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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻

2020-06-14 18:35:02 | 読んだ本

P・G・ウッドハウス/岩永正勝・小山太一編訳 2011年 文春文庫版
こないだ一冊文庫を読んでみたら、うわさにたがわずおもしろかったので、すぐ二冊目に手を出してみたジーヴズ。
本書巻末の「収録作品解題」によれば、著者は作品に頻繁に手を加えて出しなおしてたり、英米で題名が違っていたりで、このシリーズの短篇というのは何作あるのか集計が正確にはできないものだという。
できたら発表順に、ぜーんぶ読んでみたいのだが、そういう事情で、さらに翻訳出版も時代によっていろいろあるんぢゃしかたない、とりあえず手に入りやすいものからテキトーに読んできゃいいや、ということにした。
執事ジーヴズのご主人バーティは、いつもトラブルに巻き込まれるんだけど、それは、
>言うまでもなく、十分後に僕は説得されていた。いつもこうなんだ。僕を説得するなんて、実に簡単なことだ。(p.137)
とか、
>友が苦境にあるとなると、ウースター一族は自分のことなど考えない。(p.174)
って性格のせいだっていう一面もある。
でも助けを求めるほうの友人ビンゴは、いつも「ジーヴズも連れてこい」って言うんで、ほんとにアテにされてるのは執事のほうなんだけど。
それはそうと、ジーヴズの受け答えはいつも最適で感心させられる。
使い走りの男の子を張り飛ばしてやろうと追いかけることになった次第を主人に問われると、
>「はい。口の悪い子供でございまして、わたくしの容貌について怪しからぬ言辞を弄しましたもので」
>「おまえの容貌について何と言ったんだ?」
>「忘れました」厳粛な顔つきでジーヴズは言った。「しかし、失敬な発言でした。(略)(p.44)
なんてのは素晴らしい、「忘れました」ってのはこうやって使う言葉だ、ひとさまの前でホントのこと言わないとこにマナーとプライドがうかがえる。
コンテンツは以下のとおり。
『トゥイング騒動記』 (The Great Sermon Handicap/The Purity of Turf/The Metropolitan Touch,1922)
 その一 長説教大賞ハンデ戦
 その二 レースは神聖にして
 その三 都会的センス
従弟のユースタスの手紙に誘われて、八月の暑いロンドンを抜け出してバーティは従者ジーヴズとともにグロースターシャー州トゥイングへ出かけてくと、友人のビンゴも住み込み教師として同じ場所で働いている。
従弟たちの講習仲間のステグルズという悪ガキの主催で、日曜日の牧師の説教の時間の長さを競うレースとか、村の小学校の運動会の『お母さんの袋跳び』とか『女子の玉子スプーン競走』とかで、一儲けしようと企み合う。
ウラ情報を仕入れて穴馬で儲けようとするが、それに気づいた胴元は妨害しようとする。
>この世で不断の監視を要する者がいるとしたら、それはステグルズ以外にない。権謀術数のマキャヴェリですら、やつから通信教育で指導を受けたくなるはずだ。(p.76)
って調子のバーティの呪詛はおもしろい。
『クロードとユースタスの出航遅延』 (The Delayed Exit of Claude and Eustace,1922)
バーティより6歳下の双子の従弟クロードとユースタスは、バーティによれば「世間一般にはとんでもない騒がせ者で通っている」、ジーヴズによれば「たいそうご活発なお若いかたでございますね」、なんだが。
とうとう学期の途中でオックスフォードを放校になり、きびしいアガサ叔母の指図で南アフリカへ行かされることになったという。
出発の前日の一晩だけ二人を泊めてあげなさいとアガサ叔母に命令されて、バーティは渋々引き受けるが、夜通し遊び歩いた二人が翌日おとなしく出発するわけもなく、ロンドンに居座る。
『ビンゴと今度の娘』 (Bingo and the Little Woman/All's Well,1922)
 その一 ビンゴと今度の娘
 その二 終わりよければ
友人のビンゴはなにしろ惚れっぽい、ジーヴズにいわせると「ミスター・リトルは、大変お心の暖かい方で」ということになるが。
またもウェイトレスに一目ぼれをするが、いつもフラれる運命なのに、今度はうまくいっているという。
ビンゴは生活費支給を再開してもらうために、バーティに伯父のところへ外交交渉に行ってくれと頼みこむ。
『ジーヴズと白鳥の湖』 (Jeeves and the Impending Doom,1926)
バーティの苦手なアガサ叔母が、ウーラム・チャーシーにある屋敷に三週間泊まりに来いという、「すべての約束を取り消して」来るようにという厳命。
行くと叔母は、客人として来ている大臣のミスター・フィルマーと懇意にしろという、いい印象を与えるために、滞在中は煙草もアルコールもやめて言葉づかいに気をつけろという、理由を問われて叔母は「わたしがそう望むからです」と宣言。
庭園に行くと、ここにいるはずのない友人ビンゴにばったり会って驚き、友人を窮地から救うためにバーティは苦労するが、起こるべくして不幸なアクシデントに直面する。
『ジーヴズと降誕祭気分』 (Jeeves and the Yule-Tide Spirit,1927)
12月16日にレイディ・ウィッカムから招待状をうけとり、クリスマスの予定をモンテ・カルロ行きから変更したバーティとジーヴズ。
滞在先には、ある一件以来嫌われているサー・グロソップと、その甥でバーティが深く恨みをもってるタッピーも来ていたので、何やら不穏。
一方でバーティは招待主の娘であるロバータに恋をする、ところがジーヴズは「あなたさまのような紳士のご伴侶としてふさわしいとは、わたくしには思えません」と意見する。
モンテ・カルロ行きがなくなってから冷淡にみえていたジーヴズだが、最後には雇い主に忠実でバーティを苦境から救い出す。
『ビンゴはすべて事もなし』 (All's Well with Bingo,1937)
結婚したビンゴだったが、妻からモンテ・カルロに自分のかわりに取材に行ってくれと言われる。
賭け事に手を出したら妻に愛想をつかされると警戒していたのだが、我慢できるわけもなく競馬で有り金を失い、妻のブローチを質に入れてルーレットで挽回を目指す。

コメント
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