many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

25時のバカンス

2018-09-17 17:25:20 | マンガ
市川春子 2011年 講談社アフタヌーンKC
「市川春子作品集II」ってことで、『宝石の国』で気になってしまったので、短編集を読んでみた。
なんかやっぱりあやういいきものの話ばかりで、なかなかわかりにくい、困ったね、どうも。
「25時のバカンス」
深海生物圏研究室の天才科学者の女性が、ひさしぶりに12歳下のカメラマンの弟とあう。
新種の貝にからだのなかを食い尽くされて、貝のつくる真珠層によって身体のかたちを保ってる、貝殻女って、すげえ設定。
ひとがなんかいうと、5点とか71点とか点数のコメントかえすとこがいいけど。
「パンドラにて」
土星の衛星のパンドラにある女学院で学ぶ生徒たちのなかで二条ナナは天才的なんだけど不真面目。
口をきかないロロという新入生に好かれたのかまとわりつかれるんだけど、ロロはナナの兄が送り込んだ土星の衛星の菌から成るものだった。
「月の葬式」
天才高校生は家出して三日かけて北の町についたとこで、俺の弟ということにしてやるという男といっしょに暮らすことになる。
男は町の婦人たちにきゃあきゃあ言われるキャラなんだが、月の王子で、月の病気の進行の遅い地球に一人で来たんだという。
皮膚が硬化してボタンみたいに剥がれ落ちていくって、これまたすげえ設定。
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ぼくの短歌ノート

2018-09-16 16:42:37 | 穂村弘
穂村弘 2018年6月 講談社文庫版
7月に書店で見かけて買った文庫、夏のあいだのどこかで通勤電車のなかで読んだ。
文庫新刊売り場でタイトル見て、あれ、これ持ってたっけ読んだっけって、ちょっと思い出せず困ったんだが、調査の結果2015年の単行本は読んでなかった。
「はじめに」によれば、本書は『群像』に連載中のエッセイ(なのかな?)をまとめたもの。
『はじめての短歌』って文庫は読んだんだけど、その元ネタの講義では本書でとりあげた歌を例として同じようにとりあげてるんだそうで。
与謝野晶子とか斎藤茂吉とかって古いものから、現代の歌でも新聞に投稿されたものまでも、いろいろとりあげて、わかりやすく解説してくれてる。
ときどき改悪した例文のようなものをつくって、ノーマルな表現だといかにつまんないかというのを具体的に示してくれるんで、そういうのがおもしろい。
ただねえ、たぶん私のほうに問題があるんだろうが、このテの本を以前読んだときのように、すごい歌にめぐりあって「オッ!」と思ったりするようなことがない。
なんかの感覚、言葉に対するアンテナのようなものが、鈍くなっちゃってるんぢゃないかと、ガラにもなく自分で不安になってしまう。
でもでも、油断してると、
>先日、久しぶりに岡崎京子の『リバーズ・エッジ』を読み返した。やっぱり凄い。この人が今を描いたらどうなるんだろう、と思う。(p.93「窓の外」)
なんて書いてあったりするんで、この歌人にはついていく気になる。
コンテンツは以下のとおり。
コップとパックの歌
賞味期限の詩
高齢者を詠った歌
ゼムクリップの詩
花的身体感覚
するときは球体関節
意味とリズム その1・その2
天然的傑作
内と外
画面のむこう側とこちら側 その1・その2
日付の歌
素直な歌
子供の言葉
窓の外
ちやらちやらてふてふ
今と永遠の通路
美のメカニズム
生殖を巡って
システムへの抵抗
感謝と肯定
身も蓋もない歌
ドラマ化の凄み
暗示
貼紙や看板の歌
ミクロの世界 空間編・時間編
永遠の顔
平仮名の歌
漢字の歌
繰り返しの歌
落ちているものの歌
デジタルな歌
動植物に呼びかける歌
我の歌
会社の人の歌
時計の歌
間違いのある歌 その1・その2
慎ましい愛の歌 その1・その2
ハイテンションな歌 現代短歌編・近代短歌編
殺意の歌
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時間と空間のかなた

2018-09-15 14:39:49 | 読んだ本
ヴァン・ヴォークト=沼沢洽治訳 1970年 創元推理文庫版
A・E・ヴァン・ヴォークトをいくつか読んでみようと思って、5月に何冊かまとめて買った文庫のひとつ。
1970年初版のカバーについてる定価は¥190だけど、いまあらためて古本屋の値札みたら、倍以上だった、たいしたことはないけど。
同じSF作家のものいくつか読むなら、短編もあるならぜひ読むべしと思ったんで、幸いこれ見つけたんで買ってみた。
原題「Away and Beyond」は1952年の刊行、原子銃が最強の武器で、電子頭脳を動かすのは真空管って時代だ、ストーリーがおもしろければいいんだけど。
「偉大なエンジン」The Great Engine 1943
1948年の夏、丘の中腹に横たわっていたエンジンを片腕の男が見つけて拾い上げてくる。
そのエンジンはどう見ても画期的な新発明のたまものに思えた。
「偉大な裁判官」The Great Judge 1948
西暦2460年、国や人を治めるのは絶大な権力をもち、決して間違わない偉大な裁判官。
ひとりの男が反逆罪に問われ、死刑を宣告されたが、なんとか逃れるすべはないか考える。
「永遠の秘密」Secret Unattainable 1942
1937年から1941年までのドイツ政府の科学部門の往復書簡。
北プロイセン地方のグリーベ川が一夜にして付近の村を呑み込む大河となったのは、ある秘密実験の結果だった。
「平和樹」The Harmonizer 4944
知的植物アイビスを積んだ宇宙船が八千万年前に地球に墜落。
アイビスが根を張り生き延びた土地は、恐竜が跋扈する世界だった。
「第二の解決法」The Second Solution 1942
カーソン惑星でつかまえたエズオルをつんだ宇宙船が不時着。
三つの目、鋭い爪の六本の手足をもつこの動物は、知性をもってるどころか、人の思考をみることまでできるが、それを隠している。
「フィルム・ライブラリー」Film Library 1946
アーレー・フィルム・ライブラリーでは映画を貸し出すと、注文と全然違う内容だというクレームが多く届いた。
観てみると、撮影の巧みな紀行もの、想像もつかないような特殊な機械装置の解説といった、変わり種フィルムばかり。
フィルムをプロジェクターにかけると、1946年と2011年のあいだでフィルムがタイムスリップするという、私が一読して気に入ったのは、これ、妙におもしろい。
「避難所」Asylum
不死の吸血異星人が地球にやってきた。この百年でようやく宇宙に飛び立つことできるようになったばかりの地球人は彼らの敵ぢゃないのか。
でも、なんか単純な活劇ぢゃなくて、話がややこしいほうへややこしいほうへ進んでくようで、ちょっと苦手かも、こういうの。
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男の風俗・男の酒

