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とある落語家と新人教育

2016-05-13 00:00:00 | OB生の近況報告・活動報告

13期生の西村です。

とあるテレビ番組で落語家の立川談春さんが
「ウチの家元は過激な発言やエピソードが出回っているんですけど、落語の修行に関しては非常に真面目だったんですよ」
というようなことを言っているのを聞きました。
家元とは、昭和を代表する落語家、立川談志師匠。
私も「なんとなく過激な人」というイメージはあるものの、全く落語には興味がなかったので知らない人でした。

そんなある日、立川談春さんの「赤めだか」という本に出会いました。
2008年の本ですし、2015年にドラマにもなったらしいので既にご存知の方もいるかもしれませんが、
落語家なのに修行と称して築地の場外市場の店で配達をしたとか、面白い弟子仲間や師匠連中の話などが書かれている本です。
この中で立川談志さんが17歳で弟子入りしてきた談春さんに落語を教える様子が描かれております。

少し引用します。(途中、略)

「これはオレの趣味だがお辞儀は丁寧にしろ。きちんと頭を下げろ。
次に扇子だが座布団の前に平行に置け。
お辞儀が終わったらしっかり正面を見据えろ。堂々と見ろ。
客席の最後列の真ん中の上、天井のあたりに目線を置け。
キョロキョロする必要はない。
マクラの間に左、右と見ていくためにはキャリアが必要なんだ。
お前はまだその必要はない。
大きな声で喋れ。加減がわからなければ怒鳴れ。
怒鳴ってもメロディが崩れないように話せれば立派なものだ。
そうなるまで稽古しろ。
俺が喋った通りに、そっくりそのまま覚えてこい。
物真似で構わん。」
(赤めだか P,72 立川談春著 扶桑社  ISBN978-4-594-07362-6)

私も現在勤務する会社では社歴が長い方なので、この時期は新人に仕事の説明をするという依頼を受けます。
そういった新人教育に対して、談志さんのこの言葉は非常に参考になると感じました。
私がどのような点で参考になると感じたかというと、

一般論なのか、自分の考えなのかはっきりさせる
「これはオレの趣味だが」と始めれば、聞いている新人は「一般論ではなく、この人の考えなのだな」
とわかり、他の人の考え方や一般知識との比較対象として扱えて、知識が定着しやすいと思います

指示が具体的
「扇子だが座布団の前に平行に置け」、「天井のあたりに目線を置け」「加減がわからなければ怒鳴れ」
「俺が喋った通りに、そっくりそのまま覚えてこい」
新人なら、まずは具体的に教えることが最初の段階では必要であり、こういわれれば新人も行動しやすいはずです

目指す場所と最初の目標を教える
「お前はまだその必要はない。」
まずはこれができるようになればよい、と教えられれば右も左もわからない新人の行動指針ができ、
できる人間を見たときに変な劣等感を抱かずにすみます。

真似することへの正当化
「物真似で構わん。」
新人が仕事をできるようになる近道は先輩や上司の「物真似」だと思います。
この物真似を教える先輩や上司が「物真似でいいからやってみろ」と言ってくれれば、
新人も行動を起こしやすいと思います。

このような点です。
翻って、自分の教え方はどうだったのか?
最初の目標を提示することはできていなかったし、具体的なシーンが想定できるアドバイスもどれだけできていたか怪しいものです。
これらの点を心がけて、今後の新人指導に当たりたいと感じました。


そしてまた、教える方が心しておかなければならない点についても考えさせられました。

「よく芸は盗むものだというが、あれは嘘だ。
盗む方にもキャリアが必要なんだ。
盗めるようになれば一人前だ。
教える方に論理がないからそういういい加減なことを言うんだ。」
(同上 P,71)

教える方には論理が必要だと言っています。
論理なく教える人を「いい加減」と断じています。
この一言だけでも立川談志師匠がただ過激なエピソードをもつ落語家ではない、ということが伝わってきます。

診断士として、新人教育を行う先輩社員として、教え方に論理を持つということが非常に重要であると心に刻み、これらの談志師匠の教えを今後の新人教育に役立てたいと思いました。

コメント (4)
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