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シーナ・カオリさんからです(私宛ではありません)。
転載させていただきます。
(3月11日21時40分 新たな首相令が出ました。内容は下記します。)
今朝メールを開け、とあるニュースレターのタイトルを見てびっくり。
「イタリア医療崩壊」
その他、様々な日本のニュースでイタリアが話題に上がっていますが、不正確な記事がたくさん出回っていますね。
刑務所暴動、医療崩壊、パニックになってミラノから逃げる人々、全土移動制限…
日本のイタリア関連ニュースを読むと、日本の方々から心配に満ちたお見舞いのメールやメッセージをいただく理由がよくわかります。
そこで、今回のコロナウィルス騒ぎの真ん中、ミラノで生活している私から見たミラノの状況を書かせてください。
昨日の段階で、感染者が1万人を超えました。
ロンバルディア州で約5800人。
ロンバルディの人口は約1千万人ですので、約1700人に一人の割合でコロナウィルスに感染したことになります。
でも今日まで、私の知り合いやその家族でコロナウィルにかかった人は一人もいません。
日曜日からイタリア全土移動禁止、そしてとにかく人との接触を避け、群れることを禁止する#IoRestoACasa #Istayathomeと呼ばれる法令がでました。
街は、人気もまばらです。
レストランもバールも18時には営業停止なので、夜は本当に静かです。
先週まで普通にオフィスワークをしていた私達も、SMART WORKINGにきり変えるため、本日まで準備に追われて大変でした。
大きなショップも、従業員の健康のため閉店を決めたところが多いです。
オフィス作業も、出来る限りSMART WORKINGに移行しています。
ミラノの学校の休講は、もう3週間目に入りますが、ほとんどの学校がネットを使い授業をしています。
街に人は少ないけど、商店は開店しているので普通に人は歩いています。
公園は、ジムに行けなくなってジョギングをしている人がたくさんいます。
犬の散歩や、ベンチに座って本を読んでいる人もたくさんいます。
しかし、他人と群がることは禁止です。
明日からと突然の行動制限法令に、右を向けと言われれば左を見る性質で、人とのつながりを愛するイタリア人が黙って従うのはおかしいと思いませんか?
突然の学校休講で、親はどんなに戸惑ったか。
それでも、大きな騒ぎもなく皆従いました。
この何をするにも統制の取れないイタリアで、です。
2週間前まではイタリアでも
「コロナウィルスなんて、インフルと変わらない。インフルで亡くなる人の方が多いじゃないか」
とか、
「学校閉鎖とか商業の緊縮策なんて、経済的打撃を考えるととんでもない」
というオピニオンがたくさんありました。
それは民主主義国だから当然ですよね。
イタリア人は、自分が納得しなければ、誰かの命令に大人しく従うような国民性ではありません。
しかし、今は与党も野党も団結して、この移動制限法令に賛成しており、それどころか感染者数の多いロンバルディア州では、食品・薬局を除く全ての商店と、オフィスを閉める政策を取る手前に来ています。
(*21時40分新しい首相令が出ました。
食品・薬局以外の全ての商店/ショッピングセンターは営業禁止。
レストラン・Barも営業禁止。
会社は、Smart Working 又は有給を強く推奨。いずれにしても1メートル以上の距離を開けて労働できない場合は就業不可。
工場も同条件が守れる場合のみ就業可能。
銀行、保険会社、郵便局は開いている。
公共交通機関は運行)
今差し迫った危機は、コロナウィルスという病気で何名が亡くなるか、ということではないということを皆が納得し始めたからです。
コロナウィルスは、ワクチンもないし、新しいウイルスなので抗体のある人もいないこと。そして、感染しても無症状の期間が2週間近く続く場合があり、その期間の後半は他人を感染すること。
それらの理由で、感染のスピードがインフルエンザのような緩やかなカーブを描かず、急激に感染者が増えます。
