岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

NHK「ヒューマン 第4集 お・か・ね-2」

2012-02-28 02:47:26 | 社会福祉の源流


カメルーンの村ではお金の使用が始まった現場が取材されていた。
ある男性は、共有物の一部を現金化していた。
それを家族は喜んで受け入れている。
お金で欲しいものが手に入ることを知っている。
戸主である男性は私有の農場を作ろうと人を雇っていた。
事業を始めることが未来を拓くことを知っていた。

ただ、この事例が数千年前の貨幣獲得時と同じとは思えない。
現代のカメルーンと都市が誕生する時代では外的条件が違う。

メソポタミアで誕生した麦というお金は、他地域では米や塩、羊を利用した。
この類のお金は、時間の経過とともに劣化するという問題があった。

ひとつの解決策がギリシアのアテナイで発明された。
今につながるお金、コインの誕生である。
コインは銀で作られていた。
コインにはフクロウが刻印されていた。銀の純度を保証するものだった。
腐ることなくどこへでも携帯できるコインの発明は、交易の範囲を大きく広げた。
地中海世界から外へ広がっていった。

コインの発明は、人々の精神世界も変えていくことになる。
人々にとって、不安定な社会の中で唯一確かなものと思えてきた。
そして、脳はお金を求めることが快楽であることを獲得していく。

貧富の差が生まれ、人も売買の対象となる。
格差の始まりだ。

お金が発明されると副産物として格差による争いが起こる。
古代都市テルグラク(現シリア)には、その争いの犠牲者が大量に発掘された。
人はお金の弊害を、お金の誕生と時を隔てず知ることになった。

対応策が取られた。
「アマギ」という名がつけられた制度だ。
BC2400年、メソポタミアに生まれた「借金帳消制度」だ。
当時すでに欲望を制限する制度が必要と思われていたのだ。

現代にも綿々と受け継がれる「再分配」の考え方といえる。
市場至上主義の限界は、お金の誕生とともに知られていた。

人の脳には、公平をよしとする仕組みができているという。
私たちはお金を独占することに抵抗がある。
特に、人と接している時に抵抗がより大きくなる。
人前では独り占めすることを良しとしないのだ。

この脳の反応は、遠い昔、原始共産制時代に、独り占めを非難されてきた心の遺産なのかもしれない。
この遺産が失われないからこそ、人は人となりえたのだろう。
協力することで共存してきた。

それが我々がヒューマンとして誇れることだと思う。


最新の画像もっと見る