小林良彰編 2005年 慶應義塾大学出版会
ことし2月に、実にひさしぶりに、学生んときの関係の集まりに出たんだが。
そんとき聴いた話とか、むかしの資料ごそごそ出したりしたことから、なんか当時勉強してたことに対する興味をまた思い出した。
どうでもいいけど、勉強したこととは直接関係ない仕事にその後私は進んだんだが、教わったものの考えかたのようなものは、とても役に立った。
とはいえ、自分のやりたいことをそういう手法で他人に提示できるようになったのは、ガッコ卒業して十年以上経ったころからかな。
30過ぎてからガッコ入りなおしたら、もうちょっと上手に研究ができたんぢゃないかと思う、自信があるわけではないけど。
さてさて、そんなフラフラした興味程度で、なんかそういうのに接触してみたくなって、わりと容易に手に入れることができたんで読んでみたのが、これ。
「叢書 21COE-CCC 多文化世界における市民意識の動態」っていう全15巻のシリーズの第1巻ということらしいが、ほかのものを読んでみるつもりはいまんとこない。
なかみについては、現代日本の政治についてのいろんな研究論文で、タイトルのとおり、投票行動(選挙)を有権者意識ってことで争点態度とか業績評価とかと関連して説明するもの。
一読したなかでおもしろかったのは、第5章「日本における政府支出と有権者行動」かな。
2001年参院選の比例代表で選出された与党候補とその後の予算における補助金の関係で、旧建設省河川局出身のある候補者の得票率が高い地方自治体ほど河川補助金が多く配分され、農林水産省旧構造改善局出身のある候補者の得票率が高い地方自治体ほど農村振興補助金が多く配分されているという、あざやかな証明。
公共事業を扱う省庁の政府支出ってのは、マクロ経済変数の影響はなくて、それよりも政治的な要素で決まっているっていうこと。
もしかしたら、21歳のときの自分が、やりたかったのはこういうことだったのではないだろうかと、ふと思ってしまった。
それにしても、序章で編者がおっしゃってる次のようなことは、基本中の基本ですねえ。
>(略)膨大なデータを用いて複雑な多変量解析を行うこと自体は楽しいことであるが、投票行動研究は決してゲームではない。言い換えると、なぜ、投票行動を説明したいのか、あるいはなぜ、政党支持を説明したいのかという問題意識を常に明確にしていかなくてはならない。そして、最終的には、そうした分析の結果を踏まえて、どのような提言をしたいのかを明確にしてもらえれば幸いである。(p.26)
提言は大事、ってのは誰でもわかることなんだけど、そのまえの「多変量解析を行うこと自体は楽しい」ってのがツボにきて笑ってしまった。
計算センターの端末に向かってなんかわけわかんないプログラムいっぱい書いてた身としては、エクセルのツールで重回帰分析ができてしまったときは驚いたもんな。
っていうか、それ、やっぱ楽しかったから。(その前段ではエクセルで、分散がどうとか関数入力したりして、自力で回帰分析検定とか(※6月7日訂正。回帰分析はやっぱ最初から分析ツールだったような気がする、関数でやってたのは検定や相関くらいまででは。)したりしてたけど、やっぱ楽しかった。)
コンテンツは以下のとおり。
第1章 わが国における有権者意識研究の系譜と課題 小林良彰
第2章 日本における政策争点とその変容 堤英敬
第3章 日本における政策争点に関する有権者意識とその変容 平野浩
第4章 2004年参院選における政策争点と有権者意識 谷口尚子
第5章 日本における政府支出と有権者行動 大和田宗典
第6章 日本における業績評価と有権者意識 大和田宗典
第7章 日本におけるコートテール・イフェクトと有権者意識 森正
第8章 日本におけるマス・メディア報道と有権者意識 河野武司
第9章 日本における地方政治と有権者意識 河村和徳
第10章 日本における地方選挙と有権者意識 石上泰州
第11章 環太平洋地区における価値観と社会・政治参加、もう1つの側面 池田謙一・小林哲郎