例え、ほとんどの人が風邪くらいの症状で、感染者の10%のみが集中治療室が
必要になるだけでも、人数が大量になると医療システムが保てなくなる。
これが今、ロンバルディア州で起きていることです。
ロンバルディ州で感染した人のうち今集中治療室を必要としているのは470名程度(昨日のデーター)
ロンバルディア州の集中治療室は481。
コロナウィルス以外の病気の人がたくさんいるわけですから、ほぼキャパを超えた状態で、今軍事施設やプライベートな施設への移行を準備し、新しい人口呼吸器が配布されているところです。
どこかの日本の新聞に、現在までイタリアが公共医療の予算を削り続けてきた事が原因である、と書いてありましたが、それは確かにその通りです。
ただし同時に、イタリアでのコロナウィルスの検査は無料であることや、イタリアで病気になると本当に微々たる金額、または無料で治療や手術をしてもらえることを同時に書いて欲しいですね。
どんな金持ちも、貧乏な人も、同じ病院で同じ医師から治療を受けられるイタリアの医療システムは世界に誇れると思っています(もちろん、不満も山のようにありますが)
もう一つ、コロナウィルスがインフルや風邪とは全く違うのは、隔離された病人に付き添うことはもちろん、会いに行くこともできないということです。
今のイタリアでは葬式さえできない。
亡くなった人を抱きしめることもできない。
家族愛や人間愛の強いイタリア人には、そのイメージはあまりにも残酷です。
さて話をミラノに戻します。
最初に言ったように、1700人に一人の感染者、その中の10%程度が重症化しているミラノは、パニックにも陥っていないし、現状では医療崩壊は起きていません。
とくに、イタリアは南北の格差が激しいので、ロンバルディア州で起きている感染が南部に移ると医療崩壊が起きます。
これ以上感染者を増やして医療崩壊を起こさないために、皆が納得して静かに1ヶ月家にこもることを決めました。
これから欧州でイタリアと同じくらいの感染者が出てくるところがたくさん出てくるはずです。欧州の大都市で感染者数が少なければ、それは検査数が少ないというだけでしょう。
アメリカも同じはず。
日本も、残念ながら、他国と同じ道を歩むと思います。
今の日本は、イタリアの2週間前の感じでしょうか。
それぞれの国が、自分たちでこの危機を乗り越える方法を選択しなければならないと思います。
1年くらい経ったら、科学的な方法で、どの国とった方法が一番効果的だったかが分析されるでしょう。
イタリアのように、すぐに誰にも平等に検査して感染者数を増やし、コロナウィルスが直接の死因ではなくてもコロナウィルス死者としてカウントする事が良かったのか、他の国のように、なるべく検査数を減らした方が効率的なのかはわかりません。
ただ、今回のコロナウィルス騒ぎで実感したのは、
「効率なんてクソくらえ」
(言葉が汚くて失礼)です。
このような緊急時に大切なのは、何も国から隠蔽されていないという安心感、小さな存在である自分でも平等に守ってもらえるに違いないと思える安心感、だと実感しました。
そして、ただでさえマイナス成長に近かったイタリアの経済的打撃がどんなことになるのか、それは心配です。
でも、イタリアの、大統領、首相、政治家、専門家、全てが口を揃えていう
「国民の健康が優先順位の一番」
という言葉は信用できるし、安心感を与えてくれます。
最後に‥
私たちは、毎週一回大スーパに車で行って1週間分の買い物をするのが習慣だったのですが、今大スーパーは入場制限をしているので列をなしている事が多く、近所の肉屋、八百屋、万屋での買い物に切り替えました。
近所のおばさんと、コロナウィルの噂話をしたり、田舎生活みたいでそれなりに楽しい。
美術館にも友人に会いに行くこともできないので、仕事以外の時間も家で本を読んだりネットサーフィンしたり。
近所の公園での、犬の散歩は貴重な時間です。
何より、いろいろ物を考える時間ができそうです。
転載終わります。
一人の方のレポートですが、日本の報道より確かと思います。
お読みいただきありがとうございました。
シーナ・カオリさん。貴重なメールをありがとうございました。