many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

岬にて

2020-01-04 18:49:14 | 読んだ本

乃南アサ 平成二十八年 新潮文庫
先だって読んだホリイ氏の『文庫本は何冊積んだら倒れるか』のなかに、乃南アサ短編集の解説を書いたってあったので、探して読んでみることにした。
解説をめあてに本読むのは、忌野清志郎の解説が読みたくて『なぜなにキーワード図鑑』を探したの以来ではないかと思う。
ちなみにホリイ氏は、「文庫の解説はいつ読むのか」というその章のなかで、乃南アサの短編集16冊の解説ネタばらし調べというのをやってる、ネタバレあり5冊、微妙5冊、ネタバレなし4冊、解説なし2冊。
>解説でネタばらしになるのは、たぶん、解説を書く人が「その本1冊しか読んでない」からで、その本の内容に触れるしかないからですね。
と言ってますが、そうなんでしょう。
で、本書、ぜんぜん読んだことのない作家さんのもの初めて読むことになったんだが、私は順に読んでって解説は最後にあるから最後に読む派なので、早く解説にたどりつきたくて落ち着かない気持ちで読んでた、なんだかなあ。
表題作は、四国宇和島に出張に行ったキャリア・ウーマンが、若いときの彼氏の故郷だったということ思い出しながら、仕事おわったあとに残って海辺を訪ねていく話。
どうでもいいけど、家族とLINEで連絡とりあうとか、スマホでグーグルマップ見るとかって描写のある小説読んだの、初めてかもしれない、私は。
なんせここんとこずっと古い世界に入り浸ってるような気がするからねえ、読書的には。
第一次世界大戦と第二次世界大戦の間ぐらいが、物語世界としては、なんかものすごく居心地いいような気がする。
そもそも私自身はLINEもしてないんで現実の時代からもズレちゃってんだが。
閑話休題。どの短篇もだいたい女性が主人公なんだけど、気味わるいような話もあって、知らなかったんだけど、基本的にはミステリー作家さんなんだってね、なんとなく納得。
一読したなかでは、着物の小紋染めをする「鈍色の春」とか、能面を打つ「泥眼」とかが、よいなあと感じた。
自分の知らない職人技とかってのをフィクションを読んで知ることに、基本的に興味を感じちゃうってだけのことなのかもしれないが。
さてさて、それで、お目当ての巻末解説にたどりつくと、23ページある力作でした。
「人はいつ文庫の解説を読むのか。」で始まるんだが、自身は「私は、読んでいる途中派、である」と言っている、なのでネタバレしないように書くと宣言している。
最後のオチさえばらさなきゃいいだろ、ってわけぢゃなく、読んでくのが楽しみな途中の意外な設定とかも、解説とか称して書くもんぢゃないと注意している。
で、作者の小説の魅力について、いくつかの類型に分けて、この本に含まれていないものも紹介しつつ、語っていくというステキな手法をとっている。
著者の短篇ジャンルには、「旅もの」、「職人もの」、「一般家庭もの」と呼んでいいんぢゃないかという話があると。
私は「職人もの」に魅力を感じたわけだが、これは『氷雨心中』という作品集に集められているという、線香職人とか提灯職人とかの世界もあるって。
>百六の短編をみんな読むと、その世界の多様さに驚きます。
>なかでも、特殊な設定の短編集がおもしろい。
と言われてますが、私が次なにか読んでみようという気になるかはわからないけど。
収録作は以下のとおり。
岬にて
今夜も笑ってる
ママは何でも知っている
母の家出
鈍色の春
脱出
泥眼
春の香り
花盗人
微笑む女
はびこる思い出
湯飲み茶碗
愛情弁当
悪魔の羽根

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする