many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

快楽としてのミステリー

2019-05-11 18:25:59 | 丸谷才一

丸谷才一 二〇一二年 ちくま文庫
これは今年になってからだっけかな、買った新刊の文庫。
なんか存在は前から知ってたんだけど、特にミステリーに興味あるわけぢゃないしとか逡巡してたんだが、やっぱ読んでみることにした、いままで他のエッセイ集とかでとりあげられてるミステリーはおもしろかったし。
買うまで知らなかったんだけど、これは単行本の文庫化ぢゃなくて、オリジナルの新編集の文庫ということらしい。
帯に「追悼」の文字あるから、そこで商売にしようとしたのかと思うとやれやれなんだが、まあいいや。
巻末の説明によれば、1953年から2011年のあいだに書かれた評論・エッセイ・書評から選んできたものだという。
巻末に書名と著者名の索引があるのはうれしい、それぞれの書評とかの最後にもちゃんと出版社名とか文庫名とかついてるし、でも古いものが手に入るとは限らないが。
そんなわけで、よく見れば、最初の章の鼎談をはじめとして、前にほかの本で読んだことのあるものも含まれているが、書評なんかは単行本未収録のものも多いんで、まあそのへんは貴重だと言ってもいいのかもしれない。
いろいろ並んでるけど、私はミステリーマニアではないので、いくら素晴らしい紹介のされかたしてても、片っ端から読んでみようかなんて気には全然ならない。
いまのとこ気になったのは、デイヴィッド・ベニオフ「卵をめぐる祖父の戦争」と、クレイグ・ライス「素晴らしき犯罪」くらいかな。
それよか、
>「推理小説」なる新語をわたくしは好まない。特殊な場合を除いては常に「探偵小説」といふ言葉を使ふやうにしてゐる。(p.138「新語ぎらひ」)
なんて論に耳を傾けてみるほうがおもしろい。なんで推理小説という言葉を嫌ってるかというと、
>つまり、「推理小説」といふ言葉が生れて以来、その言葉の作用を受けて、ヨーロッパの本場でいふdetective storyとはおよそかけ離れた、中間小説に殺しがはいつただけの代物が日本でのさばつてゐるやうな気がするのである。観念はイメージよりも弱い。殊に、観念的な伝統が淡く薄い日本では弱い。そのことをはつきりと教へてくれるのが、このやうな最近の現象であらう。(p.140-141同)
とわが国の文学というか文化というかへの批判に結びつく。
探偵小説の良さについては、べつのとこで、
>ぼくは、探偵小説は大人の童話であるといふ考へ方を、探偵小説はパズル遊びであるといふ考へ方よりも遙かに好んでゐる。(略)
>トリックだのアリバイ崩しだのは、ぼくの関心のなかの極めて小さな部分しか占めてゐない。もつと古風に、近代人の趣味に合せたロマンチックな幻想として、探偵小説を愛するのだ。(p.375「ブラウン神父の周辺」)
みたいなこと言ってて、だからこういうひとの推奨する小説は安心して信頼できるんだと私は思っている。
著者自身が翻訳をすることもあって、外国のものの翻訳の出来についてもときどき評をくわえているが、それはともかくとして、
>チャンドラーは本当は純文学を書きたかつたのだけれど、その線でゆけば自分の魂をさらけ出さなければならぬ。はにかみ屋の彼にはとてもできない話で、それで娯楽ものを書いた、といふ説がある。よく言はれるこの解釈にのつとつて訳したのが清水訳で、それに逆らひ、彼の魂をあらはにしたのが村上訳、とも言へよう。(p.302「ハードボイルドから社交界小説へ」)
なんていって、村上春樹訳『ロング・グッドバイ』について、清水俊二訳『長いお別れ』との比較をしているが、こういうの読むと、古い訳でしか読んだことなくて、ストーリーは一緒なんだから新しいの読まなくたっていいでしょと思ってた私なんかはグラグラ揺れてしまうのである。
I ハヤカワ・ポケット・ミステリは遊びの文化
II 深夜の散歩―マイ・スィン
III 女のミステリー
IV ミステリーの愉しみ―ホームズから007、マーロウまで
V ミステリー書評29選
VI 文学、そしてミステリー

