前回は、しまむらをユニクロと比較しましたが、今回はしまむらの低コストな物流を調べました。以前、ビール業界出身のコンサルタントから、物流費が企業経営の重荷になっていることと、SCMと在庫管理が重要であることから、「物流管理」が今日的テーマになっていると聞きました(あるビール会社の出荷物流費は売上高の3%を占めているそうです)。製造業出身の私は製品の価値が作り込まれる工場内の業務を重視していて、物流には関心がありませんでした。
しまむらの藤原前社長は、会社規模が小さいときから、自社の努力でコスト削減できる物流に着目し、自社のノウハウを盛り込んだ情報システムに基づき物流で稼ぐ仕組みを地道に整備してきました。創業者である島村元社長の「チェーンストア展開したい」という思いを受け、ある地域にドミナント出店する前に、まず中核となる物流センターを配置したように、次の展開を考えて、用意周到に先手を打ってきました。それらの点で藤原前社長には先見性、構想力がありました。
そのような努力の積み重ねによって、経常利益を着実に増やし、今や自己資本比率80%のしまむらですが、最近1年間、株価が8000円前後であって上昇しないことは、強いけれども地味過ぎる会社ということでしょうか。
1.物流センター
物流センターでは、スロープを付けたベルトコンベア上で規格サイズの段ボール箱を重力によって流していて、バーコードスキャンで発注コードを自動確認するだけであり、徹底的なオートメ化が進んでいる。また、その設計は社内のチームが行っている。「流通業のトヨタ」といわれ、ウォルマートやトヨタ自動車が視察に訪れた。
⇒初期投資額は多いが、オートメ化により最小限のスタッフで運営できるので、人件費を軽減できる。また、コア・コンピタンスとして社内に物流センター設計のノウハウを蓄積できる。
2.物流センターと店舗間
当初から専用チャーター便による店舗巡回の夜間定時配送している。専用チャーター便のドライバーは、夜間に店舗で段ボール箱を下して、店舗間移動のための段ボール箱を積み込むだけである。
⇒夜間運行なので走行効率が良い。空荷で走ることはないので、積載効率が良い。
3.店舗内
開店前の朝一番から、店員が夜間に配送された段ボール箱から商品を取り出し、売場で検品や陳列をする。
⇒売場で作業するので、専用作業スペースを減らせる。出勤と同時に作業するので、店員の手待ち時間がなくなるし、開店中は顧客対応に専念できる。
4.店舗間
しまむらの特長である「横の物流」である店舗間移動(最長3カ月間売れなかった商品を、売れそうな店に再投入すること)は、コンピュータが自動的に移動先店舗と数量を判断し、指示する。
⇒店舗間移動で販売機会を増やし、売価変更率を5%程度(大手スーパーでは11%超)に抑えている。店舗間移動のための仕分けは物流センターで行うので、効率的である。
5.納入業者と物流センター間
納入業者はどの物流センターに納入してもよい。納入業者とはウェブEDI(電子商取引)で結ばれているので、物流センターで入荷検品するだけである。
⇒納入業者は一番近くの物流センターに納入すればよいので好都合である。しまむらは価格交渉で有利になる。
6.物流センター間
路線便として、大型トラックを定時運行させている。
⇒物量が多いので、積載効率が良い。荷物1個当たりの配送コストは、約50円と宅配便の500~1000円に比べてはるかに安い。
7.生産基地である中国と物流センター間
10月19日付日経新聞によると、今まで国内の卸の物流拠点で行っていた検品・値札付け・店舗別仕分け作業を、商品の90%を占める生産国の中国に移管する割合を3割から数年後に5割まで拡大する。また、コンテナでの一括輸送を増やす。
⇒中国の人件費上昇や原材料価格の高騰を物流センターまでの物流コスト削減で吸収することによって、30%の粗利益率を今後も確保できる。