2018-09-09 17:35:50 | 丸谷才一
丸谷才一VS.山口瞳 一九八三年 TBSブリタニカ・ペーパーバックス
ことし5月の古本まつりで見つけた対談録。
なんか色あせてる感じだし、帯なんか切れちゃってるし、状態はよくないんだけど、私はこれまで見かけたことなかったものだから、そういうの見つけたときに買わないと後悔するので、とりあえず買った。
なんだか知らないけど『サントリークォータリー』というのに連載された対談だということで、だから酒が看板に掲げられてんだろうと思う、そんなに酒の話ばかりしているわけではない。
風俗ってのも、もちろん狭義のいわゆるフーゾクではなくて、「その時代や地域を特徴づける生活上のしきたり」(角川書店・類語国語辞典)なんかのことである。
丸谷才一は小説は風俗を重視すべしみたいな意見の持ち主なんだけど、
>生き生きとした態度で生きていくためには、どんなつまらないことであろうと、現世の風俗というものに関心を持つべきですね。僕はそれは、非常に大事なことだと思いますよ。それをやらないと老けちゃうんですね。小説家が、わりに老けないのは、それなんじゃないかな。くだらないことに関心を持つから気が若い。(p.57「文壇は“オール・カマーズ!!”」)
なんて本書でも言ってたりする。
んで、対談相手の山口瞳に向かって、あなたの書いたものの愛読者だと告げたうえで、
>山口さんは、風俗を観察する人間として非常に向いているんだな。僕はそれを手がかりにして、いろいろ考える。(p.46「山口瞳の会社員論――その読み方」)
だなんて言ってみたりする。
そういうふうに、どっちかっていうと丸谷氏が山口氏をもちあげるような展開が多いんだけど、それに対して、山口氏は最初はよくわからん的な態度にみえてたんだが、
>丸谷さんと話をしていると自分のだめなところが見えてくる。とてもタメになる。(p.112「早く故郷を忘れたい」)
とかって、だんだん理解が深まってくる感じになる。終盤のほうになると、
>あなたもだんだん僕と似てきたな、そういうふうに断言するところが(笑)。やっぱりこれは、うつるんだね。(p.172「本棚のあるホテルの話」)
って具合に山口氏の側からも波長が合ってきたことを認めるんだが、この言葉に対する丸谷氏の返しが、
>江戸後期の俳句に「うら枯れの人に欠伸をうつしけり」というのがありますけど、さしずめ僕が、うら枯れの人だな(笑)。
っていうのが、しゃれているったらありゃしない。
ほかにも、例によってところどころに丸谷才一のいろんなこと知ってる一面がでてきて、それがおもしろかったりする。
山口瞳が「イギリスなんか、小学校くらいまで歯列矯正がタダなんですってね」と言うと、
>歯が悪いと、西洋では社交界にぜったい出入りできないらしいですね。つまり全くの下層階級ということになってしまい、仕事にも差しつかえる。日本人は、西洋に行ったときそれでかなり失敗するという話を聞いたことがあります。(p.34「歯並びも男の風俗だね」)
とか。
イギリスを旅行したら、鉄道の案内が非常に不親切で、車掌も来ないから他の乗客に聞くしかないんだけど、
>そのうち、クロスワード・パズルをやっている客に聞けば、ちゃんと安心できる返事が返ってくるということがわかってきた。つまり安心しているからクロスワード・パズルができるわけで、これは、いつも乗っているイギリス人なんですね(笑)。(p.154「お節介な日本人」)
とか。
ホテルや旅館のよしあしの話では、
>なるほどな。僕には悪い日本旅館の見分け方というのがあって(笑)、玄関入ってすぐに階段があるというやつ、これはダメ。(p.169「いい日本旅館、悪い日本旅館」)
とか。
本書の大きな章立ては、以下の三つだけ、そのなかで短く細かくけっこう分かれてはいる。まえがきが山口瞳、あとがきが丸谷才一。
「男の酒」
「東京を語る」
「旅の楽しみ」
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ブラ男の気持ちがわかるかい?

2018-09-08 17:16:57 | 読んだ本
北尾トロ 2014年 文春文庫版
ことし5月に古本屋で買った文庫。
週刊文春で2008年ころ連載したコラムを、2010年に『全力でスローボールを投げる』として刊行したのを、改題したそうで。
タイトルは、ブラジャーを愛用する男が増えているという噂が気になって、秋葉原のコスプレショップに編集の女性と一緒に買いに行って、試してみたという一章に由来する。
というわけで、
>日々の暮らしで見聞きすることの中に、ときどき「ん? 何だよそれ」と気になるものがある。素朴な疑問、喉に刺さった小骨みたいなものだ。どっちにしても、放っておけばいずれ忘れるし、べつに困らない。(p.41「ゴルフ接待ってどんな感じか」)
って疑問に対して、自ら体験して挑んでみようというレポートもの、こういうのはおもしろい。
エッセイ教室とか、中高年向けパーティーとか、座禅カフェとか、いろんなところに潜入。
参議院本会議を2階席で傍聴していると、係員がきて「すいません。頬杖だけはつかないでください」って注意しにくるとか、そういう情報仕入れるの、好きです。
だいたいの章立ては以下のとおり。
・たしかめたい
・愛を探しに
・単独行動に打って出る
・ガラスの50代
・そして人生は続くのだ
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