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光る指先

2019-05-05 18:11:05 | 読んだ本

E・S・ガードナー/船戸牧子訳 昭和57年6版 ハヤカワ・ポケットミステリ版
長時間の移動とかしなくなったんだけど、ちょっとしたひまつぶしに電車のなかとか待ち時間で読むのに、やっぱペリイ・メイスンシリーズはいい。
原題「THE CASE OF THE FIERY FINGERS」は1951年の作品。
メイスンのとこへ相談にきた派出看護婦は、仕事で看病している夫人にこのクスリを飲ませろって、夫のほうからあずかったけど、これって毒殺するためぢゃないかと言い出す。
相談料わずか一ドルで話をきいた弁護士は、錠剤の成分の分析なんかはするが、そもそもこの話は看護婦がアリバイをつくるために自分を巻き込んだんだろうってことに気づく。
いまごろヤバいことになってんぢゃないかと、「来いよ、ポール、行って死体をみつけよう」なんてとんでもないセリフ言って、探偵のポールと現場へ行くんだが、幸いなことにまだ人は殺されてない。
そこでは、問題の看護婦が、宝石泥棒の疑いをかけられてトラブルになってた。
例のクスリを夫人に飲ませようとしてる夫がヤな奴なので、メイスンは「反対訊問ができるという楽しみのためだけで」弁護を引き受けることになる。
で、裁判では、疑ってる側の証拠というのが、宝石箱につけておいた蛍光塗料が看護婦の指についてたっていうだけなので、メイスンはそれは箱にさわっただけで泥棒した証明にはならないとかって感じの反対訊問でやっつける。
そんな前段があったあとで、看病されてる夫人の妹がメイスンのとこにやってきて、姉は財産目当ての夫に毒殺されようとしているなんて相談にくる。
ここで何だか書類的には不備のあるような遺言書も持ち出されて、誰がいいもんで悪もんなのかあやしいとこもあるんだが、ほどなく人が死に、メイスンは被害者の妹の弁護を引き受ける。
被害者の死因は砒素中毒らしいんだけど、メイスンが前に分析にだしたあやしげなクスリのなかみはアスピリンだって結果は出てるし、誰がいつどうやって毒を飲ませたのかがよくわからない。
でも裁判が始まってみると、被告が砒素を買って持ってたってことが明るみにでて、ただでさえ不利なのが、さらにひどくなる。
メイスンは、なるべく検察のやりたいようにやらせておいて、そのかわりに反対訊問の間口を広くとるというテクニックをつかい、またしても件の夫をやっつけようとし、あんたの前の夫人が死んだのも砒素中毒ぢゃなかったのかなんて反撃をする。
ところが、最終的に事件が解決するのは、関係者の家に盗聴マイクを仕掛けて録音するという荒業の賭けに出た成果で、それ指示された探偵のポールが、そんなこと出来るもんかとか、つかまったら探偵免許取り消されちゃうとか言う無理難題レベルのことを実施できちゃったからということになる。
そういうのって、あんまりフェアとはいえないなーというか、なんか邪道っぽいと思う。
誰かの超人的活躍とか、捜査や調査の幸運によりかかって、解決ができてしまうというのは、どうなのって、ご都合主義って感じがしちゃう。

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図解初めての禅

2019-05-04 18:11:38 | 読んだ本

ひろさちや編著 平成元年 主婦と生活社
これも先月実家の押し入れからサルベージしてきたもの。
サブタイトルは「禅の世界、禅語、坐禅から、禅寺めぐり、禅宗宗派ガイドまで」ということで、そういうもの。
なんでこういうの持ってるかっていうと、そのころ、昭和から平成にかけてのころ、興味があったからと言うしかない。
実際にお寺に行って坐ったこともあるしね。
その後まったく仏教とかからは距離おいちゃったけど、このさきさらにトシとったらなんか心境変化すんのかな、わからない。
でも、これタイトルは易しめだし、“図解”だし、簡単なものそうにみえるけど、今回読み直してみたら、けっこう中味厚い。
各ページに画はたしかにあるんだけど、文字の情報量もけっこう詰まってる、なかなか詳しいと思う、正直読むの疲れる。
坐禅のやりかたとか、寺のガイドとかにとどまらず、けんちん汁のつくりかたまであったのには改めて気づいたら笑ったけど。
しかし、まあ、仏教ってのは、本読んで形を勉強するもんぢゃなくて、やるかやらないかだけですから、こういうの読むだけでは何も見えてこないとは思います。
第一章 禅の世界 禅の魅力はここにある
第二章 坐禅 これが禅の第一歩
第三章 禅の歴史 それは釈迦から始まった
第四章 禅僧のプロフィール なぜか型破りの名僧が多い
第五章 禅語・禅問答 一言一句に禅がある
第六章 禅寺めぐり 名刹ベスト52
第七章 禅の修行 ひと目でわかる雲水の生活
第八章 禅と食べもの 身をきよめる精進料理あれこれ
第九章 禅宗宗派ガイド 知っておきたい宗派の特徴

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夢助

2019-05-02 17:44:18 | 忌野清志郎

忌野清志郎 2006年 ユニバーサルミュージック
さあ、キヨシローを聴こう。
「夢助」は、「KING」と「GOD」に次いで出たアルバム。
でも、思えば、2000年代に入ってからの私は、キヨシローの熱心なファンとはいえなかったんぢゃないかと思う。
こういう新しいのについていくというか支持しようとかってしてなかったし。
古いとか新しいとか しゃらくさいことさ
って、いま改めて聴いたら、キヨシローはうたっている、さすがだ。
しかしキヨシローを夢中になって聴いてたころに比べると、キヨシローをそれほど聴かない毎日を送る私は、つまらない人間になってったと思う。
いま、すこし生き方を変えつつある時期にさしかかってるし、またキヨシローを聴いて、無くしてしまったなにかを取戻したいという気になってきた。
「どんなに苦しいことがあっても、絶対に夢を忘れちゃいけないよ。」って誰か言ってたな。
それにしても、キヨシローが亡くなって、10年か。
生きてたら68歳? 何を言ってくれるんだろう?
きっと、新元号のレイワつかって、くだらないダジャレでもとばしてたような気がする。
01.誇り高く生きよう LET'S LIVE WITH PRIDE
02.ダンスミュージック ☆ あいつ DANCE MUSIC ☆ THAT GIRL
03.激しい雨 POURING RAIN
04.花びら FLOWER PETAL
05.涙のプリンセス PRINDESS OF TEARS
06.残り香 THE SCENT OF YOU
07.雨の降る日 ON A RAINY DAY
08.THIS TIME THIS TIME
09.温故知新 LEARNING FROM THE PAST
10.毎日がブランニューデイ EVERY DAY IS A BRAND NEW DAY
11.オーティスが教えてくれた OTIS TAUGHT ME
12.NIGHT AND DAY NIGHT AND DAY
13.ダイアモンドが呼んでいる THE DIAMOND IS CALLING
14.あいつの口笛 HIS WHISTLE

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