E・S・ガードナー/信木三郎訳 1961年 ハヤカワ・ポケットミステリ版
ほこり被ってるのを引っ張り出してきたのは1990年の6版だが、そのころよく読んでいた、いまでもヒマつぶしに読むのにはストレスがなくていい、ペリイ・メイスンシリーズ。
原題「THE CASE OF THE MOTH-EATEN MINK」は1952年の作品。
仕事を終えたメイスンと秘書のデラがなじみのレストランに入ったところから始まる、店の主人は目立たないブース席に案内してくれる気が利く男なんだが。
主人が相談をもちかけてきて、最近やとったウェイトレスが店の裏口から出て行ってしまって戻ってこない、きょうは給料を払う約束なのだが、それを受け取る前に忙しい仕事中にいなくなってしまった。
見てた従業員によるとエプロンをはずすなり走っていったらしい、外はすごい寒いのにコートも着ずに、ちなみに戸棚に残されていたそのウェイトレスのコートはミンクなんだが虫くっちゃってる。
そこへ警官がやってきて、飛び出したウェイトレスは道で車にひかれてケガをしたという、店のなかで何か危険を感じることが起きたんで走り出たんだろうということだが。
誰か顔見知り、それもヤバい客が来たんで仕事放りだして逃げたんだろうと、店内のあやしい人物に目をつけて、メイスンはデラに尾行を命じたんだけど、敵も用心深くてうまくいかない。
何事が起きているのかと調べ始めていると、ミンクのコートに入っていた質屋の預かり証の品物は、拳銃だと判明する、それも一年前に若い警官が殺された事件の凶器といういわくつき。
証言をあつめるうちに、ミンクを彼女にやったのは店の主人だとか、ウェイトレスは警官殺しの容疑者のガールフレンドだったとか、みんな最初からつながりがあったことがわかってくる。
レストランの主人がメイスンに電話してきて、やばいことになったので、あるホテルの一室まできてくれという、用なら弁護士事務所に来いとか言っても拒否して、こっちに来てくれという。
指定された時間にその場所に行くと、呼び出した本人は来ないで、例のウェイトレスだと自称する女がいた、メイスンは簡単に信用したりしないけど。
そうこうしてるうちに、シリーズいつものとおり、ホテル内で殺人事件が起きて、店の主人とウェイトレスがのっぴきならない状態になる。
ホテルの部屋に録音機が仕掛けてあったとか、よかれと思って起用したドレイク探偵事務所の女従業員が感情的なもつれもあって検察側に有利な証人になっちゃうとか、どんどん状況が不利になる。
でも、くたくたになってるドレイク探偵にいわせると、メイスンは、
>彼は、昔ながらの人間発電機だ。どんな人間のエネルギーの消耗より、彼のエネルギー製造のスピードのほうが早いんだ。もし、ぼくらが、うまいやり方で彼に電線をとりつけ、くたびれた百万長者どもに、余剰エネルギーを売りつけりゃあ、すごい大金持になれるんだがな(p.168)
という調子なので、戦いつづけることをやめない。
お約束どおりに、絶対不利な状況で裁判が始まるんだが、メイスンは弁護人であると同時に、現場にいたことから検察側の証人としても召喚されるという珍しい立場におかれる。
で、うまく切り抜けるメイスンは、反対尋問を足掛かりに事件の真相を解明する、いつもながらあざやか。
法廷シーンが読んでて気持ちいいのは、証人がウソつかないし、記憶にございませんとか見え透いたシラきったりしない、フェアなところに根差していると思う。
日花弘子 2014年第4版 SBクリエイティブ
まさか、こういう本をここに出してみるようなことがあるとは思わなかったが、前回のパソコンで統計解析しちゃう話のつづきで。
これは2014年か、たしかゴールデンウィークに出張先であてもなく入った大きな書店で、使いやすそうにみえてつい買っちゃったもの、その日に使うようなものぢゃないから帰ってから買えばいいのに。
もちろん読物としてアタマっから読んでくわけではなく、仕事で数字使うときに、これどうやんだっけって、わかんなくなっちゃったときにササッと調べるためのもの。
サラリーマン生活の最後の5年はだいたいこれで用事済ませちゃったかな。
実際の仕事では、多変量解析とかすることはほぼなく、平均だしたり何かのパーセンテージだしたりするのがせいぜいだけど、検定とかしないとねえ、有意ぢゃない数字で議論してもしょうがないし。
あとは、Excelの関数が、ビミョーに昔とちがうものあって、ちゃんと習ったりしたことないから、違いがよくわかんなかったりするので、たまには新しい実用書もあるといいかなと。
CHAPTER 01 統計とは
CHAPTER 02 統計の基本
CHAPTER 03 回帰分析
CHAPTER 04 母集団と標本
