カミュ 佐藤朔・窪田啓作訳 昭和43年 新潮文庫版
古い文庫を出してきた。持ってるのは昭和57年の21刷。
ほんとにこんなむずかしいもの、読んでたのかな、俺?って気がする。
だって、おもしろくなかったから、その後読み返したりしてないもんw
「転落」は、アムステルダムの酒場で、かつて弁護士だった男が、自らの過去を、五日間にわたって、見知らぬ相手(というか読者?)に告白する形式。
ところどころに警句じみたおもしろい言い回しがでてくる。
>未来の歴史家はわれわれについてどう言うでしょうかね。近代人についてはただの一句で十分、つまり近代人とは姦通し、新聞に読みふけったとね。
とか、
>白状しにくいことだけど、可愛い踊り子と最初のあいびきをするためなら、アインシュタインとの十回の会議を棒に振ってもいい。あいびきが十回目だったら、アインシュタインと会いたくなるし、猛然と本でも読みたくなる。
とか、
>(略)実際は役所に登録した遊蕩にすぎないある種の結婚は、同時に、大胆と創意を葬る単調な霊柩車と化してしまう。
とか、
わたしの知合いで、人間を三種類に分類しているやつがいましたっけ。第一は嘘をつかざるを得ないくらいなら、隠しごとをいっさい持たないほうがいいと考えるやつ、次はなにも隠しごとがないよりも、嘘をつくほうがましだと思うやつ、最後は嘘をつくのも、隠すのも両方好きなやつ。
とかね。
「追放と王国」のほうは、「不貞」「背教者」「唖者」「客」「ヨナ」「生い出ずる石」の六つの短編からなる短編集。
どれも、どことなく暗い。若いときは、こういう暗い話が好きだったんだろうな、私は。なんか、そのほうが文学っぽいもんな、いかにも。
超ひさしぶりに読み返してみたら、私の記憶のなかで、「背教者」と「生い出ずる石」が混濁しておぼえてたことに気づいた。
前者は、若い宣教師がアフリカに布教にいくんだが、捕らえられて、あまつさえ舌を切られ、土地の神を崇めるように強制される。(ほら、暗い。)
後者は、ヨーロッパ人の技師がブラジルに行ってて、そこで原住民の男の信仰を扶けるんだけど、自身は信仰はもたない。
後者にある、腕組をやめろ、身体をしめつけていると、精霊が降りてくる妨げになる、という箇所が、私は前者のワンシーンだとばっかり長年記憶してたことになる。
読み返してみて、いちばん気に入ったのは「ヨナ」
才能のある画家なんだけど、取り巻きがなんだかんだと増えて、思うように仕事がしにくくなる話。
このラストシーンなんかが、なんか似たテイストのものを、小説だったかマンガだったかわかんないけど、その後読んだような気がするんだが、なんだったか思い出そうとしても出てこない。
(こういうとき、トシを感じるんだよねえ。単なる物忘れぢゃなくて、連動するべき記憶力の減退。)
なんとなく、諸星大二郎的な感じもする、ただの漠とした印象だけど。
古い文庫を出してきた。持ってるのは昭和57年の21刷。
ほんとにこんなむずかしいもの、読んでたのかな、俺?って気がする。
だって、おもしろくなかったから、その後読み返したりしてないもんw
「転落」は、アムステルダムの酒場で、かつて弁護士だった男が、自らの過去を、五日間にわたって、見知らぬ相手(というか読者?)に告白する形式。
ところどころに警句じみたおもしろい言い回しがでてくる。
>未来の歴史家はわれわれについてどう言うでしょうかね。近代人についてはただの一句で十分、つまり近代人とは姦通し、新聞に読みふけったとね。
とか、
>白状しにくいことだけど、可愛い踊り子と最初のあいびきをするためなら、アインシュタインとの十回の会議を棒に振ってもいい。あいびきが十回目だったら、アインシュタインと会いたくなるし、猛然と本でも読みたくなる。
とか、
>(略)実際は役所に登録した遊蕩にすぎないある種の結婚は、同時に、大胆と創意を葬る単調な霊柩車と化してしまう。
とか、
わたしの知合いで、人間を三種類に分類しているやつがいましたっけ。第一は嘘をつかざるを得ないくらいなら、隠しごとをいっさい持たないほうがいいと考えるやつ、次はなにも隠しごとがないよりも、嘘をつくほうがましだと思うやつ、最後は嘘をつくのも、隠すのも両方好きなやつ。
とかね。
「追放と王国」のほうは、「不貞」「背教者」「唖者」「客」「ヨナ」「生い出ずる石」の六つの短編からなる短編集。
どれも、どことなく暗い。若いときは、こういう暗い話が好きだったんだろうな、私は。なんか、そのほうが文学っぽいもんな、いかにも。
超ひさしぶりに読み返してみたら、私の記憶のなかで、「背教者」と「生い出ずる石」が混濁しておぼえてたことに気づいた。
前者は、若い宣教師がアフリカに布教にいくんだが、捕らえられて、あまつさえ舌を切られ、土地の神を崇めるように強制される。(ほら、暗い。)
後者は、ヨーロッパ人の技師がブラジルに行ってて、そこで原住民の男の信仰を扶けるんだけど、自身は信仰はもたない。
後者にある、腕組をやめろ、身体をしめつけていると、精霊が降りてくる妨げになる、という箇所が、私は前者のワンシーンだとばっかり長年記憶してたことになる。
読み返してみて、いちばん気に入ったのは「ヨナ」
才能のある画家なんだけど、取り巻きがなんだかんだと増えて、思うように仕事がしにくくなる話。
このラストシーンなんかが、なんか似たテイストのものを、小説だったかマンガだったかわかんないけど、その後読んだような気がするんだが、なんだったか思い出そうとしても出てこない。
(こういうとき、トシを感じるんだよねえ。単なる物忘れぢゃなくて、連動するべき記憶力の減退。)
なんとなく、諸星大二郎的な感じもする、ただの漠とした印象だけど。