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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

悪党

2016-02-25 21:48:50 | 読んだ本
ロバート・B・パーカー/菊池光=訳 2004年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
二十年くらい前に読んだスペンサーシリーズを、つづきを読んでみようと思ったら、第22作目以降がなかなか容易には入手できないって話なんだが。
先日神保町界隈で古書市をのぞいたら、そのへんのとこを一挙に6冊買うことができた。ラッキーだ。ぼちぼち読んでこうと思う。
本作は、第24作目。原題は「SMALL VICES」、小さい悪徳?
それにしても、ダメだよ、帯に「スペンサー、瀕死の重傷を負う!」なんて書いちゃ、展開読めちゃうぢゃない。
今回の依頼人は法律事務所の弁護士で、かつて検察側として有罪にした女子大生殺しの犯人が冤罪ではないかという疑念があるので、真相を確認してほしいという。
一方で、私生活のほうでは、スーザンがなんと養子をもらってスペンサーと二人で育てたいなんていう提案をしてくる。このことは事件とも微妙にかかわってくる。
さて、事件解決のために、例によって、スペンサーはあちこちを突っつきまわる、そうしてるうちに何かが形を現してくるっていうのは彼の調査の基本。
実際、ホークに「しかし、お前は誰かを怒らせているようだな」と言われても、スペンサーは「それはおれの職務内容書のようなものだ」と答えてる。
終わったはずの過去の事件を蒸し返されて、腹を立てた敵方は、スペンサーを消すために殺し屋を雇ってくる。
灰色の髪、灰色の眼、灰色の服装、青白い顔をした、その男は見るからに只者ではない。
初対面のとき、スーザンと一緒にいるところを、脅してくる。
そのためスペンサーは、スーザンにも二十四時間護衛をつける必要が生じる。
「こういう場合は、彼がどうするか、ではなく、敵にできることに対して計画を立てるのだ」というスペンサーはまったく正しい、意思ではなく能力に備えるのは防衛の基本。
敵のあまりの不気味さに、さすがのスペンサーも事件から手を引いてもいいとスーザンにもちかけるのだが、「だめよ。あなたは今やってるこの妙な仕事をやるのに、才能、気性、それに図体も、ぴったり合った人なのよ。ほかのことはできないわ」と却下される。
危険なことは承知してるけど、スーザンは「私はあなたに変わってもらいたくない」と、スペンサーの生き方を認める。
で、帯に書いてあったように、スペンサーは銃撃されて、腕にも脚にも重傷を負う。
三週間も意識不明状態を彷徨い、奇跡的に一命をとりとめたスペンサーは、敵を欺くために、死んだことにして、ボストンを離れる。
カリフォルニアでホークとスーザンに支えられてリハビリに励むが、雪の降る日に撃たれて、ボストンに帰ることができたのは、夏の終わりだった。
このリハビリをやるあたりは、なかなか良くて、むかしのスペンサーシリーズ読んだときの良さに近いものを感じる。
そういえば、どうでもいいけど、本作ではスペンサーは、カフェイン抜きぢゃなくて、ふつうのコーヒーを飲んでたりして、原点回帰を目指してるのかもしれない。
で、体力も完全に戻ったスペンサーは、灰色の男と対決しにいくんだが、スーザンはここでもスペンサーが何も言わないのに、そのやりかたがわかっている。
ホークでも、ヴィニイ・モリスでも、警察の誰でも、頼めば加勢してくれるはずなのに、「一人でやるつもりなのね。そうでしょう?」とスペンサーの考えを見抜く。
やられた相手にやりかえすのに、自分ひとりで立ち向かう、それがスペンサーという男の生き方。
こういうとこもいいよねえ、昔の作品のなかでも、銃を置いて素手での殴り合いで勝ちにいったりとかあったけど、そういうとこがこのシリーズのよさのひとつ。
で、対決の結果、当然のことながら、主人公は勝つんだが。
返り討ちにあってしまうことを心底心配していたスーザンは、すべてがおわったあとに、
「(略)あなたがそれをやらなければならないことが判っていた。それをやらず、私に説得されてやめた男とは、一緒にいたくなくなることすら判っていたし、あなたなりの男にならせておくことが、あなたを愛すること(略)」
と心境を語る。そういう関係なんだよね、この二人、ってことを再確認できたのも、本作のいいところだと思った。



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