付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「俺、悪役騎士団長に転生する。」

2024-12-17 | 異世界転生
 傍若無人で傲岸不遜と悪名高い、第三騎士団長ジュスタン。その彼が前世を思い出したのは、魔物に襲われそうになっていた子供を目にしたから。7人の弟を世話する大学生だった前世では、弟をかばおうとして車に撥ねられ、そのときの光景と被さったのだ。
 身代わりになって攻撃を受けて気を失い、目覚めたときには周囲が騒然とするくらい性格が変わっていた。前世でやんちゃな弟を育てあげてきた持ち前の「お兄ちゃん力」が蘇ったのだ……。

 物語で処刑ルート直行の悪役騎士団長に転生したことに気がついた、最強“お兄ちゃん”の奮闘録。乱暴者の部下も含めて、お兄ちゃんっぽく、じっくり躾けてイメージ改善に努めます。 もともと素材が良いので、性格が良くなるとモテるんですよ。
 定番ネタではありますが、愉しくストレスフリーで一気に読めます。これ大事。

【俺、悪役騎士団長に転生する。】【酒本アズサ】【kodamazon】【カドカワBOOKS】【小説家になろう】【カクヨム】【お兄ちゃん力】【従魔契約】【スタンピード】【クッキー】
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「八犬伝(下)」 山田風太郎

2024-12-16 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「私は、正義は虚であっても、それをつらぬいて一生を終えれば、その人の人生は実となる。決して虚とはならん、と信じております」
 鶴屋南北の言葉に揺れ動く馬琴に、渡辺崋山は偽善でも善は善と訴えた。

 病弱だった息子の宗伯は早世し、馬琴は四谷へと引っ越ししていた。御家人株つきで古家が売り出されていたのだ。いずれ孫が成年に達した時に鉄砲同心の職を得られるかもしれないというのである。しかし、そのために蔵書を全て売り払い、長年嫌っていた金集めの書画会も開いた。
 そうして得たあばら屋で、馬琴は八犬伝の最終章の執筆を開始。しかし、そのときには彼の目はほとんど見えなくなっていた……。

 荒唐無稽であればあるほど人は面白がるが、一歩誤れば馬鹿馬鹿しさに失笑されてしまう。この紙一重が創作者の腕の見せ所ですが、晩年になって馬琴の筆は少しずつ衰え始め、設定などにも覚え違いが見られ始めます。現実と虚構のはざまを行き来する山田風太郎版「八犬傳」もこれにて幕。まさに栄枯盛衰。
 映画を観て、馬琴版と山田風太郎版と映画版でどう違うか比較読みもこれにてお仕舞い。端折りつつも映画は馬琴パートを概ねそのまま描いていますが、虚構パートはかなりエンターテイメント寄りに改変してます。そもそも馬琴は扇谷定正は失脚しても殺されるとは書いてないし、狸とか猫とか出番はなかったし。

【八犬伝(下)】【山田風太郎】【滝沢馬琴】【せがわまさき】【角川文庫】
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「八犬伝(上)」 山田風太郎

2024-12-15 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「だいたい絵入りの読物なら、絵は作者と同等だよ」
 前作「椿説弓張月」のとき、北斎は馬琴の指定に従わず、話にないものまで描き込んだが、「さし絵は作者のそえものではない」と開き直った。

 曲亭馬琴は訪問した葛飾北斎に、構想中の次回作の冒頭あらすじを語って聞かせた。南総里見家の姫に懸想する犬が敵将の首を取り、褒美に姫を妻として山に連れ去るところから始まる伝奇小説で、その姫の死によって全土に飛び散った儒教における八種の徳、仁義礼智忠信孝悌いずれかの文字が浮き出る珠を手にした若者たちが、紆余曲折の果てに巡り会う大河絵巻だ。
 話を聞いて面白いという北斎だったが、挿絵を描いて欲しいという頼みだけは頑として引き受けなかった……。

 滝沢馬琴の『南総八犬伝』の執筆風景を、その物語の概要や見せ場を再話する「虚」のパートと、馬琴と北斎、馬琴を取り巻く人々との関わりを描く「実」パートの二部構成で語る、「虚」と「実」の物語。『シン・ゴジラ』は「現実 対 虚構」だったけれど、こちらは「虚実はあざなえる縄のごとし」かな。

【八犬伝(上)】【山田風太郎】【滝沢馬琴】【せがわまさき】【角川文庫】
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「八犬伝」 原作:山田風太郎

2024-12-14 | 本屋・図書館・愛書家
「悪も勝つこともあるこの世の中だからこそ、別の世界を読者には味わってもらいたい」
 勧善懲悪、善因善果、悪因悪果が曲亭馬琴の作品作りの根底なのだ。

 滝沢馬琴は人気絵師の葛飾北斎に構想中の新作について語った。第三者として北斎の率直な感想が聞きたかったのだ。
 北斎はこんな面白い話はなかろうと絶賛するが、その挿絵を担当することは拒否した。どうせ馬琴があれこれ注文つけたり文句を言うから面倒くさいというのだ。そして、話を聞き終えた勢いで描き上げた渾身の挿絵3枚を、馬琴にチラ見せするや破り捨てた。
 このやりとりが、以後の彼らの交流スタイルとなった……。

 夫婦2人で、山田風太郎原作、役所広司主演の『八犬伝』を観てきました。妻は「八犬伝」といったらNHKの人形劇『新八犬伝』がまず脳裏に浮かぶ世代で、自分は直近で読んだのが鎌田敏夫の『新・里見八犬伝』で、忍法帖が混ざってよく分からなくなっているありさまでしたが、とにかく堪能できました。馬琴と北斎のやりとりに魅入られながらの2時間半。虚実のいずれが真なるやという創作論を軸に、親子・家族のあり方が混じり合いながら、南総里見八犬伝の名シーンが映し出されていきます。いや、『南総里見八犬伝』は書籍もコミックも多けれど、抄訳と翻案もので頭がぐちゃぐちゃ。なので山田風太郎版の八犬伝がどこまで原作に忠実で、それを映画がどこまでなぞっているか分かりませんけど(少なくとも結末は違います)。
 本というのはイラストが大事とか、原稿は上がっていても出版社の都合で刊行が遅れるとか、最近イラストレイターの原稿が遅れているとか、今でもよく聞く話でございますね。現実と物語とどちらか虚か実かとか、創作者にとってのテーマはいかにあるべきかとか、しっかり調べても面白さ優先で史実とかに嘘を交えても赦されるとか、やはり読者の生の感想は嬉しいとか、創作論が語られる曲亭馬琴パートと、どちらかというと2.5次元ののりで派手なアクションが繰り広げられる八犬伝パートが交互に語られます。
 難点は犬とか船とか、ときどきCGの出来に甘さが見えること。いちばん怖かったのは、芝居と現実いずれが真なるやと頭上から語りかける鶴屋南北。正直、このシーンだけで来た甲斐は合ったと思いました。

【八犬伝】【曽利文彦】【役所広司】【山田風太郎】【キノフィルムズ】【[虚]と[実]が交錯する前代未聞のエンターテインメント超大作】【内野聖陽】【土屋太鳳】【渡邊圭祐】【鈴木仁】【板垣李光人】【水上恒司】【松岡広大】【佳久創】【藤岡真威人】【上杉柊平】【河合優実】【小木茂光】【丸山智己】【真飛聖】【忍成修吾】【塩野瑛久】【神尾佑】【栗山千明】【中村獅童】【尾上右近】【磯村勇斗】【立川談春】【黒木華】【寺島しのぶ】【鉄砲】【四谷怪談】【赤穂浪士】【渡辺崋山】【鶴屋南北】【あれは、絵になる】
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「弟子入りした天才魔法使いが実は娘だったんだけど、どうしたらいい?1」

