「剣鬼転生～極めし剣は魔術を斬り裂く」 文月紲

「取り繕ったり理性で抑えたりするのも人の一部だが、本質は感情や欲望に宿る」
　なぜ人の目を気にするのだとクレイズは天才令嬢アルセリアに問う。

　魔術至上主義の世界で、魔力回路が欠けて魔術が一切使えない肉体に生まれたクレイズは、心配する家族にならば剣で生きると宣言した。確かに剣では魔術に勝てないと言われている。だから５年後に開催される祭典「アルカナ・エクリプス」でおこなわれる魔術大会、魔闘技で優勝したら認めて欲しいと、まだ５歳の少年は言い切った。
　確かに魔法に剣は不利だ。しかし、彼には前世の記憶があった。やはり同じ世界で、同じように魔術が使えない冒険者として死んでいたのだ。やり方は分かっている。今からなら前世より巧くできる……。

　魔術の使えない男の転生から始まり、王女救出から魔術大会の決着まで。
　魔術が使えることがなにより大事な社会で、しかもなにより体面を重んじる貴族の家にあって、魔術を使えない息子を決して両親は見放さないし、兄なんか弟が好きすぎておかしいくらいと、ここまで家族仲が良いのは珍しい話でした。

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