岐阜市の表玄関である岐阜駅を北へ向かう長良橋通り。ふた昔くらい前まではまだ休日ともなると賑わっていたこの通りも今は昔。デパートや大店の撤退が続き、見る影もない。細々と営業を続ける店もなんだか活気が感じられず、昔を知る人間にとっては隔世の感。その通り沿いに店を構える創業大正3(1914)年の老舗和食店「武蔵野本店」。蕎麦もうどんもご飯ものもあるいわゆる大衆食堂だが、釜飯が名物らしい。
店に入ると年季の入った小テーブルとイスが並んでいて、小さなスペースの小上がりもあった。向かいの棚には結構な数の漫画が並んでいて一瞬不安がよぎるが、とりあえず席に着き、メニューの中から冬季限定の「かき釜飯」を注文。「20分ほどかかりますが…」と言われたがもちろんOK。しっかり鉄釜で炊かれるので楽しみだ。ここはひとつ漫画でも、と漫画を手に取る。後から分かったのだが、ここの店主の郷土愛から岐阜出身の作家の作品など、岐阜にまつわる漫画が集められているのだそう。なるほど。古い店ではあるが、次から次へと客が入っていて、安定した人気のある店であることが分かる。
漫画のお陰で待つ時間もあまり長く感じず、年季の入った黒い鉄釜に入ったかき釜飯が運ばれる。炊けたばかりだから熱々。早速、木の蓋を取ってみると…なんともいい牡蠣の香り。しっかり牡蠣のエキスを吸い込んだご飯は艶々としていて、炊き加減はやや硬め。もちろん鉄釜なので、場所によって軟らかさの加減や焦げを含む味は違う。味付けは割りとしっかりめで、牡蠣のサイズは普通。個人的にはもう少し薄味の方が好きだけど。いくつ入っているかは数えなかったが、ご飯の中からも牡蠣が出てきて充分の量だった。ご飯は結構な量が入っていて、普通サイズの茶碗に4杯程。ひとりで食べたのでお腹いっぱい。小食の方は食べきれないかもしれないので、別メニューを頼んで2人で釜飯を分けるっていうのもいいかも。(勘定は¥1,000)
武蔵野本店 (むさしのほんてん)
岐阜県岐阜市神田町3-12-2
※令和4年12月31日を以って閉店されました