many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

本のお口よごしですが

2020-01-12 18:15:56 | 読んだ本

出久根達郎 1994年 講談社文庫版
これは去年10月に地元の古本屋で買った文庫、最近やっと読んだ。
『漱石を売る』とかを読んだことがあるんだけど、著者は本書の単行本刊行時点の1991年で「古本屋になって、指折り三十二年になる」という古本屋さん。
本書は一篇あたりが文庫で1ページ半くらいと短いエッセイ集、156篇と数は多いからタイトル並べたりはしない。
基本、古本屋稼業の毎日のことが題材で、めずらしい本とか変わった客とか、そういうネタ。
古本にはしおり代わりにイチョウの葉がはさまれてることが多いけど、それを調べてみたら、
>書物保存法の通俗書で、虫よけにイチジク、イチョウの葉を用いよ、とある。(P.73「書物保存法」)
ってのを、あっさり見つけることができたとか。
著者は、自身、実に多くの本を読んでるんだけど、これについては、
>二十代のころ一日五冊読むことを心がけた。(略)
>なぜこんな無謀をたくらんだかというと、一生の読書量を考えたからであった。仮に十歳より七十歳まで、一日平均一冊として六十年に二万一千九百冊。たったこれっぱかりなのである。私は読みたい本が生涯に読みきれぬとあせったのである。(P.81「なつかしき遺品」)
と書いてあったんで、見上げた志の持ち主なんだと知った、すごいね、そんなこと考えるなんて。
一読したなかで、私がいちばん気に入ったのは、次のような話。
古本の好きなひとは、よく探している本のリストのメモを持ち歩いているものだが。
戦時中、学徒出陣するある男性が、九つ下の弟を連れて裏山に登り、キノコのとれる秘密の場所を何か所も教えて引き継いだ。
日当たりのよいせせらぎの近くにくると、兄はここは自分が本を読む場所だ、ここも弟にあげると言った。
>そして一枚の紙片を弟に渡し、「おれにかわってわが全集の欠巻を捜し揃えてほしい」と頼んだ。それが兄の遺言になった。(P.179「宝の紙片」)
で、弟は戦後に仕事の合間をぬって古本を捜し、四十年かけて蔵書の不備を埋めることができたという。
えらいよねえ、そういうの。あと、戦争は、やっぱ、したらいかん。

コメント
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