2024-12-13 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 アラフォー剣士のラルフはスキルが伸び悩んでいる博打打ち。ギルドからはクビにされ、借金がたまってにっちもさっちもいかない。そんな彼に新進気鋭の冒険者ギルドが目をつけた。実は彼の素質は魔導士にあったのだ。
 いずれ魔王に挑むと豪語する〈虹孔雀〉は女性魔導士ばかりのギルド。そんなギルドにスカウトされ、偉大なる魔導士を目指して人生やり直しだ!と意気込むラルフだったが、彼の師匠として任命された12歳だという赤毛の少女の本名を知って呆然とした。真名はゾフィ・リリンダ・ダンバース。名前に覚えがある。昔、ダンバース伯爵家の女と知り合った時に、生まれてくる子の名前として考えていたものだ……。

 魔力鑑定の水晶玉を割ってしまって「なんかやっちゃいました?」モードから始まる人生やりなおし譚。
 実の娘に父親だとも言えず、そのもとで修行を重ねていくダメ人間の成長物語……かな? 序盤の展開だと、こいつ絶対性根は腐ったままだと思ったもの。この巻だけでとりあえず人並みまでは戻った感じです。
 ここで登場するマンティコアの設定は独特。怖いモンスターです。TRPGなら強さの設定変更が容易でマスターの使い勝手が良さそうです。

【弟子入りした天才魔法使いが実は娘だったんだけど、どうしたらいい?1】【R・S・ムスカリ】【このいけ】【HJ NOVELS】【師弟で親子な二人が織り成す、人生大逆転ファンタジー】
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「デスマーチからはじまる異世界狂想曲 (31) 」 愛七ひろ

2024-12-12 | VRMMO・ゲーム世界
 デジマ島の迷宮で魔王と戦ったサトゥーたちが出会った謎の幼女は、迷宮核(ダンジョンコア)の予備システムの擬体(アバター)のコアツーだった。壊れた迷宮核を修復できれば新たな迷宮が創れるという。折良くか悪しくかサトゥーたちは夢幻迷宮崩壊の濡れ衣を着せられて、鼬王国を退去処分になってしまったので、これ幸いとシガ王国に戻って迷宮核の修復を始めた。
 しかし、そんなところに持ち込まれたのは鼬王国の秘密都市に眠る神器を奪還して欲しいというザイクーオン神殿からの依頼だった。どことも分からない秘密都市を求め、サトゥーたちは再び鼬帝国に向かうのだが、今度はもちろん密入国である……。

 神の怒りも怖れぬ科学技術が導入される一方、信仰を捨てられない住民は逃れようもない隔離都市に押し込められたり、そうでない都市でも住民の管理はきっちりしていて……というディストピア探訪編。
 最近はミツクニ女公爵やナナ姉妹たちの外伝がお気に入りです。続きが愉しみ。

【デスマーチからはじまる異世界狂想曲(31)】【娘さん達と二人の勇者】【愛七ひろ】【shri】【カドカワBOOKS】【ほのぼの異世界観光記】【ほのぼの】【チート】【異世界観光】【グルメ】 【魔王殺し】
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「転生ババァは見過ごせない!2」 ナカノムラアヤスケ

2024-12-11 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「若者は常に浪漫を目指してなきゃ駄目だよ」
 ラウラリスは行動を共にすることになった謎の男、ケインにそう忠告した。

 ギルドに所属せず、フリーの賞金稼ぎをしながら旅をするラウラリスだが、おかしな連中に出くわしてしまった。少女を誘拐するテロリスト“亡国を憂える者”、300年前に滅んだエルダヌス帝国を憂い、最後の皇帝ラウラリスを奉じ、その復活を画策する秘密結社だ。そんな莫迦な連中が出ないよう、徹底的に潰したはずだが取りこぼしがあったらしい。
 このテロリスト集団は片づけておかないといけないねえと覚悟するラウラリスに、とある仕事を持ちかける謎の男がいた……。

 転生ババァが皇帝復活を企む悪の組織を壊滅させんと大立ち回り。その周囲で蠢く謎の組織、“獣殺しの刃”とは!?という2巻。単純明快、サクサク進む痛快活劇です。

【 転生ババァは見過ごせない!2~元悪徳女帝の二周目ライフ~】【ナカノムラアヤスケ】【タカ氏】【レジーナブックス】【アルファポリス】【最凶少女のスカッとファンタジー】 【コスプレショップ】【怪盗ラウラリス】
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「クズ勇者のその日暮らし」 珍比良

