岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「海と森のドラマ 知床」 オホーツク回廊を行く

2008-03-21 22:38:07 | 北海道とアイヌ
これは、2005年読売新聞北海道支社編集部編の本である。
旅先のみやげ物店で見つけた。
今回、知床には行くことができなかったが、「オホーツク回廊」と
いう文字に反応した。
民族の歴史としても、とても謎の多いオホーツク文化だが、
それとともに、オホーツクの自然についても謎が多かった。
この謎に挑んできた人々の声がわかりやすく、記事になっている。
記事という意味は、新聞紙上に掲載された文章がまとめられ、加筆されて
一冊の本になったことだから。

オホーツク海は世界的にみても、とても珍しい海だといわれる。
もちろん、流氷の南限(世界で最も南で流氷が見ることができる)でもある。
そして、感覚的にとてもよくわかるように、海産物の宝庫である。
北に行けば、どこでも北海道のように素晴らしい海産物があるわけではない。
北海道の美味には理由がある。

私たちが日本地図をみる場合に、北海道の上(北)には海しかなく、
その海(オホーツク海)は大洋であり、遥かかなたまで陸がないように思うが、
実は日本海に似たような地形になっていることを知る必要がある。
(オホーツク海は日本海の1.5倍)
オホーツク海を形作っているのは、北海道とロシア沿海州、カムチャッカ半島、
そして千島列島である。千島列島は島のつながりゆえに、日本海のように
陸地の囲まれてはいないようにも感じる。
それが、オホーツク海の特徴とも言える。
閉じられているようで閉じられていないのが、オホーツク海なのだ。

もう一つに大きな特徴は、オホーツク海には、アムール川という世界有数の
流域面積と長さを持つ大河が流れ込んでいるということだ。
モンゴルに源流を持つこの大河は、中ロ国境を流れ、やがて、オホーツク海に
注がれるわけだが、この川の堆積物が海にながれ、
大きな大陸棚を形成している。
肥沃な大地の成分が、素晴らしい海産物を造り出している。
森が魚を育てるといわれる通りである。
また、流氷はアムール川の最大の生産物かもしれない。

そして、オホーツク海だけではなく太平洋へと流れ出る「東カラフト海流」の
大発見について、北大低温科学研究所の若土教授のインタビューがこの本に
掲載されている。
地球的規模で研究されるべきオホーツク海について、基本的な知識をこの本から
学ぶことができる。
私たち数十年前に日本史を学んだものには、オホーツク海についての知識はない。
それは冷戦の影響で国際的な共同研究が不可能だったことにもよるようだ。
このオホーツク海の知識は最新の研究成果なのである。
では、今の若者は学んでいるのだろうか。

私は、辺境と呼ばれる日本の南北の先端の土地に、日本人のルーツを
見極める鍵があると思っている(皆さんもそうでしょう)。
少し視点が違うが、北海道の開拓の仕方、沖縄への統治の仕方などには、
日本人の国造りの一面が露骨な形で現れていると思う。

もちろん、かの地の素晴らしい風景や風物に触れる楽しみには浸りながらも、
視線を空間と歴史の中に張り巡らしたい。
そのようなことが少しでもできればいいなと思う。

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