CHAPTER 05 確率分布
CHAPTER 06 推定
CHAPTER 07 検定
CHAPTER 08 分散分析
ちなみに、その前の、もっとごちゃごちゃ多変量解析してた時代の仕事は、以下の2冊をつかってた。
『すぐわかるEXCELによる統計解析』 内田治 1996年 東京図書
『すぐわかるEXCELによる多変量解析』 内田治 1996年 東京図書
私がはじめてデスクトップ機買ったのが1993年かな、表計算ソフトで重回帰分析できちゃうんだって知って、1997年からノートパソコンで仕事したような気がする。
(周囲には、なかなか何をやっているのか理解されないけど、多変量解析(笑))
小林良彰編 2005年 慶應義塾大学出版会
ことし2月に、実にひさしぶりに、学生んときの関係の集まりに出たんだが。
そんとき聴いた話とか、むかしの資料ごそごそ出したりしたことから、なんか当時勉強してたことに対する興味をまた思い出した。
どうでもいいけど、勉強したこととは直接関係ない仕事にその後私は進んだんだが、教わったものの考えかたのようなものは、とても役に立った。
とはいえ、自分のやりたいことをそういう手法で他人に提示できるようになったのは、ガッコ卒業して十年以上経ったころからかな。
30過ぎてからガッコ入りなおしたら、もうちょっと上手に研究ができたんぢゃないかと思う、自信があるわけではないけど。
さてさて、そんなフラフラした興味程度で、なんかそういうのに接触してみたくなって、わりと容易に手に入れることができたんで読んでみたのが、これ。
「叢書 21COE-CCC 多文化世界における市民意識の動態」っていう全15巻のシリーズの第1巻ということらしいが、ほかのものを読んでみるつもりはいまんとこない。
なかみについては、現代日本の政治についてのいろんな研究論文で、タイトルのとおり、投票行動(選挙)を有権者意識ってことで争点態度とか業績評価とかと関連して説明するもの。
一読したなかでおもしろかったのは、第5章「日本における政府支出と有権者行動」かな。
2001年参院選の比例代表で選出された与党候補とその後の予算における補助金の関係で、旧建設省河川局出身のある候補者の得票率が高い地方自治体ほど河川補助金が多く配分され、農林水産省旧構造改善局出身のある候補者の得票率が高い地方自治体ほど農村振興補助金が多く配分されているという、あざやかな証明。
公共事業を扱う省庁の政府支出ってのは、マクロ経済変数の影響はなくて、それよりも政治的な要素で決まっているっていうこと。
もしかしたら、21歳のときの自分が、やりたかったのはこういうことだったのではないだろうかと、ふと思ってしまった。
それにしても、序章で編者がおっしゃってる次のようなことは、基本中の基本ですねえ。
>(略)膨大なデータを用いて複雑な多変量解析を行うこと自体は楽しいことであるが、投票行動研究は決してゲームではない。言い換えると、なぜ、投票行動を説明したいのか、あるいはなぜ、政党支持を説明したいのかという問題意識を常に明確にしていかなくてはならない。そして、最終的には、そうした分析の結果を踏まえて、どのような提言をしたいのかを明確にしてもらえれば幸いである。(p.26)
提言は大事、ってのは誰でもわかることなんだけど、そのまえの「多変量解析を行うこと自体は楽しい」ってのがツボにきて笑ってしまった。
計算センターの端末に向かってなんかわけわかんないプログラムいっぱい書いてた身としては、エクセルのツールで重回帰分析ができてしまったときは驚いたもんな。
っていうか、それ、やっぱ楽しかったから。(その前段ではエクセルで、分散がどうとか関数入力したりして、自力で回帰分析検定とか(※6月7日訂正。回帰分析はやっぱ最初から分析ツールだったような気がする、関数でやってたのは検定や相関くらいまででは。)したりしてたけど、やっぱ楽しかった。)
コンテンツは以下のとおり。
第1章 わが国における有権者意識研究の系譜と課題 小林良彰
第2章 日本における政策争点とその変容 堤英敬
第3章 日本における政策争点に関する有権者意識とその変容 平野浩
第4章 2004年参院選における政策争点と有権者意識 谷口尚子
第5章 日本における政府支出と有権者行動 大和田宗典
第6章 日本における業績評価と有権者意識 大和田宗典
第7章 日本におけるコートテール・イフェクトと有権者意識 森正
第8章 日本におけるマス・メディア報道と有権者意識 河野武司
第9章 日本における地方政治と有権者意識 河村和徳
第10章 日本における地方選挙と有権者意識 石上泰州
第11章 環太平洋地区における価値観と社会・政治参加、もう1つの側面 池田謙一・小林哲郎