2024-12-10 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「ガルはさぁ、やればできる子だと思うよ?」
 淵源踏破の勇者シンクレアは、魔王退治も人々を救うことも放棄した弟を励ますのだが……。

 勇者三姉弟の末っ子ガルドは、魔王退治を放棄した。報酬なし、休暇なしのやりがい搾取で、魔王退治も王国のプロパガンダにすぎないのに、そんなものにつき合う理由はない。彼らは奴隷じゃないのだ。
 あるときは鉄級冒険者のエイトとして、またあるときはモグリの鑑定師のイレブンとして、ガルドは名前を変え、顔を変え、勇者であることを隠しては楽して金儲けできる方法をアレコレ考えているのだ。彼の使うは多種多様な補助魔法だ。あらゆる魔法を使いこなす姉とか、武術の達人の姉とかと違い、彼が使えるのは補助系だけなのだ……。

 人は死ねば光の粒になって消える世界で、ただ女神からそのまま死ぬことを赦されず、即座に復活を約束されている勇者の死に戻り悪行録。いろいろドロンボー一味みたいなインチキ商売に邁進しては露見して捕まって斬首されるまでがお約束。長距離移動するときには自分の首をかききるくらいは日常なので、死んでも復活するのをいいことにリスクを恐れぬやり口で事業を拡大したり、エルフに自分の臓器を売ったりとやりたい放題していきます。

【クズ勇者のその日暮らし】【珍比良】【山椒魚】【TOブックス】【使命を捨てた(!?)ゲス勇者の気ままな拝金ファンタジー!】【小説家になろう】【カクヨム】【ギロチン】
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「同人エロゲの鬼畜皇太子に転生した喪男の受難2」 サンボン

2024-12-09 | 異世界転生
 鬼畜系同人エロゲの主人公に転生したルートヴィヒは、ゲームではどう転んでも発生する死亡エンドを回避するために醜い脂肪を圧縮し、紳士的な皇太子を演じているのだが、見た目や言動に反して醜いオーク呼ばわりされる事は少なくない。それでも、ゲームでは陵辱することになるヒロイン達とは仲良くなっている。
 そんなルートヴィヒが期末試験の実技でペアを組む事になったのは、何かと悪い噂のあるイスタニア魔導王国の第一王女カレン=ロサード=イスタニア。ゲームでは〈魔砲使い〉で知られるメインヒロインの1人で、彼女は密かに魔導兵器に改造されていた……。

 カレン王女と出会って魔導王国の暗部を垣間見る期末試験編と、懐かれたジル先輩の国、死の商人と呼ばれる海洋王国ガベロットに遊びに行って王位継承争いに巻き込まれる海洋国家編の2つがメインイベントで、合間には並み居るヒロインではなくメイドのイルゼと愛を確認しつつイチャイチャしてます。

【醜いオークの逆襲2~同人エロゲの鬼畜皇太子に転生した喪男の受難】【サンボン】【ゆか】【Mノベルス】【醜いオークの逆襲~全編バッドエンドしかない鬼畜系同人エロゲの鬼畜皇太子に転生したけど、喪男の僕に鬼畜プレイは無理ゲーなので、フラグを折って生存できるように頑張ってみる~】【小説家になろう】【カクヨム】
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「異世界道楽に飽きたら7」 三文烏札矢

2024-12-08 | 異世界転移・召喚
 「働いたら負け」という言葉に強く共感する中年男だが、最近少し働いても良いかなという気がしている。それに身分証明書が無いと自由な旅人のつもりでいても、客観的に見ればただのプータローである。冒険者ギルドに登録すれば、余計なしがらみにとらわれず身分証明書が作れる!くらいの気持ちだったのだ。
 しかし、謎の忍者クロスケと名乗って登録に来た胡散臭い中年男、そもそも仕事をする気のない男を、冒険者ギルドの受付嬢ミランダは言葉巧みに誘導して塩漬け案件の依頼を引き受けさせていく。クロスケ様ならできる簡単な仕事だからと。
 ミランダのスキルは〈適材適所〉。そして彼女はクロスケことグリンの面倒くさい性格を見抜いていた。彼が目立たぬよう、仕事をさせすぎて機嫌を損ねて逃げ出さないよう、ギルド内外に彼の功績を隠して面倒ごとから守り続けているのだ……。

