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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

なぜなにキーワード図鑑

2018-09-22 17:30:39 | 読んだ本
山崎浩一 昭和六十二年 新潮文庫版
かの『ロックで独立する方法』のイントロダクションに、
>また八七年、私の著書が文庫化された折には、その巻末の解説を彼に書いてもらったこともあった。
とあって、「彼」っていうのは忌野清志郎のことだから、著者の文庫を書名もわからずに探してみた。
ちなみに、これには、
>(略)この解説はある雑誌が選んだ〈八七年度ワースト文庫解説賞〉に見事に輝いたのだった。私たちが祝杯をあげたのは言うまでもない。
というオマケがついている。
で、ようやく見つけたのが本書。カバー裏表紙に「解説:忌野清志郎。」の文字を見つけたときはうれしかった。
だからって巻末の解説から読んだりはしないよ、それは最後のたのしみにとっといて、ちゃんとアタマから読んだ。
単行本が昭和五十九年で、初出の「宝島」とかは、それよりちょっと前、1982年くらいから書かれたもののようで。
そのころのキーワードですからねえ、いまとなっては大昔だ、あのころは私も若かった。
時代のキーワード、なんか陳腐そうな響きもするんだけど、本書のまえがきで、単行本のまえがきを著者自身が引いて、
>〈キーワード〉というカギ穴から見えた〈今〉という名の踊り子が演ずる淫靡なピープショーの観察記録
みたいな本だと紹介している。
最先端ぽいキーワードがあっても、ある日突然それは別のものにとってかわられちゃって、使用済みキーワードの山ができてくんだが、
>けれどもキーワード鑑賞の最大の楽しみは、そこにある。たとえば〈新人類〉の項では、このキーワードが颯爽とデビューし、変身し、やがて「ナウ」のステージから引退していくまでの波乱の人生を、克明に記録した。
ということで、そうやって移り変わっていくことを承知のうえで追っかけてく。
並んでる言葉と、その解説を見てくと、あったなーと思うのもあれば、そんなのあったっけって思うのあり、それは私がまだオトナぢゃなかったから関心の範囲が限られてたからだろう。
80年代なかばという当時の時代については、
>今の時代をうんと単純に図式化しちゃうと、刺激が飽和して“構造退屈”が蔓延しているところへ、手を変え品を変え、さらにエスカレートした刺激を加速度的に加えて、結局感性をマヒさせていってる――と、こういうパターンです。(p.194-195「世紀末」)
ってのが、うまく言えてると思う。
それにしても、「記号の帝国・ニッポン」(p.157「エスニック/コロニアル」)ってのは、いいフレーズだ、どんな文化でも記号化して消費してく日本社会おそるべし。
単行本未収録でその後に書かれたものも含めて、とりあげられてるキーワードは二十四。
アイドル
東京
MTV
グルメ
浅田彰
ゲイ
女子大生
第5世代コンピュータ
ニューミュージック
70年代
若者
エスニック/コロニアル
西麻布

世紀末
パフォーマンス
偏差値
リクルート
フィットネス
60年代
劇場犯罪
3FET
カルト・ムービー
新人類

ほかに「“Today's special”(山崎シェフの今日のおすすめ)」として文庫で加わった2ページ強ずつくらいのコラムが以下。
CX
ブーニンとサティ
男の子
少女語
冗談関係
バリ
ハウスマヌカン
行列
CAI
アメリカの精神分析
岡田有希子のユーレイ
たけし軍団《フライデー》襲撃事件

おっと、肝心な巻末解説のこと書くの忘れそうになった。
>女どもは、ホラービデオに夢中になってる。遅れた奴らだ。黄色い声を張り上げて、もり上ってやがるぜ。
で始めるキヨシローの解説は、著者の山崎浩一氏、山崎くん、山崎ちゃん、山崎(文章が進むにつれて呼び方が変わるのが芸の細かいとこだ)に対する印象を語ってるのがサビとなってる。
著者山崎浩一の【注】によれば、
>「他人のために曲を書いたことはあるけど、解説ってのは生まれて初めてだぜ」と赤面(たぶん)しつつも、正月を返上して、あの例の“放埓にしてなお高貴”な文体でしたためてくださった。この文章にメロディをつければ、そのまま新曲ができあがるであろう。
ということである。曲にのるというのは、いい指摘だと思う。
キヨシローからは、
>しかし、彼は、私が何をどんなふうに答えても、いつも、フショーブショーというか、何というかいつも納得してないような顔をして、シブシブ帰って行くのであった。
なんて言われてますが。
そうそう、巻末解説までに【注】がついてますが、本書は全編【注】がビッチリです、見開いた左ページの半分を小さな文字で【注】が埋め尽くしてる、一章につき20も30も。
正直読みづらいんだけど、まあ、それも遊びのうちで。

どうでもいいんだけど、帯に懐かしの安西水丸画伯による村上春樹さんの顔が。「ヤングフェア」だって、『村上朝日堂』と並べられるヤング向けの書だったのか、これ。
コメント
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