many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

笑う未亡人

2016-10-06 21:07:36 | 読んだ本
ロバート・B・パーカー/菊池光=訳 2007年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
むかしむかしは新刊出たら飛びついて読んでたんだけど、やがてほっぽりだして顧みなくなり、いまになって最後まで順に読めないだろうかとトライしている、スペンサー・シリーズ。
これは今年になって古本を見つけたやつかな、原題は「Widow's Walk」、えーとカウント間違いしてなきゃ第29作目。
依頼人は、これまでも出演してきたことのある、女性弁護士リタ・フィオーレ。
ちなみに、スペンサーの恋人スーザンにいわせると、リタは「自堕落女」「ミス・捕食」「赤毛のふしだら女」、ということで露骨に短いスカートから脚を見せるようなキャラ。
リタが弁護を引き受けてるのが、メアリ・スミス。夫の銀行家ネイザン・スミスの殺害容疑。
メアリは23歳のとき51歳のネイザンと結婚、いま夫婦生活7年目を迎えて30歳。
被害者は、自宅の寝室で頭を銃で撃たれて死んでいた。それに対して、妻のアリバイの主張は、わたしは階下の部屋でテレビを見てて、何も聞かなかった。
そんな発言に限らず、とにかく彼女はバカ、警察もスペンサーも弁護士も、ホント彼女と話すとイライラするくらいヤんなる間抜け。
ふつうに考えられる遺産以外にも、夫が一千万ドルの生命保険に入ってたこともわかり、ますます動機がある疑いは増すんだけど、そうとだけも言ってらんないんで、スペンサーは彼女の渉外コンサルタントなる妙な立ち位置の男から、友人リストみたいなのをもらって、調査を開始。
ところが、誰に訊いても、たしかにパーティには呼ばれたことあるけど彼女のことはよく知らないんだ、みたいな答えばっか、銀行経営者の夫人って虚像っぽい。
そうこうしてるうちに、スペンサーにわかりやすい尾行がついてきたりする、スペンサーは相棒のホークにそっちを探らせる。
今回ばかりは、自分が何を知りたいのかわからない、とかブツブツ言いつつ、関係者とおぼしき人たちにあたっていく、誰かが怒りだしたりすればそれが糸口になるっていうのがスペンサー流。
しかし、それやってるうちに、スペンサーと面会した人物のなかから死人が出てしまう。とても味が悪い。
とうとうスペンサー自身も襲撃される。もちろん、スペンサーは反撃して相手に銃弾をぶちこむ。しかし、とても後味が悪い。
このときスペンサーは『残酷な土地』で、護衛すべきであったキャンディ・スロゥンを失ったことを思い出す。スーザンがたびたび指摘する、スペンサーが忘れることのできない心の傷になってる事件。
ところが、スーザンも今回は事件とは関係なく傷つく、カウンセラーしてた患者のひとりが自殺してしまったからだ。
それに対して、スペンサーは「遠慮しないで悲しめよ」みたいな言い方をする。一見ひどい態度にみえるけど、スーザンは「私があなたを愛するのは、あなたは、私が罪を犯した気分を起こすのをやめさせようとしないからだ」みたいなこと言って、その接し方を支持する。
事件のほうはというと、スペンサーがあちこち突っつきまくってるうちに、被害者は女性より若い男の子たちのほうが好きだっていう性質があったんぢゃないかってことが浮かびあがってくる。
なんだか、このへん、ここ数作はなんかっつーと、ゲイの存在が物語中でひとつのキーになってるような気がする、このころ作者は何か思うところがあったのかね。
で、まあ、スペンサーがあちこちの石をひっくり返しまわってくと、やがて銀行の誰かと不動産開発業者の関わる悪事の計画がみえてくる。
リタとはべつの女性弁護士も出てきて、このひとはメアリが夫を殺そうとしてたみたいな証言をする犯罪者を弁護してたりするんだが、そのへんが入り組んでんで、望む形での解決にこぎつけるまで、スペンサーはもう一苦労することになる。
「自分が約束できること以上の約束はできない」って、自分なりの正義は曲げないんだけど。
コメント
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