 冒険者ギルドへの依頼には難易度と報酬がつり合わないなど受け手のいない死蔵案件がちらほらあって、そういう依頼を巧みに処理していく受付嬢の物語。貧しい子供が親のための薬草を採りに森に行くから護衛してくれといっても危険ばかりで報酬はないも同然。でも放置は人情的にできないよね……という回です。
 中年男のチートぶりはいつもの通り。破格の高レベルに無尽蔵の高性能アイテムの数々。でも、それだけだと単純に「強いので全部上手くいきました」で終わってしまう話を、間にギルドの受付嬢を介在させることでくるんとひとひねりした展開となりました。まさに飽きさせずに読ませる回です。にんにん。

【異世界道楽に飽きたら7】【三文烏札矢】【ともぞ】【ヒーロー文庫】【主婦の友社】【冴えない三十男の自由気ままな道楽物語】 【小説家になろう】【防災プラン】
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「魔王を斃した後の帰り道で」 榊一郎

2024-12-07 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人の心は分からない。時には本人でさえも。打算があろうとなかろうと。だから常日頃から正しき行いをしなさいと……たとえ偽善でも続ける事で本当の善になる事もあると」
 アラン・ブリンドルの教え。

 勇者ユーマと5人の仲間、弓手ジャレッド、僧侶グレアム、魔術師ラウニ、聖騎士レオナ、斥候兵ボニータはついに魔王を倒した。魔王は魔物たちをこの世界に呼び寄せる門であり、魔王討伐によってこの世界に送り込まれていた魔物はすべて消えた。大団円だ。
 しかし、その帰路でジャレッドが仲間から抜けて消えたとき、ユーマは自分が命懸けで冒険をしてきた仲間達の事を何も知らない事に気がついた……。

 魔王を斃した勇者が仲間達のことを何も知らなかったことに気がつき、お互いの身の上話をしながらの帰り道での物語。フリーレンみたいな物語をやりましょうと編集者に言われて書いた話だそうです。ストーリーはぜんぜん違いますがコンセプトは同じですね。結局、今さらどうにもならないよね……というところから、それにどう向き合うかという話になります。

 そして誰もいなくなった……。

【魔王を斃した後の帰り道で】【榊一郎】【芝】【富士見ファンタジア文庫】【『英雄』の喪失と再生を描くエンディングファンタジー】【ニンゲンモドキ】
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「プレイした覚えもないゲーム的な世界に迷い込んだら2」 なるのるな

2024-12-06 | 異世界結合・ゲート・ゾーン

 どうもこの世界はゲームらしいが、彼はそんなゲームは見たことも聞いたこともない。
 ただ、自分がプレイヤーと呼ばれる存在で、そのような存在は他にもいるのだが、ダンジョン内で死ぬと意識も能力もそのままにボスキャラクラスのNPC〈プレイヤーの残照〉として再利用されるらしい。それは6年前にダンジョン内で死んだ探索者、坂城仁の残照と話をして分かったことだ。坂城は言う。巧く自分を斃してくれと。
 そして、この世界が本当にゲームそのままであることは、新しいメンバーの新鞍怜央から教えられた。「君は“原作”をどこまで知っているの?」と……。

 ダンジョン攻略の先も見えず、ダンジョンを生み出したものの悪意ばかり伝わってくる間も、攻略者側での内輪もめが続きます。ダンジョンという可能性の塊に対しての、政府や理事会内部の権力闘争です。そして予想通り、ウォーモンガーの教官はあっさり裏切りました。

【プレイした覚えもないゲーム的な世界に迷い込んだら2】【なるのるな】【pupps】【Kラノベブックス】【ダンジョンのあるゲーム的世界に迷い込んだ話】【カクヨム】【小説家になろう】
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「役目を果たした日陰の勇者は、辺境で自由に生きていきます3」 丘野優

