皆さん、今晩は。才村です。
前回、ユニクロの手法を取り上げましたが、今回は、イトーヨーカドー出身であり、ユニクロの成長を陰で支えたコンサルタント大久保恒夫氏を取り上げます。自らの経験に基づき、社員へは基本的なことの励行を説くと同時に、売れ筋商品を買ってもらう工夫を凝らしています。
心のこもった挨拶の励行、売れ筋商品の大量陳列、行動での人事評価、数字へのこだわり、人が変わるのを待つ教育、いずれもユニークで面白く、参考になります。
1.大久保氏は、2007年から食品スーパー成城石井の社長を務め、お客様に喜んでもらう売り場作りのため、現場のスタッフに「挨拶をしっかりすること」「清潔感のある売り場づくりを実行すること(クリンリネス)」「品切れをなくすこと」を実行して固定客を増やすようにと指導していた。
⇒お客様は挨拶されても儀礼的なものだと思いがちですが、大久保氏は、心のこもった挨拶をいつもしていると、苦情が減り、お褒めの言葉が増えるとその効果を述べています。私も気持ちよく挨拶をして、しかも親切な店員がいれば、また、そのお店で買いたいという気持ちになります。
「清潔感のある売り場づくり」は食品スーパーなら当然のことで、清潔好きな女性なら、棚の奥に少しでも埃が有れば、二度と行かないでしょうから納得できます。「クリンリネス」には、清潔の意味だけでなく、売り場の商品の整理・整頓も含まれているとのことで、なるほどと思います。
「品切れをなくすこと」と聞くと、商品仕入れ権限を持つ各店舗は、在庫が増えたり、売れ残ったりして責められないかと、普通は気に掛りますが、実際には、売りたい商品、人気商品を選定し、それら高利益率の商品を大量に陳列し、品切れロスをなくすべしということであり、商売上手です。
昨年の1月に行った成城石井大宮ルミネ店はスペースが狭いですが、店員による商品紹介POPや世界各国から輸入した商品が多種類陳列されていました。
また、昨年の11月には、東京ドーム近くの成城石井ラクーア店に行ってきました。そこでは、世界各国の珍しいウィスキー、ワイン、コーヒー、紅茶、チョコ、ナッツが多種類陳列されていました。赤字で大きい値段表示も見やすいし、通路も清潔で広く取ってあります。都内には食にこだわる若者とか富裕層とかが多数居住、勤務しているでしょうから、ユニークな高付加価値商品を適正価格で販売できれば高い利益が得られそうです。
2.「どれだけお客様に満足されているか」が唯一の指標であり、お客様に喜ばれることをすれば、褒められ、表彰される。売上での人事評価はない。数字を上げることを目標にすると、短期的な成績向上に躍起にならざるを得ない。また、自分が所属する部門の数字だけを向上させようという心理が従業員に働く。
⇒自店の売上高増加、利益増加を達成すれば、店長は評価されるのが普通ですが、チラシを打ったり、特売を実施したりして、長期的に売上が上がったことがないそうです。自社に好意をもっている固定客が増え、少し高くても魅力ある商品を買ってくれれば、自然と売上が伸び、利益も増えるというのが、大久保氏の経営者としての信念です。
お客様に喜ばれることをすれば表彰されるということから、新人であっても地域の踊りで活躍すれば表彰するという制度がユニークな帯広の六花亭製菓を思い出しました。
3.小売業は変化が速い。週次でどう指示を出すか、月曜日が勝負。単品売上高、クレーム数、お褒めの言葉の数など、穴の開くほど見ている数字に基づき、意思決定して手を打つ。本部の指示を各店舗が実行に移す。各店舗は、陳列の仕方、POPの作り方、お客様への提案の仕方に創意工夫を凝らす。そのための人材研修費は惜しまない。人を変えるのではなく、人が変わるのを待つ。
⇒ユニクロの週サイクルでの単品ごとの販売進行検証と合致しています。また、本部の指示を単に画一的に実行させるだけでなく、各店舗の従業員の自主性を大切にし、成長の機会を与えていることは流石だと思います。
人材研修費については、最近読んだコンサルタントの本で、業績が悪化したゴルフ場の社長が、唯一残した研修講座をポケットマネーで継続し、そのうち、最悪期を脱したというコラムを読み、日々の業務を遂行する従業員育成の大切さを知らされました。人材育成にお金を掛けることによって、従業員のスキルだけでなく、会社からの期待が感じられ、きっと会社への貢献意欲、信頼感が高まることでしょう。