町山智浩 2017年 文春文庫版
USA語録シリーズの第3弾。
週刊文春「言霊USA」連載は、2014年3月から2015年3月の時期ということで、時代は新しくなってる。
でも、さすがに町山さんも、この時点では、アメリカがそのあとトランプ氏を大統領に選ぶことまでしちゃうとは予想していなかったみたいだけど。
タイトルの「バカもOK」ってのは、
「In this country,people are allowed to be morons.」
っていう、NBAのオーナー、マーク・キューバンという人物の発言からきている。
それってのは、べつのバスケットボールチームの80歳のオーナーが、自分のチームの黒人選手たちについて、
>奴らにメシを食わせてやってるのはわしだ。(略)奴らがバスケできるのは誰のおかげだ? 奴ら自身か? それともわしか?(p.64)
って暴言吐いて選手から抗議されてるときに、処分に反対して、「この国ではバカでも許されるんだ」と言ったんだという。
なんつーか、失言とかってんぢゃなくて、ホントにそう思ってんだろうねとしか思えない。
そういう時事的な迷言も数々あるけど、今回、辞書にはないだろう(あるのかな?)意味でおもしろいと思った言葉のひとつが、キャットフィッシュ。
「ネット上で自分の顔を出さず、美男美女の写真を使って別人になりすましている人(p.67)」をそう呼ぶんだってね、知らなかった。
で、おもしろいのが(おもしろがっちゃいけないのかな?)、自宅にひきこもってネットに逃避して別人を演じてるそういうひとたちを、テレビ番組でおっかけるんだけど、
>この番組で正体を暴かれるキャットフィッシュの8割がチェルシーのような病的な肥満の男女だ。(p.70)
ってこと。どうしてなのかねえ、まあ、なんとなくそういうイメージはあるあるだけど。
ちなみに、正体を偽ってたことをわびて、悩みを聞いてもらってったりするうちに、みんなやせはじめていくらしい。
あと、
>女が男のふり、男が女のふりをするキャットフィッシュは多く、大抵は田舎暮らしだ。田舎は保守的なので同性愛や性同一性障害は打ち明けられない。未成年や貧困層は都会に行く方法もない。ネットしか逃げ場はない。(p.70)
ってのもおもしろい現象なんぢゃないかと。そういうものなのか。ほかの国や日本ぢゃどうなんだろ。
どうでもいいけど、ネットにおける日本語の「釣り」は英語ぢゃあトロール(釣り)っていうんだそうで、言語ちがえど人間の文化には共通なものあるねえ。
町山さんの専門である映画のはなしで興味深いのは、近年のアメリカぢゃあコメディ映画が減ってるんだけど、それって中国のせいだと。
2010年に20世紀FOXがアメリカで公開した映画の44%がコメディだったのに、2014年には8%に減った。
中国ではシネコンがじゃんじゃんつくられてて、そのうちスクリーン数はアメリカを超すと。
2014年現在の話だけど、
>中国では、10年ほど前まで、ハリウッド映画はほとんど観ることができなかったが、今は年間34本の外国映画の公開が許されている。(略)中国の人々は今、ハリウッドのSFX満載のアクション大作という新しい娯楽に熱狂している。(略)
>(略)コメディは、風刺やゴシップ、時事ネタがわからないと笑えない。アメリカン・ジョークは日本ですらあまりウケないのに、中国では無理すぎる。でもアクションには国境がない。それにビジネスはデカければデカいほど投資も集まる。(p.107「中国はまるで1920年代のハリウッドだ」)
ということらしい。
うーむ、映画のことはよくわからんけど、なんかあんまり質の高いものができなさそうな感じがする。
すると、もしかして、ちょっと前にテレビで、なんかマット・デイモンが長城で怪物と戦うやつ観たけど、あれって、そういう勢いでつくっちゃったりしたものなのかな。