岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

【奇跡のひと】クリスティーン・ボーデンさん。(下)

2004-12-09 15:00:31 | 世界のなかま
ここでもう1人の日本人を紹介することになる。
NHKのディレクターである川村雄次さんである。
彼もまた、彼女の著書に感動し、クリスティーン
さんにメールを送ることになる。特別番組の制作
依頼である。

実は、京都のADI会議の最中に、NHKBSで
川村雄次さんが制作したであろうドキュメンタリー
が放送されていた。
松江放送局制作となっていた。
松江市では、昨年クリスティーンさんが講演会を
おこなっている。
川村さんは、松江支局勤務なのだろうか。

このドキュメンタリーには見入ってしまった。
クリスティーンさんは、夫君であるポールさんと
住んでいる。
カメラは家庭の中に入りこみ、クリスティーンさん
の症状を詳しく描写する。
ほとんどプライバシー侵害である。
しかし、その映像のお陰で多くの知識を得ることが
できた。

アルツハイマー病は人格が崩壊していく病気である。
自分が自分でなくなる恐怖との闘いの病気である。

しかし、彼女は、MRIでみる脳の萎縮の進行具合
では信じられない「人格」を保っている。
なぜ、彼女が彼女でいることが出来るのか。

小澤勲さんは、今の医学では説明できないという。
クリスティーンさんの、夫君であるポールさんは
理想的なパートナーである。
では、理想的なパートナーがいることで、病気の
進行が止まるのか。
もし、そうであるのなら、アルツハイマー病に対する
医学としての治療は根底から覆ることになる。

クリスティーンさんの体調はコントロールしにくい。
会話をすることで混乱状態になることもあり、それが
原因で大変な頭痛を起こされこともあるようだ。

京都の地下鉄の中で、彼女を拝見したが、声をかける
わけにはいかなかった。
次の日、国際会議場で、著書「私は私になっていく」
を購入したとき、販売の方に「クリスティーンさんの
体調がよければ明日サイン会を開きますから、ぜひ!」
といっていただいた。

当日、その時間になると、少し面映く思いながらも
会議室を抜け出し、サイン会場に向った。
クリスティーンさんは体調がよいらしく、ポールさんと
サインに応じていらっしゃった。

順番がきた私は、表紙のイラストの横にサインを
お願いした。
彼女はちょっと驚いて「表紙でいいの」といった。
そして、丁寧にサインをして、隣の夫君に、
「ここにあなたもサインよ」といって渡した。


この国際会議の間、京都は晴天に恵まれ、世界各国からの
参加者の方々は京都の秋を堪能された。
そして、満ち足りた気持ちで京都を去っていった。

この会議は、日本のアルツハイマー病理解を10年は進めた
だろう。
延べ1万人を超える国内の参加者は、数多くの分科会で
世界の研究の状況や、ともに病と闘ってる人々の声を聞き、
勇気も持って、自分たちの持ち場に帰っていった。

2004年秋、新しい連帯が生まれた。

そしてその連帯の中心にクリスティーン・ボーデンさんと
ポールさんがいた。


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