今回は最近読んだ本、
『海賊と呼ばれた男』
(百田尚樹、講談社、上下巻)
について紹介します。
(読んでいない人にはネタバレになりますからなるべく本編には触れない内容にしたいと思います。)
実は私は最近「小説」はほとんど読んだことがなかったのですが、この本は読み始めたら止まらず、気が付いたら読み終えておりました。(上下巻合わせて700ページ以上あります)
この物語は本編のどこにも書いておりませんが、出光興産の創始者、出光佐三をモデルにした小説です。
主人公の人生を物語の中心に、戦前・戦中・戦後(第二次世界大戦)の時代背景の中、個人経営の石油小売業が大きく成長していく過程が書かれております。
しかし、この物語に出てくる企業や人は現代では信じられないようなものばかりです。
まずこの企業、近代企業やその経営者、経営理論なんかと対極にあるような考え方をしています。
「従業員は家族で財産」、「日本のためなら自社が不利益になっても関係ない」などなど・・・・
読んでいる最中、「オレならこんな決断できない(しない)だろう」と思う箇所が多々出てきます。
代表的な点としては、終戦直後、仕事がない状態で重役が進言する「リストラ」を一切行いません。
最初の私の感想は、「普通、リストラするでしょ」でした(笑)
また、資金繰りも相当厳しいのに、次々に金を借りて事業を行います。
しかも、直近の必要資金ではなく、「将来こうなるだろうから先駆けてやる」といった事業に対する投資がほとんどです。
読んでいくと話の内容に目が行って忘れがちになりますが、相当の借金をしていきます。
無粋な私は「あの時借りた金はどこで返しているのかな?」とか考えてしまいました。
しかし何より登場人物の人間性がすごいです。
すごいのがどこか、一言でいうと、「自分の利益を考えていない」点だと感じました。
・国のためなら自社の不利益なんてお構いなしの社長
・どんな困難な仕事も生き生きとして働く従業員
・有望な企業のためならリスクを取る銀行や保険会社
・日本の発展のために尽くす官僚
・・・・・
みんな「利益」より「将来」を見据えているように感じました。
といった具合に、個々に感動する点や凄味を感じる点を挙げると枚挙にいとまがないですが、読み終わった後に感じたことは
「人間、人生、どう生きるか」
という点でした。
恐らく小説ですから、全てが事実ではないでしょうし、脚色もあるでしょう。
でも、この本で私の心に残ったのは混乱期を死にもの狂いで生き抜いた人たちの生き様でした。
「100年に一度の大不況」、「1000年に一度の大地震」などの混乱期にある日本ですが、その中でどのように生きるのか、考えさせられる1冊になりました。
皆さんにもお勧めの1冊です。
さて、話は変わり、この小説にはほぼ男しか出てきません。
しかも大体、暑っ苦しいようなおっさんや爺さん、あと嫌なヤツもいっぱいいます(笑)
唯一の女性といっていいほど出てくるのが、主人公の奥さんです。
ネタバレになりますが、主人公が終戦直後、会社が潰れる危機で「もしかしたら乞食になるかもしれない」と奥さんに言うと、
主人公に対し、
「(乞食を)一緒にやってくださるのでしょう。だったら、平気です」
という奥さんの返しの一言。
ああ、、、、、こんな嫁さんが欲しい
それには、俺が『男の器』を上げなきゃダメか(笑)