないから。
 だから、一見能天気な異世界チート冒険譚に見えるのだけれど、客観的な委員長あたりの第三者視点になると「なんてことしてるのよ!」になっちゃうのだけれど、そのときには書かれていなかったデメリット、悲惨で陰惨な要素がすべてボケとツッコミに昇華されちゃうので、読む方はストレスフリーで受け止められるのです。
 そんな感じの最弱にして無敵のぼっちの冒険譚。連載している「小説家になろう」では、ついに注意をくらってノクターンに追い出されていますが、書籍版ではどこまでいくか(内容的にも刊行ペースでも)楽しみです。
 書籍化にあたって文章にもかなり手が入っていて「無い」とか「出来る」とか、つい変換しちゃうような言葉も「ない」「できる」にして読みやすくしていますが、「吃驚」は書籍でも「吃驚」なんでここはこだわりなんでしょう。それから「馬鹿」と「莫迦」を使いわけているあたりも、新井素子世代の自分にはストライクです。

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