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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

シャーロック・ホームズの叡智

2015-01-09 21:01:02 | 読んだ本
コナン・ドイル/延原謙訳 昭和30年 新潮文庫版
私の持ってるのは昭和55年の44刷。
新潮文庫のホームズものだが、作者のドイルはこんな名前の短編集は出してない。
原典どおりに翻訳を出すと文庫本が厚くなるからという理由で(?)、出版社が勝手に間引いちゃった短編を最後に寄せ集めて一冊にしたもの。
困るなあ、そういうことをされては。元の構成で並べる順番もたがわずにまとめてくれないと。
以下は本書のコンテンツだけど、うしろに括弧書きしたのは本来の短編集に入ってた位置。
「技師の拇指」(「冒険」の9番)
知人が連れてきた急患をみるワトスン先生。その推力技師は片手の親指を根元から切られていた。
手当をすましたあと、その患者はホームズに、自分がまきこまれた奇怪な事件について語る。
「緑玉の宝冠」(「冒険の11番)
あるとき取り乱してホームズのもとへ相談にきたのはロンドンの銀行の重役。
さる高貴な人物に至急の現金の融資を頼まれ、担保として預かったのは国宝の宝冠。
金庫に置くのも不安で自宅へ持ち帰ったが、夜遅くなって物音で起き出すと、そこにはカネの無心ばかりする息子が、一部が壊れた宝冠を持って立っていたので、取り押さえたのだという。
「ライゲートの大地主」(「思い出」の6番)
ワトスンは過労で倒れたホームズをつれて、田舎住まいの知り合いのところへ静養にいく。
しかし、そこではコソ泥騒ぎにとどまらず、殺人事件まで起きてしまい、二人は巻き込まれる。
捜査の途中で、現場に集まった人々の目くらましに、いろんな手をつかうホームズの動きがおもしろい一作。
「ノーウッドの建築師」(「帰還」の2番)
事件がなくて退屈していたホームズのところへ、血相を変えて駆け込んできて助けを求める青年弁護士。
ノーウッドの建築師から遺産を譲り受ける書類を作成したが、翌朝には放火殺人の容疑をかけられる。
あらゆる状況が青年に不利にはたらき、こんどこそはレストレード警部に軍配があがるかと思いきや、最後に真相をあぶりだすホームズの手際がおもしろい一作。
「三人の学生」(「帰還」の9番)
奨学金試験のギリシャ語の試験問題が机の上に置かれていたところ、誰かが不正に盗み見ていた。
容疑は三人の学生にかけられるが、不祥事が表ざたにならぬうちに犯人を見つけてほしいと依頼されたホームズ。
鉛筆の削りかすとか机の上のひっかき傷などの物証を分析して、比較的円満に解決する。
「スリー・コータの失踪」(「帰還」の11番)
ケンブリッヂ大学の優秀なスリークォーターバックが理由も言わずにいなくなったと、チームの主将が相談にくる。
捜査線上にレスリ・アームストロング博士という医師が浮上するが、ホームズいわく“本人さえその気になればモリアティ教授の後釜になれるほどの人物”という手ごわい相手で、追跡は難航する。
「ショスコム荘」(「事件簿」の11番)
ショスコム荘の調教師長が、雇い主のサ・ロバート・ノーバトンがおかしい、妹の愛犬もよそへやってしまったと相談に来る。
サ・ロバートは借金で首がまわらない状態だが、ショスコム・プリンスという馬で今回のダービを勝つチャンスがある。
どうでもいいけど、ホームズに「君は競馬のことをいくらか知っているかい?」と訊かれたワトスンが、「知らなくってさ。僕は戦傷者年金を半分はそれに注ぎこんでいるよ」と答えるのが、意外であり頼もしい。
「隠居絵具師」(「事件簿」の12番)
美術用材料製造業を引退して隠居生活をしていた老人がホームズに相談してきた。
年下の妻が自分のチェス相手の医師と出奔、資産も持ち逃げ、行方がわからないという。
ホームズの代わりにワトスンが現地に赴くが、ホームズは何かウラ事情があると疑いをもっている。
どうでもいいけど、チェスが強い人物に対して、「計画的才能の一つの現れだね、ワトスン君」という評をくだすんだけど、それは短絡的すぎるんぢゃないかと思う。東洋では「碁は別智」というからねえ。
コメント
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