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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

街の古本屋入門

2016-11-23 17:58:17 | 読んだ本
志多三郎 昭和61年 光文社文庫版
まえに「わたしの小さな古本屋」という文庫を読んだんだが。
そのなかで、古本屋になろうと思いついて人に相談したら、すすめられて読んだのが、この本と書いてあって。
興味をもったんで、探したら、幸い地元の古本屋で見つけることができた。
サブタイトルは「売るとき、買うときの必読書」ってなってるんだけど、古本屋に行く客へのガイドが主目的ぢゃない。
開業のための準備なんかが具体的に書かれた、古本屋になる方法の手引書である。
すごい、そんな本あったんだ。
著者は横浜市内の古本屋さんだということだけど。
家賃や広告にかかる費用や、どれだけ売ったらどのくらいの利益になるかといった例が披露されている。
それでも、やっぱり、本に対する思いがところどころにほとばしり出るものがあり、ただ商売として成り立ちゃいいってわけぢゃない思想がある。そういうとこが読んでておもしろい。
たとえば、
>かつて書籍は、もっとも代替のきかない商品の代表とされていた。。考えてもみたまえ。アンパンが売り切れたらクリームパンでもいいというようなことが、どうして書籍の場合に通用しよう。(略)
>それなのに一方では、本を衝動買いするタイプの人間が増えている。(略)(p.52)
と世を嘆く。私もけっこう衝動買いするんで、修行がたりないかも。
で、店内でお客さんに「何かお探しでしょうか」と声をかけたとき、
>返ってきた答えは、古本屋にとっては脅威以外のなにものでもなかった。
>「いや、別に―」(p.53)
…“脅威”まで言いますか。
商品の充実をはかる意気ごみとして、
>(略)古本屋とてなべて社会的存在にはちがいないのだから、やはり多くの客に満足してもらうべく、容易に探し出せぬ本、貴重な本、代替のきかぬ本等を蒐めつづけなければならない。(略)(p.113)
って宣言してるんだから、探し物が自分でわからないやつは許せないのかもしれないけど。
どういうものに価値があるのかは、自分で資料集めに投資してでも勉強するべきものということで、
>ただし、古書についてのそういった目録はあり得ない。すべてが部分、一部であり、一歩一歩死ぬまで勉強を続ける以外にない。(p.160)
みたいに語られている。
やだな勉強するの、俺。古本屋向いてないのかも。まあ、もう“死ぬまで”たいして時間ないだろうから、それほどの量は勉強できないだろうけど。
どうでもいいけど、むかしはともかく今では、私は古本屋に入っても、買うもの以外には極力触れないことにしている。誰に言われたでもなく自然とそうなっていったんだけど、それは客としては正解みたい。古本屋にあるのは店主の所有物だから、むやみにいじくるもんぢゃない。
おもなコンテンツは以下のとおり。
第一章 古本屋とはなにか
(一)古本屋の商品
(二)古本屋と新刊書店とのちがい
(三)古本屋のいろいろ
第二章 古本屋を開くために
(一)法的な問題
(二)「理論」的な問題
(三)資金的な問題
第三章 古本屋の経営
(一)古本屋の経営とはなにか
(二)売価のつけ方
(三)仕入れの方法
(四)日常の営業について
第四章 古本屋に本を売る人のために
(一)本の見きわめ
(二)古本屋の選択
(三)売り方の注意
(四)補遺―街の古本屋流通商品の周辺
コメント
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