2024-12-05 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「勇者パーティーというのは……今はまだ誰も信用していないが、いずれ魔王を討伐するパーテイーだ。だから、世界の希望なんだ。世界の希望が、そういう小さな頼みをくだらないからと一々拒否していたら、なんだか格好悪いだろう」
 ユークたちが行く先々で人々の些細な頼みに応えているのを不満に思ったクレイに、他のメンバーが告げた言葉。

 クレイがエルフに助けを求められ、枯れかけている聖樹を救うのに必要なアイテムを求めて辺獄の奥にある獣人の集落を訪ねていた頃、王都から勇者ユークと賢者テリタスが辺獄最寄りのエルメ村まで辿り着いていた。約束通り、クレイのもとに遊びにきたのだ。
 しかし、クレイとフローラが村に帰還した時、そこで彼らを出迎えたのはユークとテリタス、そして見知らぬ男、魔王の四天王最後の1人だった。

 勇者たちが魔王討伐した後の、ささやかな後始末の日々の物語。
 獣人の村でこの巻は終わりかと思いきや、ぽんぽんとミッションをクリアして聖樹編のくぎりがつくところまで話が進みました。

【役目を果たした日陰の勇者は、辺境で自由に生きていきます3】【丘野優】【布施龍太】【グラストNOVELS】【引退した真の勇者の自由気ままなセカンドライフ】 【荷物運び】
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「TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す10」 Schuld

2024-12-04 | 異世界転生
「難しい事は考えず、やりたいようになさって下さいな。私はいつだって貴女の背中についていますから」
 臥所でエーリヒに囁くマルギット。

 造成魔術師として巡検していたミカがマルスハイムにやってきた。この街の魔導院出張所に派遣されてきたのだ。そのミカと同じ隊商でエーリヒを婿にしたいと馬肢人のディードリヒもやってきた。
 親友のミカの来訪になにもないマルスハイムを案内して廻るエーリヒだったが、そんなときに組合から軍の物資輸送馬車の警護依頼が剣友会に舞い込んだ。西方貴族に皇帝陛下が記念品を配るということで、魔導院が用意した走行馬車を中核に何十台もが列を連ねる大規模輸送だ。
 西方の政情不安な折にわざわざ行うことではないと、胡散臭さに剣友会の命運を賭けて全力であたることを覚悟したエーリヒ。彼はシティーアドベンチャーもシャドウランも好きだったけど、今はそういうものを求めているわけじゃないのだ……。

 世界はまるでTRPGの卓のようだ。それなら今の状況はクソ卓だという『ヘンダーソン氏の福音を』も10巻。魔導師の弟子としててんてこまいのエリザの日常から始まり、締めのヘンダーソン・スケール2.0は帝国や土豪のやり方に腹を立てたエーリヒがアグリッピナ師にチクった場合の後始末からの超展開です。このルートでも良かった気がしますよ。
 分厚いけれど一気読み。これで感覚的には長めのシナリオ1本分です。

【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す10 ~ヘンダーソン氏の福音を~】【Schuld】【ランサネ】【オーバーラップ文庫】【WEB発データマンチ冒険譚】【小説家になろう】
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「Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 Side Stories」 之貫紀

2024-12-03 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
「地球の文化的多様性は、ちょっとおかしい」
 それがダンつくちゃんの感想。

 秋葉原の街におかしな三人組が降り立った。背中に「アキバ一周カレー行脚」の文字を背負った大富豪令嬢のアーシャとお付きの者2名である。
 前々からの約束通り、アキバの街を観光しつつ名物カレーを食べまくろうという企画なのだが、インド系美少女が不可思議なコスチュームで徘徊しているということで、その姿は早速にネット民に補足されていた……。

 『Dジェネシス』の8巻までのオマケでネットに期間限定でアップされていた外伝を、リライトして解説とか付け加えた短編集です。本文なくても解説はつきます。あのカレーのお姫様編も収録。正直、アキバ一周カレー行脚の話がいちばん好き。意外なキャラたちがいかにも外伝っぽくて良いです。
 ちなみにクネルはよく行くフランス人シェフのカフェのランチでいただきました。

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