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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

東京奇譚集

2013-04-04 21:31:11 | 村上春樹
村上春樹 2005年 新潮社
なるべく順番に読み返してる村上春樹。
近々、新作も出版されるみたいだけど。
これは、長編「海辺のカフカ」(こないだ読み返した)、中編「アフターダーク」のあとに出た、短編集。
「偶然の旅人」
ゲイのピアノの調律師と、書店のカフェ(あるのだ、そういうものが)で出会った小柄な女性を中心にした話。
「ハナレイ・ベイ」
息子がサーフィンをしているときに鮫に襲われて死んだ、ピアニスト・サチの話。
これ、いい。読み返すまで忘れてたけど、すごくいい短編。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
失踪した夫を探す相談を受けた「私」の語る話。
マンションの24階に住む義母のところから、自分のウチである26階まで上がる、階段の途中で彼は行方不明になってしまったと思われる。
「日々移動する腎臓のかたちをした石」
主人公の淳平は小説家。父から「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない」という哲学を言い渡される。
31歳のときに出会った年上の女は魅力的だった。何をしてるかわからない、とてもミステリアスな感じの彼女。
彼女とのベッドの中での会話で、淳平は、腎臓のかたちをした石を拾って持ち帰る医師の話を、小説のネタとして考えていると、持ち出す。
「品川猿」
日常的な場面で、突如自分の名前が思い出せなくなるという現象に悩まされる、安藤(旧姓:大沢)みずきさんの話。
夫にも相談できない、そんな自分の症状に悩んでいる彼女は、品川区役所の「心の悩み相談室」に行って、カウンセラーと相談しているうちに解決に近づく。
…って、なーんか独特の短編ばっかり。ちなみに、著者:村上春樹氏は、インタビュー集「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」のなかで、この短編集について、「いくつかのキーワードをざあっと紙に書き並べて、そこから三つずつ選んで、それをもとにひとつの短編を書くという作業をやっていたと思います」って言ってる。いわゆる“三題噺”か。それで、こんな面白いものが書けるんだから、すごいんだけど。
コメント
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