American IV:The Man Comes Around / Johnny Cash (2002)
アメリカン・レコーディングスのシリーズ4作目。そして生前最期のオリジナル作品でもある。カヴァーしているアーティストはナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)、ディペッシュ・モード(Depeche Mode)、ポール・サイモン(Paul Simon)、スティング(Sting)、ビートルズ(The Beatles)、イーグルス(Eagles)、ハンク・ウイリアムス(Hank Williams)とさらに多彩になっている。
まず何と言ってもオリジナルの1曲目からすごい。キリスト教的な終末を歌いながら曲調は決して暗くなく、力強い。そしてナイン・インチ・ネイルズの名曲「Hurt」。カヴァーされたトレント・レズナー(Trent Raznor)自身が自分の曲なのに聴いて泣いたという素晴しい出来。以前にも取り上げたが、これはぜひマーク・ロマネク(Mark Romanek)監督のPVで見て欲しい。プロモ・ビデオ史上屈指の名作。キャッシュの姿と声はもうヨタヨタだけれど、この歌詞を歌うとものすごいパワーが押し寄せてくる感じ。
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YouTube: Johnny Cash - Hurt 1080p Upscale *Best Audio on Youtube*
一見バラバラな選曲に見えるが、どの曲にも彼と神、宗教、生命との関わりを歌った曲として捉えると、すぐそこにやってきている「死」というものに真正面から向き合っていることが分かる。でも、そんな事なかなか出来るものではない。実際にこのPVでは「最期の晩餐」をイメージさせてもいて、PVに出演している妻ジューン・カーター(June Carter)が翌年に死去、そしてジューン(彼女の半生もすごいものだった)を愛し続けたキャッシュ本人も後を追うように同年死去する。
これはアーティストとプロデューサー、そして映像作家の思想が見事に一致し、仕事が完璧に達成された稀有な作品だと思う。このアルバムをキャッシュ存命時に聴けなかった事がくやしい。
オークションにて購入(¥738)