岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

JR西日本の「ATS設定ミス」を読み解く

2005-11-08 12:02:59 | JR西福知山線脱線転覆事故&安全
11月6日号に掲載した「ATS設定ミス」について、
今日は組織面から考えていこうと思います。
資料はやはり毎日新聞「追跡 新型ATS設定ミス」から引用します。

ではまず、「新型ATS設定」の手順を文章化しますが、簡単には
頭に入らないのではないでしょうか。
まず、データ入力の流れ。
1.各ATS毎にデータが違うので、1台1台設定をする必要がある。
2.必要なデータは「a.カーブの制限速度や長さ」
「b.車種ごとのブレーキ性能」
 ※同じ線路をことなる車種が通るわけだから、車種を読み取り、
 その都度、対応することが求められる(もちろん、ATSが)。

3.必要なデータの「a.カーブの制限速度や長さ」は支社施設課に
ある。「b.車種ごとのブレーキ性能」は本社車両部にある。
4.支社輸送課が、a.b.のデータを集めて各カーブでの車種
ごとの速度データを算出する。
5.支社電気課が最終的にデータを設定する。
6.実際に設置するのは、施工業者。

今回のミスは、支社輸送課が本社車両部にデータを確認し、
速度データを算出する段階で入力ミスがおこったという。
いかがでしょうか。理解できましたか。

本社と支社の組織体制がわかりませんね。
まず、今回のミスに関係しているのは、本社鉄道本部です。
この鉄道本部に4つの部があります。
車両部、施設部、運輸部、電気部です。
そして、支社には、車両部以外の出先機関である施設課、
運輸課、電気課があります。
(この記事の他の部分に支社に車両課があると書いてはいるが、
ならばなぜ、支社輸送課がわざわざ支社に車両課があるにも
かかわらす本社車両部に問い合わせるのだろう。記事がおかしいのか
JR西の組織がおかしいのかこの記事では不明)

この各部、各課は、当然連携して業務にあたることになりますが、
人事交流はないということです(支社車両課と支社施設課の間)。
専門的業務ゆえに移動できないということでしょうか。

この組織体制では、支社の各課は、自らの命令系統の上層に
あたる本社各部の指示で動くことになります。
もちろん支社の中では「個人の融通」をきかせて臨機応変に
対応することを進めていることでしょう。
しかし、危うい感じがしませんか。

さて本題に入ります。
JR西日本の鉄道本部の歴史がどのようになってきたのかは
調べていませんが、車両部、施設部、運輸部、電気部の組織があり、
その後「新型ATS設置」の業務が新たに加わったことは間違い
ないでしょう。
今までの組織に「新たな業務」が加わった。
その「新たな業務」には、今までの組織で対応しようとすると
複雑になったが、なんとかうまくやれるだろうと思ったと
推測できる。

そこで、普通なら「作業マニュアルを作成し」、もし作業の過程で
ミスがあったら、そのミスを発見できるように仕組みをつくる。
また、責任者を明確にして、権限と責任を持たせる。

それがまったく出来ていない!
もし1人に人間が、入力ミスをすればそのまま、
現場で設置されてしまう。
人間はミスをするものだ、という常識がここにはありません。
そして、「複雑化」はミスを起こす、「簡潔」こそ、ミスを防ぐと
いう考えもありません。

本来、組織は業務内容の変更によって、柔軟に組織自体を変更
しなくては十分機能しないが、それが出来ていない。
組織論の基礎の基礎です。
はがゆい思いで書いています。

また、本社と支社の関係も、とても古い体質に見えます。
このような組織の中にいると、支社の人間は本社を向いて
仕事をする。
本社は、現場を知ることがない。

そして、垣内社長は人事・企画畑だから、専門的な話はわからない
だろうと、報告しない。

今まさにこの状態とすれば、「日暮れて、道遠し」。

これが、民営化を進めている会社です。問題は「官」か、
「民」かという単純な問題ではないのです。
小泉さん!

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